「TK AUDIO DP2」製品レビュー:入出力トランスとドライブ用のゲルマニウム回路を備えるマイクプリ

TK AUDIO DP2

REVIEW by 池田洋(hmc studio) 2019年10月31日

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 2008年に設立されたTK AUDIO。ビンテージの要素を備えつつも現代的なアウトボードを製作するスウェーデンのブランドです。今回は新しく発売された2chのマイク・プリアンプ=DP2をレビューしていきましょう。

出力にCARNHILLトランスを備え
入力側にはLUNDAHLトランスを搭載

 まずは外観を見ていきましょう。フロント・パネルには何やらたくさんの操作子が並んでいますね。本機は2chのプリアンプなので、各チャンネルで操作子の内容は同じです。

▲インプット・ゲインのツマミ。5dB刻みのスイッチ式で、インプット・レンジは−80〜−25dBとなっている。最大80dBの増幅が可能だ

▲インプット・ゲインのツマミ。5dB刻みのスイッチ式で、インプット・レンジは−80〜−25dBとなっている。最大80dBの増幅が可能だ

 ツマミはパネル左からインプット・ゲイン(最大+80dB/5dBステップ)、ハイパス・フィルターのカットオフ周波数(30〜400Hzを連続可変/スロープは−12dB/oct)、アウトプット・レベル(最大+26dBm)の3種類。

▲ゲイン・ツマミの右隣には、ハイパス・フィルターのカットオフや出力レベルを調整するためのツマミがスタンバイ。ボタン類やHi-Zインも並ぶ

▲ゲイン・ツマミの右隣には、ハイパス・フィルターのカットオフや出力レベルを調整するためのツマミがスタンバイ。ボタン類やHi-Zインも並ぶ

 ボタンは左から48Vのファンタム電源、−30dBのPAD、“A”や“Ge”と名付けられたボタン(後述)、ハイパス・フィルター、位相反転、マイク・インの入力インピーダンス切り替え(400Ω/1.6kΩ)、Hi-Zインをアクティブにするためのもの(2MΩ)が並びます。Hi-Zインが用意されているので、マイクだけでなくギターやベース、シンセサイザーなどを直接接続することが可能。ホーム・レコーディング用などにプリアンプを探している方にとっても、強い味方になりそうです。
 さて、AおよびGeというボタンに関してですが、まずAはCARNHILL製トランス仕様のクラスAディスクリート・アウトをアクティブにするものです。これがオフだと、出力は通常の電子バランス・アウトになります。Geは、入力段に備わったLUNDAHL製トランスの後ろにゲルマニウム・アンプ回路をインサートするためのボタン。アクティブにすれば、入力音にハーモニクスを加えて色付けが行えるとのことです。

“A”ボタンでは全体をブライト寄りに
“Ge”では中低域を強めにできる

 今回、タイミング的に筆者がホームとしているhmc studioでバンドのレコーディングがあったので、できる限りの楽器で検証してみました。まずはドラムのオーバー・ヘッド。併用したのはコンデンサー・マイクのAKG C414 XLIIです。AとGeのボタンをオフにしたデフォルトの状態で試してみたところ、ドラム・キットの全体感をしっかりとらえつつ、心地良い距離感も演出してくれています。ハイハットやライド・シンバルなど金物の高域成分に十分な伸びを感じるものの、耳に痛い成分は目立っておらず好印象です。またキックやスネア、タム類の低域成分もしっかりと収音しています。
 続いてはAとGeをアクティブにしてみましょう。まずはA(CARNHILLトランスのクラスAディスクリート・アウト)のみをオンにすると、中低域が軽くロール・オフし、全体的に少しブライトになると感じました。テンポの速い曲や明るいイメージの曲に合いそうな質感です。次にGe(入力側のゲルマニウム・アンプ)をアクティブにしてみたところ、中低域の押し出しが強くなり、高域が落ち着きました。倍音成分が付加され、力強い音になります。ここで内蔵のハイパス・フィルターを軽くかけてみたところ、低域が自然にロール・オフし、ミックス後のイメージに近いところまで追い込むことができました。
 ドラムに続いては、管楽器(サックスとトランペット)でチェック。ダイナミック・マイクのSENNHEISER MD421-U-4を併用してのテストです。筆者は管楽器をレコーディングする際に、プリアンプでサチュレーションをかけることが多いため、今回もインプット・ゲインを上げ目にして突っ込み気味で録ってみました。デフォルトの状態で、管楽器との相性は抜群です。プリアンプによっては、立ち上がりの速い音が耳に痛い感じでひずむことがあるのですが、DP2はキンキンせずに音の存在感を際立たせるひずみ方をします。AやGeをアクティブにしてみたところ、基本的には先述したドラムのオーバー・ヘッドと同じ印象。全体的にブライトな方へ寄る感じですが、今回はデフォルトでの録り音が採用されました。
 楽器録りのほかには、1kHzのサイン波とスペクトラム・アナライザーを使って、本機の倍音成分をチェックしてみました。まず、デフォルトの状態およびクラスAディスクリート・アウトのみをアクティブにした状態では、二次/三次倍音共にあまり付加されていませんでしたが、ゲルマニウム・アンプをオンにしてみると、こうした倍音の付加が見られ、特に二次倍音の増加が数値上、著しく見受けられました。
 今回、初めてTK AUDIOの製品を使用しましたが、個人的には非常に好みの音を録ることができました。TK AUDIOは、同じ2chのマイク・プリアンプとしてDP1 MK3(オープン・プライス:市場予想価格160,000円前後)というモデルもラインナップしています。DP2は、基本的な機能こそ同じですがハイパス・フィルターが新しく搭載され、価格は5,000円ほどしか違いませんので、コスト・パフォーマンス的にもお得な製品と言えますね。

▲︎リア・パネルには電源インレット、各チャンネルのマイク・インとライン・アウト(いずれもXLR)が配置されている

▲︎リア・パネルには電源インレット、各チャンネルのマイク・インとライン・アウト(いずれもXLR)が配置されている

 
サウンド&レコーディング・マガジン 2019年11月号より)

TK AUDIO

DP2

オープン・プライス(市場予想価格:165,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪チャンネル数:2 ▪入力段:LUNDAHL製トランス、ゲルマニウム・アンプ(倍音を追加するための回路でオン/オフ可能) ▪出力段:電子バランス・アウトとCARNHILL製トランス・アウトの切り替え式 ▪インプット・レンジ:−80〜−25dB(5dBステップ) ▪入力インピーダンス:400Ω/1.6kΩ(切り替え式/マイク・イン)、2MΩ(Hi-Zイン) ▪PAD:−30dB ▪ハイパス・フィルター:30〜400Hz(連続可変)/−12 dB/oct ▪ファンタム電源:48V ▪電源電圧:115〜230V ▪外形寸法:422(W)×42(H)×252(D)mm(ツマミ、突起部を除く) ▪重量:4.3kg

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