「L.R.BAGGS Session Acoustic DI」製品レビュー:スタジオ収録のサウンドを手軽に再現するアコギ用プリアンプ/DI

L.R.BAGGS Session Acoustic DI

REVIEW by 石井マサユキ(TICA / Gabby & Lopez) 2015年10月1日

SessionAcousticDI

ライブ現場でのアコースティック・ギターの音作りは、シンプルながら難しいです。会場の音響やPAシステムも大きく関係します。もしもその手前のDIで納得のいく音作りができれば、演奏者としては一安心できますね。L.R.BAGGSの新製品、Session Acoustic DIは、新しい発想のアコースティック・ギター用プリアンプ。レコーディング・エンジニアがスタジオで仕上げた最高の音を凝縮して、エンジニアの手を借りずに、ある程度仕上がった音をDIから直接出力する、という発想です。

視認性の良いメーターで入力ゲインを確認
ノイズやハウリング対策も万全

今回テストに使用したアコースティック・ギターは、L.R.BAGGSのピエゾ・ピックアップとマグネット・ピックアップをブレンドして出力できるもの。他社の純正マイクを載せたギターでもチェックしてみました。また比較対象として普段使っている同社のPara Acoustic DIも用意。どちらもAPI 512C経由で録音して試聴します。

強固な筐体は安心感があります。デザインはペダル・エフェクターのようで扱いやすいです。それぞれのノブは大きめで、操作性も良好。同社のVenue DIを半分にしたような大きさで、デザインもほぼ踏襲されています。付属の携行用ケースも過不足ない強度で、ケースごとペダル・ボードの中に放り込んでおいても大丈夫でしょう。電池残量を目視できるバッテリー・チェッカーや、持ち替え時に信号を遮断するミュートも便利です。

また、これまでの同社の製品と同様に、フィードバックを回避するためのノッチ・フィルター、フェイズ、アースの回り込みでのノイズをカットするグラウンド・リフトも備えています。便利なのは、入力レベルを目視できるVUメーター。アコースティック・ギターはポジションによって音の量感などにバラつきがあるので助かります。

本機はVenue DIのようなEQはありませんが、ハイパス・フィルターで無駄な低音をざっくりとカットすることができます。設定は40/80/120/200Hzの4段階あり、過不足ないと感じました。ガット・ギターの場合や、スリーフィンガーなど指弾きで低音とリズムをしっかり出したいなら40Hz、さわやかなストロークを弾くなら80Hzもしくは120Hzなど、楽曲や奏法によって切り替えることで個性的な音作りができます。

 

バランスの良いまとまったサウンドへ
ひずみやコンプ感を手軽にプラス

基本的な音の質感は良好で、Para Acoustic DIと比較すると若干音が前に張り出す印象があります。密度の濃い音で、その分、空間の再現性は減りますが、立体的な質感の音だと感じました。高域を直接コントロールする機能はありませんが、上品な高音なので必要性を感じません。全くEQをしないままのPara Acoustic DIの音と比べても、高音のキラキラ感がよく表現されています。コードの和音もにごることなくすっきりと押し出してくれる印象です。他社のピックアップとの相性も悪くありませんでした。

本機はスティール弦に限らず、ナイロン弦もうまく表現してくれます。ピッキングの強弱のダイナミクスも正確に伝わる印象です。派手さは無く、正直で正確な音です。すべてがバランスよく、まとまっています。

さらに独特の機能として、アコースティック・ギター用DIには珍しいサチュレートと、コンプEQが搭載されています。ナッシュビルのスタジオで、一流エンジニアが数々の高価な機材を駆使して仕上げたアコースティック・ギター(L.R.BAGGSのピックアップを使用)のサウンドを凝縮したのが本機とのこと。つまり“ピックアップで拾った音をスタジオで磨き上げて作ったサウンド”を、手軽に自宅やライブの現場で再現するというアイディアです。

サチュレートでは原音をさほど変えずに、微妙なひずみを加えることで音の深さとつややかさが増します。コンプEQはマルチバンド・コンプで、周波数帯域を3つに分割。ノブを回すだけでほどよい音圧とスムーズな音のまとまり感が簡単に得られます。ライブのときに、こうして手元で音のまとまり感をコントロールできるのはとても便利。指弾きやピックでのストロークといった奏法や、楽曲の派手さ/繊細さなどによって音質をコントロールできれば、複雑な対応が必要な現場でもストレスなく演奏に集中できると思います。私はサチュレートが2、コンプEQが6辺りの設定の音が気に入りました。

§

前述したように、私はライブでPara Acoustic DIを使っていますが、この使い勝手を考えるとSession Acoustic DIに替えようかとも思います。EQでの補正とは全く異なる発想で、エンジニアの音作りをペダル一つで再現しようとしている本機のアイディアには、なるほどと思う部分が多々ありました。

▲右側には入力端子(フォーン)とハイパス・フィルター・スイッチを装備

▲右側には入力端子(フォーン)とハイパス・フィルター・スイッチを装備

▲左側には出力端子(フォーン)とグラウンド・リフト・スイッチを備える

▲左側には出力端子(フォーン)とグラウンド・リフト・スイッチを備える

 

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年9月号より)

L.R.BAGGS

Session Acoustic DI

オープン・プライス(市場予想価格:29,800円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪電源:48Vファンタム、9Vバッテリー、ACアダプター(9V) ▪平均電池寿命:125時間 ▪SN比:90dB(無負荷) ▪ハイパス・フィルター周波数:40/80/120/ 200Hz ▪外形寸法:101(W)×45(H)×158(D)mm ▪重量:680g ▪付属品:キャリング・ケース

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