「RETRO 500Pre」製品レビュー:3つのTAD 12AT7真空管を搭載したAPI 500互換プリアンプ

RETRO 500Pre

REVIEW by 福田聡 2020年2月4日

500pre_04

 2006年にフィル・ムーア氏によって設立され、北カリフォルニアに本社を置くRETRO。ビンテージ機器の優れた特性を引き継ぎつつも、現代の制作環境にマッチした製品を手掛ける同社は、プロの現場においても信頼のおける現行メーカーの一つと言えるでしょう。そんな同社から、API 500互換モジュールの真空管プリアンプ=500Preが登場しました。どんな音がするか気になる方も多いのではないでしょうか。早速チェックしていきましょう。

Sta-Levelの回路トポロジーを採用
入出力にはCINEMAG製トランスを内蔵

 500Preには、同社のシグネチャー的チューブ・コンプレッサーとも言えるSta-Levelの回路トポロジーが採用され、内部基板を見ても分かるように3つの真空管TAD 12AT7/ECC81と、CINEMAG製の入出力トランスが搭載されています。1スロットにこれだけ詰め込まれた眺めはジャーマン・ビンテージ・モジュールの内部をほうふつさせるものがあり、その見た目からも期待が高まります。

 

▲RETROのコンプレッサー=Sta-Levelの回路トポロジーが採用された500Preの内部基板。写真上部には、3つの真空管TAD12AT7/ECC81が確認できる

▲RETROのコンプレッサー=Sta-Levelの回路トポロジーが採用された500Preの内部基板。写真上部には、3つの真空管TAD12AT7/ECC81が確認できる

 500Preのフロント・パネルは、2つのノブと3つのスイッチが配置されたシンプルなデザイン。最上部にあるINPUTノブで入力具合を決めつつ、最下部にあるOUTPUTノブを使って次の機材への出力レベルを調整することが可能です。プリアンプの入力具合で音作りをする際、このOUTPUTノブがあるのと無いのでは大違いなので、とても有効であると同時に、500Preはそのようにして音作りすることを前提として設計されたプリアンプであるとも言えるでしょう。また、これらのノブは連続可変式で重みもあるので、細かいレベル調整が行えます。
 INPUT/OUTPUTノブの間に備えられた3つのスイッチを、上から見ていきましょう。一番上にあるスイッチでは、GAIN LOW(48dB)かGAIN HIGH(76dB)を選択することができます。これは一般的なマイクプリでいうPADスイッチのようなものですが、GAIN LOWのときは2段階、GAIN HIGHのときは3段階の真空管ゲイン・ステージとなっており、感覚的にはブースターととらえてもよいかもしれません。
 上から2番目にあるスイッチでは、48Vファンタム電源のオン/オフが可能で、一番下のスイッチではINVERT ONで位相を反転させることができます。

 

みずみずしい高域のつや感
やや引き締まった印象の中低域

 それでは実際にボーカル/エレキギター/ベースで試してみましょう。この500Preは1モジュールあたり160mAの電力を消費するため、各スロットあたり180mAの電力を供給できるリニア電源のシャーシを用いてチェックを行います。
 ボーカルでのテストでは、NEVE 1073や現行マイクプリ数種と比較してみたところ、真空管ならではのみずみずしい高域のつやを感じました。音の立ち上がりもよく分かるので、あえてEQ処理する必要はなさそうです。その影響もあってか、中低域はやや引き締まった印象。音の太さは1073の方がありましたが、500Preには1073にはない高域の抜け感があり、昨今のボーカル処理で求められる周波数帯域に自然とアプローチできているような感じです。ギターとベースでも同じような傾向が見られました。
 また、思ったよりも入力信号がサチュレーションしやすいため、ひずみ過ぎないようINPUTノブの値には気を付けた方が良さそうです。参考までに500Preにオシレーター信号を入力してゲインの増幅度を測定したところ、INPUT/OUTPUTノブともに40〜60付近が最もゲインを細かく調整できるスウィート・スポットでした。よって、基本的にはその辺りでサウンド・メイクを始めてみると良さそうです。
 500Preの出番はレコーディングのときだけでなく、ミックス時でも“ハイエナジー・レベラー”として活用することができるでしょう。500Preは意図的にチューブ・アンプのサチュレーションを得られるように設計されているため、サウンドを太くさせるための有効な手段となり得ます。
 ここではボーカル/ベース/ドラムなど、あらゆるパートに通してみました。結果、サウンドが少し物足りないパートに使うと音の密度が上がり、しっかりとした印象に。それと同時に音色がほんのりブライトになるところも好感が持てます。
 ちなみに500Preに過大入力をしていくと、面白いようにピークが止まり、リミッターのような効果が得られます。しかし、その分ダイナミクスがなくなってしまうので、やり過ぎないように気を付けた方がよいでしょう。逆に思いっきり過大入力してつぶした信号を、パラレル・コンプのように原音に足して使うことで、サウンドに厚みが出せて好感触でした。ハード・コンプレッションしたものを足すのとは、また一味違った質感が得られます。特に、スネアなどには効果大でしょう。

 プリアンプとしてだけでなく、サチュレーター的にも使える500Pre。欲を言えば、これにDIインまで搭載されていたらもう最強でしょう。しかし、シンプルな操作性と真空管の特性が生かされたサウンドは、多くの場面で活躍してくれそうです。真空管プリアンプを導入したい方は、ぜひ一度500Preを試していただきたいと思います。シンセサイザーなど、ステレオ出力する楽器にもかなり有効でしょう。ペアでの導入をお薦めします。

 
サウンド&レコーディング・マガジン 2020年2月号より)

RETRO

500Pre

オープン・プライス(市場予想価格:110,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪ゲイン:48dB(LOW GAIN)、76dB(HIG H GAIN) ▪全高調波ひずみ率:0.05%未満@4dBu ▪周波数特性:20Hz〜20kHz@±25dB ▪出力レベル:+4dBu ▪クリップ・レベル:+18dBu(真空管)、+24 dBu(ヘッドルーム) ▪入力レベル・レンジ:−72〜+12dBu ▪入力インピーダンス:1,000Ω ▪出力インピーダンス:600Ω ▪外形寸法:38(W)×136H)×152(D)mm(実測値) ▪重量:1.1kg

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