「SE ELECTRONICS/DM1 Dynamite」製品レビュー:ハイグレードなクラスA回路とFETを搭載するインライン・プリアンプ

SE ELECTRONICS DM1 Dynamite

REVIEW by 中村フミト(Endhits Studio) 2019年1月31日

DM1

SE ELECTRONICSは英国のマイク・ブランド。ミドルクラスの価格帯でありながらハイクラスのマイクに迫る品質で定評があり、RUPERT NEVE DESIGNSとの共同開発による真空管マイク=RNTなど、非常に興味深い製品をリリースしています。今回レビューするのは“インライン・プリアンプ”と銘打たれた同社の製品、DM1 Dynamite(以下DM1)。インライン・アンプとは、マイクとマイクプリの間に接続し、48Vファンタム電源で駆動する増幅アンプのことで、ここ数年他社からも同じような製品がリリースされています。筆者が拠点とするEndhits Studioでもインライン・アンプの導入を検討していたため、とても良いタイミングで製品レビューをすることになりました。

金メッキ3ピンXLRコネクターを採用
28dBのゲインを獲得可能

手元に届いたDM1は、その名の通りダイナマイトを模した赤色の筒に収められていました。早速中身を取り出したところ、同じく赤い金属製ボディのDM1が出現。筐体は大人の手のひらに収まるスリム・サイズで、XLRコネクターの3ピンは金メッキ処理が施されています。

資料によると、洗練されたクラスA回路と特別に選定された優秀なFETによってDM1の出力インピーダンスはかなり低く、ノイズも市販されている他社製品の半分近くとなっているそう。さらに、特化されたバッファー・アンプにより、接続負荷に関係無く常に28dBのゲインが得られるとの記載があります。音響機器の出力インピーダンスは低ければ低いほど、入力側のインピーダンスに左右されずに安定した出力が得られて外来ノイズにも強くなりますが、資料に掲載されているグラフにおいても、DM1の出力インピーダンスや出力ノイズは他社製品と比べて半分以下となっています。

DM1の使用方法は至ってシンプル。マイクの後段にDM1を接続するだけです。そして、マイクプリから48Vファンタム電源を供給することでDM1内部のFETアンプが動作します。ちなみにDM1はパッシブ・マイク用の製品。48Vファンタム電源を必要とするコンデンサー・マイクやアクティブ・タイプのリボン・マイクなどには使用できませんので、注意が必要です。

 

▲DM1 Dynamiteをマイクに接続したところ。マイクプリから48Vファンタム電源を供給することで本体内部のFETアンプが動作する

▲DM1 Dynamiteをマイクに接続したところ。マイクプリから48Vファンタム電源を供給することで本体内部のFETアンプが動作する

 

余計な色付けをせず
SN比に優れた明りょうなサウンド

今回のチェックでは、ダイナミック・マイクにSHURE SM7B、リボン・マイクにAEA R84、マイクプリにMILLENNIA HV-35を使用し、アコースティック・ギターやボーカル、そのほかピンク・ノイズやスウィープなどの測定用信号を用いて検証してみました。

まずDM1を接続すると、ゲインが大きく上がります。レベルをそろえてDM1の有り/無しで比較してみると、DM1を使った方が明らかにSN比の良いサウンドになっていました。筆者は普段のレコーディングでは、“サーっ”という機材ノイズは“味”としてあまり気にしないのですが、あらためてSN比の良い音を聴くとやはり心地良く感じました。

SM7Bでチェックしてみたところ、DM1のサウンドは良い意味で色付けがありません。他社のインライン・プリアンプには、ハイインピーダンス入力特有である“高域の伸び”を付加する製品もありますが、DM1は原音忠実で、ゲインのみを増幅してくれる印象。これはAEA R84で試してみたときも同じでした。HV-35はハイインピーダンス・マイクを大変うまく受けることができるマイクプリのため、一般的なマイクプリを使用した場合はもっと大きな差が出るかもしれません。

各測定用信号でもチェックしてみましたが、DM1が周波数特性やインパルス応答、倍音構成などに影響を与えている様子は確認できませんでした。

筆者はSM7BやAEA R84をボーカル・マイクとして使用することがありますが、声を張らないで歌うような楽曲の場合はマイクプリのゲインを上げざるを得ません。そのため、特にビンテージのマイクプリを使用している際などは極端にSN比が悪くなってしまい、マイクの使用を断念した経験が過去に何度かあります。このように、サウンドは素晴らしいのに出力が低いマイクにDM1を接続することで、その問題を簡単にクリアすることができるでしょう。

最後にDM1の導入メリットが大きいシチュエーションとして、筆者が思いつくものを幾つか挙げていきましょう。まずは大規模スタジオへの導入。マイクからコンソールまで信号経路が長い大規模スタジオでは、外来ノイズに対して不利な場合があります。しかし、余計な色付けをせずにSN比を稼げるDM1は大いに有効です。全チャンネルにとはいかずとも、ボーカルやベース、ドラムのキック/スネアなど、ミックス・バランスを大きく占めるソースだけにでもDM1を使用することで、効果は非常に期待できるでしょう。

また、大規模スタジオ以上に信号経路が長くなることが予想される、ライブ・コンサートなどの現場でもDM1の恩恵は活躍すること間違いありません。

ほかには“歌ってみた”や“ゲーム実況”など、今はやりのインターネット動画配信の宅録スタジオ。使用されているマイクやオーディオI/Oの中にはゲインが小さいものもあり、DM1の導入はマイクやオーディオI/Oを買い替えるよりも、より低いコストでその問題を解決してくれるかもしれません。

DM1を使用すると28dBのゲインが得られ、SN比も劇的に改善されるため、サウンドは一段と明りょうかつリアルさが増します。一度DM1の効果を体験すると、圧倒的に便利だということに気が付くはずです。

 
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サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)
 

SE ELECTRONICS

DM1 Dynamite

オープン・プライス(市場予想価格:13,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪周波数特性:10Hz〜12kHz(−0.3 dB) ▪ゲイン:28dB(負荷1kΩ) ▪最大出力レベル:8.3dBV(2.6V、0.5 % THD) ▪出力ノイズ・レベル:9μV(JIS-A) ▪動作電源:48Vファンタム ▪インピーダンス:135Ω ▪推奨負荷インピーダンス:1kΩ以上 ▪消費電流:3.0mA ▪コネクター:XLR(3ピン) ▪外形寸法:19(φ)×95.5(H)mm ▪重量:80g

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