「ASPEN PITTMAN DESIGNS DT1 Dual Top Condenser Microphone」製品レビュー:着脱式グリルで用途を選べる超指向性FETコンデンサー・マイク

ASPEN PITTMAN DESIGNS DT1 Dual Top Condenser Microphone

REVIEW by 中村公輔(Kangaroo Paw) 2016年5月2日

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ASPEN PITTMAN DESIGNSの創設者アスペン・ピットマン氏は、真空管ギター・アンプのバイブルと言われる『チューブ・アンプ・ブック』の執筆や、真空管ブランドGROOVE TUBESの創業でも知られた人物。真空管ハーモニック・ディストーションのおいしさに人生を捧げている彼ですが、このたび設計したのはDT1 Dual Top Condenser MicrophoneというFETコンデンサー・マイクです。興味を引かれずにはいられませんね!

21mm径のミッドサイズ・カプセル
録音だけでなくライブにも向けた設計

DT1 Dual Top Condenser Microphone(以下、DT1)は、ローノイズのFETを使用したコンデンサー・マイク。24Kの金を蒸着したマイラーのダイアフラムは、21
mm径というミッドサイズのブラス・カプセルに収められています。トランスレス設計で、指向性はハイパー・カーディオイド。本体サイズは21(φ)×190(H)mmと、ボーカル収音にも適した大きさです。SHURE SM58などに比べて数cm長いくらいのサイズ感ですね。重量は400gなので、SM58より100g程度重いことになります。

ハンドリング・ノイズやフィードバックを軽減する設計がなされており、レコーディングだけでなくライブにも向いているようです。最大音圧レベルは146dB SPLと高めで、入力感度は5mV/Paと一般的なコンデンサー・マイクに比べて低いため、確かにライブやオンマイクでの使用に適しているのかもしれません。

ユニークな点としては、グリルがねじ込み式になっており、着脱可能なところが挙げられます。そのグリルは内側にポップ・フィルターを備えているため、ボーカルを収める際はグリルを装着し、楽器収音時には取り外して使うと良いでしょう。

 

グリル無しで収めたアコギは
スモール・ダイアフラムのような音

それでは実際に使ってみます。比較用のマイクとしてラージ・ダイアフラムのNEUMANN U87、スモール・ダイアフラムのAKG C451Bを用意し、NEVE 1081タイプのプリアンプを通してボーカルとアコースティック・ギターを録音してみました。まずはボーカルに試してみると、一聴して素性の良い音という印象! 周波数特性のグラフでは2〜8kHzが持ち上がっているので、ギラギラした音になるかと思っていたのですが、スムーズな質感です。

グリルを装着すると高域がやや低減しますが、それがちょうど良く働いているよう。ミッドサイズ・カプセルのマイクはお目にかかることが少ないので、どういう出音なのか興味がありましたが、雰囲気はラージ・ダイアフラムに近いですね。C451Bのようにツルツル、キラキラとした感じは無く、ザラっとした印象です。正直言って、今までに聴いたことのある安価なラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクよりも、U87に近いキャラクターだと感じました。U87と同じく、増幅回路にFETを使用しているのが一因かもしれません。

FETはトランジスターの一種ですが、一般的なトランジスターが電流を増幅するのに対し、FETは電圧を増幅します。これは真空管と同じなので、トランジスターでありながらファットなトーンが得られるというわけです。2万円を切る価格でありながら、このザラっとした音色を得られるマイクは珍しいと思います。

では一般的なボーカル用ダイナミック・マイクに比べると、どうでしょう? 低域は落ちていませんが、近接効果を加味すると、少し離して使った方が良さそうです。ハンド・マイクでもチェックしてみましたが、口元に接近させるとグリル内のポップ・フィルターがあるとは言え、吹かれが出てしまいました。歌録りでは5cm程度離すのが良いでしょう。また指向性が結構鋭く、正面から狙うのと下から狙うのとでは随分印象が違うので、マイクを固定して録音する場合などは意識すると良いと思います。

今度はグリルを外し、アコースティック・ギターをオフめで収めてみました。すると、不思議なことにC451Bとよく似た印象。グリルの無い状態でオフめだと、高域が目立ってくるのでしょう。ローミッドが少し弱いので、録り音にEQをかけないと、ソロで聴いたときに軽い感じがします。とはいえオケ中に入れることを考えると、このくらいが扱いやすいバランスなのだろうと思います。

この価格帯のマイクにキャラクターを求めるのは無理だと思っていましたが、DT1はなかなか良い線を行っていると感じます。ローコストかつハイスペックなマイクは存在するものの、“雰囲気”が良いマイクはほとんどありません。安価なコンデンサー・マイクを買ってみたけれど、思っていたテイストと違う……という方。そして宅録やライブのマイクをダイナミックのモデルからアップデートさせたい方には、特にお薦めです。レコーディングに特化した高感度なマイクよりやや感度が低い分、周囲の音を拾いにくいので、十分な環境を用意できない宅録ユーザーにとっても扱いやすいでしょう。

 

▲グリルを装着したところ。ねじを回すようにして取り付ける仕様だ

▲グリルを装着したところ。ねじを回すようにして取り付ける仕様だ

 

▲付属のケースとマイク・ホルダー

▲付属のケースとマイク・ホルダー

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年4月号より)

ASPEN PITTMAN DESIGNS

DT1 Dual Top Condenser Microphone

オープン・プライス(市場予想価格:17,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪形式:コンデンサー ▪指向性:超指向性 ▪ファンタム電源:48V ▪感度:5mV/Pa ▪最大音圧レベル:146dB SPL ▪周波数特性:20Hz〜18kHz ▪出力インピーダンス:200Ω ▪外形寸法:53(Φ)×187(H)mm(グリル装着時/実測値) ▪重量:400g

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