「APOGEE Symphony I/O MKII 2×6 SE」製品レビュー:APOGEE史上最高音質を謳うAD/DAを搭載したオーディオI/O

APOGEE Symphony I/O MKII 2×6 SE

REVIEW by 檜谷瞬六 2018年5月28日

フロント

APOGEEのフラッグシップ・オーディオ・インターフェースSymphony I/O MKII用に、APOGEE史上最高音質を謳った2×6 SEモジュールが発売されました。オーディオ・インターフェースに求められる要素は多く、操作性や設置性などいろいろな点で各社が競い合っていますが、すべてに優先するのはやはり音質だと思います。僕も普段AVID Pro Tools内で2chにミックスしたものをアナログ機材のチェインに通して録音するという手法でミックスしているので、入口/出口となるAD/DAのクオリティは常に気にするところであり、期待を込めてテストしてみました。

アナログ2イン/6アウトのほか
各種デジタル入出力も用意

Symphony I/O MKII本体自体は以前にも本誌でレビューされていますので(編注:2016年7月号)、モジュールの入出力端子などに関して簡単に紹介していきます。接続方法はPro Tools|HD(DigiLink Miniタイプ)モデルとThunderboltモデルの2種類があり、どちらかのシャーシを選択する形になります。両タイプともワード・クロックの入出力端子を備え(Pro ToolsモデルはLoop Sync端子も対応)、ThunderboltまたはUSB端子経由で専用ソフトウェアからのコントロールが可能になっています。2×6 SEモジュール自体にはXLRの2chアナログ・ライン入力、D-Sub 25ピンでのアナログ・ライン出力、AES/EBUデジタル入出力(XLR端子)、S/P DIFのコアキシャル入出力端子、S/P DIFとADAT兼用のオプティカル入出力端子(S/MUX対応)が備わっています。

▲Pro Tools|HD用シャーシのリア・パネル。モジュール・スロットは2基あり、うち1つに2×6 SEモジュールがインストールされている。モジュール内の端子は左からアナログ入力(XLR)×2、アナログ出力(D-Sub 25ピン)、AES/EBU入出力、オプティカル入出力(ADAT&S/P DIF)、S/P DIFコアキシャル入出力。Thunderbolt用拡張スロットの右に、HD Option Cardがあり、DigiLink端子(Mini)、AUX端子(ファームウェア・アップデート用のUSB)、Loop Sync用のクロック入出力(BNC)が並ぶ。その上にワード・クロック入出力(BNC)も用意

▲Pro Tools|HD用シャーシのリア・パネル。モジュール・スロットは2基あり、うち1つに2×6 SEモジュールがインストールされている。モジュール内の端子は左からアナログ入力(XLR)×2、アナログ出力(D-Sub 25ピン)、AES/EBU入出力、オプティカル入出力(ADAT&S/P DIF)、S/P DIFコアキシャル入出力。Thunderbolt用拡張スロットの右に、HD Option Cardがあり、DigiLink端子(Mini)、AUX端子(ファームウェア・アップデート用のUSB)、Loop Sync用のクロック入出力(BNC)が並ぶ。その上にワード・クロック入出力(BNC)も用意

 
2×6、つまりアナログ・ライン2イン/6アウトというフォーマットですが、なかなか必要最少限のいいところをついており、例えば録音時には2chのインプットとモニター・アウトに加え、最大4chの単独送りが使えます。実際の業務を考えても、ボーカルのダビング時などはソロ、ガイド・メロディ、クリック+予備1chもあれば事足りますので、ダビング用としてはこれ一台でも十分にまかなえる数です。ミックス時も2chをアナログ機材に送り、戻りをインプットで受け、別のアウトでモニタリング、さらにもう2chでリファレンス音源を出すといったくらいの使い方まではできるようになっています。

もちろんスロットがもう1つ付いていますので、そこに別のモジュールを入れて使用することが可能。マスターの録音用ADとして考えると、XLRで直接入力ができるのはうれしいところです。

 

音像が大きく滑らかで高解像度のD/A
音の重心がしっかり座ったA/D

さて、肝心の音質の方を幾つかの方法でチェックしてみました。録音/再生を通じて、一貫した本機の印象としては、非常に滑らかで高解像度であり、音像が大きく感じられます。特にローエンドの存在感と立体感は特筆すべきものがあり、これが特に音像の大きさに結びついているような気がします。D/Aのクオリティはサウンドの立体感やディテールの表現力、正確性といった部分ではあらゆるD/Aの中でもトップ・クラスなのではないかと感じました。正直、実際に作業をする上でこれ以上の解像度が必要だという感覚はあまりないレベルです。特に低域の量感は筆者が普段触れているどのD/Aと比較しても群を抜いており、このモニター・サウンドでミックスをやってみるとかなり仕上がりが変わってくるのではないかと思います。

ヘッドフォン端子も聴き比べてみましたが、こちらも単体のヘッドフォン・アンプと遜色のないレベルです。キャラクターとしては比較的高域の柔らかいサウンドであり、まとまりの良い音といった印象で、普段使用しているSPL Auditorと比べてみたところ少し分離感は落ちましたが、クオリティというよりはキャラクターの違いなので、ヘッドフォン・モニターにこだわりのある方は実際に聴いてみることをお勧めします。

A/Dについては、最近行ったミックスのデータを使用して、アナログ機材を通した音を録音してみました。高解像度なのは前述の通りでありますが、音の重心がしっかり座っており、歌やリズム楽器などのアタックが気持ちの良いところに収まってくれるので、音楽の芯がしっかりして聴こえてくれる印象です。従来のSymphony I/Oから受け継ぐ部分もあるかと思います。

僕はSymphony I/Oを以前マスター録音用にしていて、太くて重心の座った感じが気に入っていたのですが、ジャズやクラシックなどのアコースティック音楽に対応するために解像度を重視して最近ANTELOPE AUDIO Pure 2に変更しました。Pure 2で少し重心が高めに感じる部分を海外のエンジニアの手法などを参考にしながら、幾つかの機材の組み合わせで補って使用している感覚なのですが、この2×6 SEのサウンドは最初からそのように組み合わせた辺りにいる感じで、最初にこれを聴いていたら選んでいたかもしれません。

またSoft Clip機能やソフトウェアからのコントロール機能(Thunderboltのみ対応)があるのは、さまざまなジャンルの音楽を手掛ける上で非常に便利です。試しにボーカル録音もしてみましたが、当然ながらニュアンスをよくとらえ存在感も強く、特にお薦めしない理由が見当たりませんでした。

AD/DAはあらゆる音の通り道になるので、もっといろいろなソースで使ってみたいところではあります。各社個性がありますので、比較についてはあくまで主観になってしまいますが、一つ言えることは同価格帯のものだけでなく、あらゆる製品と比較しても恐らくトップ・レベルに数えてよいクオリティであり、常に選択肢へ加える価値のある製品です。


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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年6月号より)

APOGEE

Symphony I/O MKII 2×6 SE

340,741円(Pro Tools|HDまたはThunderbolt対応)、モジュール単体:220,371円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪ビット・レート:最高24ビット/192kHz ▪最大同時入出力:14イン/20アウト(2×6 SEカード、ヘッドフォン含む)、32イン/32アウト(本体) ▪ダイナミック・レンジ(A-weighted):124dB(A/D)、131dB(D/A)、121dB(ヘッドフォン) ▪THD+N:−116dB(A/D)、−118dB(D/A) ▪入力インピーダンス:10kΩ ▪外形寸法:482.6(W)×89(H)×292(D)mm ▪重量:約6kg 【REQUIREMENTS】 ▪Pro Tools HD:AVID Pro Tools 9以上が動作するMac/Windowsマシン ▪Thunderbolt:Mac専用/OS X 10.9.5以降

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