「BOCK AUDIO 241」製品レビュー:Ela M 251のキャラクターを受け継ぐハンドメイドの真空管マイク

BOCK AUDIO 241

REVIEW by 林憲一(ORGANIC MIX DESIGN) 2015年6月17日

BOCK

ハンドメイドによって生み出されるハイエンド・マイクの数々が高い評価を受けているアメリカのメーカー、BOCK AUDIO。創設者のデヴィッド・ボック氏はアメリカ著名スタジオのテクニカル・エンジニアとしての経歴を持ち、そのときに培ったノウハウを同社のマイク製作へ大いに反映しているという。今回は、ビンテージ・コンデンサー・マイクの中でも特に希少価値の高いTELEFUNKEN Ela M 251を現代によみがえらせた“241”を紹介しよう。

1インチ径カプセルやトランスを内蔵
5〜10kHzを減じるハイカットを装備

まず、本機の基になったEla M 251に関して少し説明しておく。Ela M 251は、AKGがTELEFUNKENからの依頼により、当時の同社フラッグシップ・マイクであったC12と同じカプセルや真空管を使って、1960年からOEM生産したマイク。心臓部はC12と同じでも、回路設計や筐体などに若干の差異があるため双方のサウンドには違いがあるが、中域の柔らかさ、高域の伸びやかさや透明感といった特徴は共通しており、特にボーカル用として大変人気のあるマイクだ。現在はどちらのマイクも希少だが、とりわけオリジナルのEla M 251はお目にかかることが少なく、“幻のマイク”と呼んでも過言ではないだろう。

BOCK AUDIOは、このEla M 251の復刻版として251というモデルを生産している。そして今回の241は、“251の特性をできるだけ生かしつつコストを抑えたボーカル・マイクを”という現場の要求に応えて開発された。ドイツ製ハンドメイドの1インチ径カプセルは単一指向性で、回路に搭載されている真空管はEF814K。出力段には、ハンド・ワイアリングによるビンテージ・スタイルの専用トランスが入っている。

機能面での最大の特徴は、本体に設けられた“flat/HF”スイッチだろう(写真①)。HFに設定すると、5〜10kHzにかけてのハイが−1dBカットされ、高域のギラつきが気になる音源に対応するようだ。flatはこのハイカット・フィルターを通さない状態で、ビンテージ風というよりはモダンなコンデンサー・マイクに近いと音とうたわれている。マイクにはローカット・フィルターを搭載しているものが多いが、ハイカット・フィルターを組み込むとは大変ユニークだ。同梱品は専用の100Vパワー・サプライ(写真②)、同じく専用のマイク・ケーブル、木製マイク・ケース、ショック・マウントとなっている。

 

BOCK1

▲写真① flat/HFスイッチ。HFに設定すると5〜10kHzが−1dBカットされる。なおカタログなどではflatが“Bright”、HFが“Normal”と表記されている

BOCK2

▲写真② 付属の100Vパワー・サプライ、P-251。マイクを接続するための6ピン端子(写真右)や、プリアンプなどへの出力端子(同左)が備えられている

 

柔らかくて飽和感の少ない中域
高域はよく伸びつつきらびやか

ここからは使用感をお伝えする。まずはフィルターをかけないflatの状態で、アコースティック・ギターに立ててみた。併用したマイクプリはFOCUSRITE ISA 430 M
KII。ストロークとアルペジオを織り交ぜつつその音に耳を傾けると、最初に印象的だったのは中域の柔らかさだ。900Hz〜1.5kHz辺りのピークが非常にうまくまとめられており、飽和感が少なく余裕を持った音像が得られた。低域は130Hz辺りにやや膨らみを持ち、中域の収まり具合と相まって太く充実した印象。高域に関しては嫌なギラつきが無く、きらびやかさが感じられる。ハイクラスのマイクらしく、ソースに対するフォーカスの甘さは見受けられない。ここでHFに設定し、ハイカット・フィルターを入れてみた。スペック通り中高域から高域がほんのりと抑えられ、より温かみのあるサウンドが得られた。

次に女性ボーカルに使ってみることに。アコギと同様、中域の挙動に余裕があるため、声を張ったときでも聴きやすい。ハイカット・フィルターをOFFにしたフラット時の高域の伸びは十分なものだが、ザラつき気味に聴こえたり、子音などが気になるようであればフィルターを入れると良いだろう。近接効果に関しては程良くコントロールされているが、やや太めに感じることもあったので、ソースとの距離をうまく調整することがこのマイクの特性を生かす上で重要だと感じた。いわゆるNEUMANN系と呼ばれるマイクは、中域の密度が高くしっかりとした音色だが、この241はAKG系のスムーズかつ伸びやかなサウンドなので、ともするとピーキーになりがちな女性ボーカルに最適だろう。もちろんアコギやピアノ、ストリングスなど、各種生楽器にも適している。

§

ビンテージ・マイクをベースにしたモデルとなると、“どれだけオリジナルに近いか”という話になりがちだが、そのオリジナルも半世紀以上の年月を経ているものだと個体差が激しく、何が正解か判断が難しい。241はビンテージ・マイクのノウハウが注入された現代のモデルとして、個性的かつ良い一本だと感じる。

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)

BOCK AUDIO

241

570,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪形式:コンデンサー▪指向性:単一▪カプセル口径:1インチ▪内蔵真空管:EF814K(ニュー・オールド・ストック)▪周波数特性:30Hz~18kHz(±2dB)▪ダイナミック・レンジ:94dB▪感度:19mV/Pa ▪等価ノイズ・レベル:18dB(A-weighted)▪S/N:76dB(A-weighted)▪ひずみ率:0.5%(@1kHz、112dB)▪インピーダンス:200Ω▪外形寸法:52(∅)×216(H)mm▪重量:694g

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