「GENELEC 8330A」製品レビュー:自身の環境に最適な音場を構築できる2ウェイ・パワード・モニター

GENELEC 8330A

REVIEW by 松隈ケンタ(SCRAMBLES) 2015年3月15日

GENELEC-8330A_1503

DAW全盛の昨今、さまざまなメーカーから発売されているパワード・モニターですが、無骨なデザインの多いスタジオ・モニターの中で、スタイリッシュなルックスが魅力的なGENELEC。そのルックスとは裏腹に、ダイナミックで解像度の高いクリアなサウンドに定評があり、誰もが1度は“試してみたい”と思ったことがあるでしょう。今回は、8030Bと同サイズで5インチ・ウーファーを搭載した2ウェイ・モデル8330Aを紹介します。環境に合わせて音補正ができるSAM(Smart Active Monitor)システムに対応しているので、制御ソフトGLM 2.0を使って、筆者のスタジオで検証していきましょう。

情報量が豊富で 中低域がしっかり出ている印象

SAMはコンピューターを使い、GLM 2.0で最適な音場をチューニングしますが、まずは現在のモニター環境に置き換える形で筆者自身が設置し、スピーカーの特性を検証してみました。 アンプは高域/低域ともに50WのクラスDということですが、音を聴いた第一印象は、小ぶりなボディの割にはガッツがあり、音がでかい! 音量というより音がぎゅっと詰まっている感じで、情報量が豊富な印象です。個人的にGENELECに対しては、もっと中高域寄りでシャリっとしたイメージだったのですが、中低域がしっかり出てきて意外でした。ステレオ感もよく各楽器の定位が細かく見えるので、ミックスに関しても、しっかり詰めることができそうです。少し離れた場所で聴いても、“音が広がって密度が薄くなる感じ”が少なく、コシがあり抜けてくるサウンドが非常に好印象でした。  

自身の音場をプリセットでき 別の環境でもすぐに再現可能

続いて、制御ソフトGLM 2.0で音場を調整してみましょう。まずは専用のネットワーク・アダプター(別売り)とコンピューターをUSBで接続します。サイズはギターのコンパクト・エフェクターより薄め、スマホより少し厚みのある感じでしょうか。そこからLANケーブルで2つのスピーカーを直列に接続します。さらに、とがったフォルムがかっこいい専用の測定用マイク(別売り)をアダプターに接続して、モニタリングしたい位置に立てれれば準備完了です。事前にインストールしておいたGLM 2.0(現在Windowsのみ対応)を立ち上げるとすぐに設定モードに入ります。そして画面上にある、モニター/専用マイクのアイコンをドラッグ&ドロップし、実際の配置と同じように登録します。ここでは2台の設定ですが、最大30台まで制御できるようです。登録が終わったら早速測定開始。 5.1chのホーム・シアターや、KEMPERのプロファイリング・アンプなどを設定したことがある方は分かると思いますが、何とも言えない不思議な音が左右のユニットから再生され、それを専用マイクが拾います。あとは自動的にリスニング・ポイントにおける周波数特性や再生レベルの差などの解析が行われ、環境に合わせた最適なチューニングを施していきます。文字で説明するとややこしく感じられるかもしれませんが、接続から設定完了まで時間にして5分足らずでしたので、自分の耳で調整することと比べればあっという間です。ちなみに、自動的に音場を調整したあとに、自分好みのサウンドにカスタマイズも可能。これらの設定はコンピューター上にプリセットとしてセーブしておくことができるため、外部のスタジオやほかのミュージシャンの自宅などに持ち込んで作業する場合も、同じモニタリング環境の構築がすぐに可能となります。これは非常に画期的なことで、録音からミックスまで同じ環境で行えないエンジニアや、リハスタに機材を持ち込んで作業するクリエイターにとっても役立つ、本当に素晴らしい機能だと思います。さて、設定が完了したところで筆者のスタジオでも再チェックしてみましょう。 パッと聴いた印象では、低音がバッサリと減らされて、調整前の音に比べ地味に感じましたが、聴き慣れてくると、上から下まで非常にバランスの良い音像になっていました。これはもともとスタジオ自体が、かなりローが出ていたということですね。無駄なハコ鳴りがなくなったため、音量を上げても団子状態の音域が生まれづらく、解像度の高い素晴らしい音場が構築されました! せっかくいいプラグインやマイクなどの機材にこだわっていても、音の出口=モニタリング環境がしっかりしていて、正しい音像が見えていないと楽曲制作や良いミックスはできません。逆に、モニター環境を一つ変えるだけで、聴こえてなかった音が聴こえるようになり、完成する作品が劇的に変化することもたくさんあります。優れた作品に一番大切な要素である、音場調整を完ぺきに行ってくれるこのモニターは、現代のクリエイターのニーズに対応した非常に優れた一品だと思います。ぜひSAMシステムとともに試してみてください。

▲リア・パネル。上部にネットワーク端子×2、その右側が電源スイッチ。その下は電源インレット、AES/EBU入力&出力(XLR)、アナログ入力(XLR)

▲リア・パネル。上部にネットワーク端子×2、その右側が電源スイッチ。その下は電源インレット、AES/EBU入力&出力(XLR)、アナログ入力(XLR)

  撮影/川村容一   (サウンド&レコーディング・マガジン 2015年3月号より)

GENELEC

8330A

136,000円(1本)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪最大出力:104dB ▪周波数特性:45Hz〜23kHz(−6dB) ▪クロスオーバー周波数:3kHz ▪アンプ:50W(LF)+50W(HF) ▪外形寸法:189(W)×299(H)×178(D)mm ▪重量:5.5kg(1本)

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