「GENELEC 8351A」製品レビュー:DSP補正機能を備えた同軸+上下ウーファーの3ウェイ・モニター

GENELEC 8351A

REVIEW by 鎌田岳彦 2015年2月15日

GENELEC8351Af_1502

アクティブ・モニターのメーカーとして知られるフィンランドのGENELEC。今回テストする8351Aは名機1031Aがルーツとのこと。このサイズでの3ウェイ化も気になるところです。

専用ソフトやマイクなどを使い
数分で測定と補正が完了

実機到着前の資料を見て、もう少しコンパクトな大きさかと思っていましたが、届いてみると想像よりも一回り大きい! 1本で19kgと、見た目よりもずっと重量があります。まるで一つ目小僧のような外観で、縦置きにした場合、上下にスリットがあります。かなりインパクトある、とても個性的なデザインですね。その“目”に相当するのは中域/高域の同軸ユニット。上下のスリット裏には楕円形のウーファーが1基ずつ搭載されています。アンプは中域/低域用がそれぞれ120W/150WのクラスD、高域用として90WのクラスABを用意。490Hzと2.6kHzでクロスオーバーする3ウェイ構成で、32Hz〜40kHzという驚異的な周波数特性を実現しています。リアには、アナログ(XLRバランス)・デジタル(AES/EBU)の各インプットと、本機の最大の特徴であるSAM(Smart Active Monitoring)システムの制御に使うネットワーク端子が。また、今までの同社モデルと同様の、マニュアルで音質補正ができるDIPスイッチと、音量トリムも継承しています。

大きさ/重さがかなりあるので、普段YAMAHA NS-10MとTANNOY Reveal 6を置いているスチール・ラックに、これらのスピーカーをどかして設置。SAMの設定ソフト、GLM 2.0はMac版が開発中とのことで、オタリテックのスタッフにWindowsで測定してもらい、その設定を本体に記憶して試聴しました。スピーカー2本とネットワーク・アダプター、パソコンをイーサーネット・ケーブルでつなぎ、ネットワーク・アダプターと接続した測定用マイクを立てて、L/Rからスウィープ音を出して測定。ものの数分で測定と調整が終了しました。なおGLM 2.0ソフトとネットワーク・アダプター、マイクは8300-601(85,000円)というセットで発売されています。

 

無理な低音感とは無縁のローエンド
同軸らしい正確な位相

さて、まずは現在自宅でミックス中の音源を聴いてみました。まだ大ざっぱなバランスで音も決まり切っていなかった素材でしたので、各トラックの録音状態、EQやコンプの過度なエフェクト処理や、リバーブのかかり具合までとてもよく分かります。特に驚いたのは低域の音像。我が家ではこれまで、80Hz以下は恐らくかなりデタラメな音だったようで、普段の仕事でもそこは別スタジオで確認していましたし、実際GLMのデータでも左右でこのポイントの特性が違っていました。8351Aではそれを補正するともに、無理な低音感とは無縁の、とてもスムーズにつながった低域。100Hz以下のコントロールも積極的にできそうです。また同軸ならではの位相感が素晴らしい! SAMシステムでは不足分をブーストせず、ディップした帯域に合わせてマルチフィルターでマイナス方向の補正をかけているとのことで、これも位相の正確さに一役買っているようです。

同様の機能を持ったスピーカーをこれまでにも幾つか聴いていましたが、“若干無理して人工的な音になってしまっている”という印象がありました。8351AとSAMシステムは、そのイメージを一掃しました。“これぞモニター・スピーカー”と言える実力です。ただし、音量を上げてもバランスが崩れないので、ついつい音量を上げたくなってしまいます。我が家で使うには、若干オーバースペックかもしれませんね。逆にある程度の音量が出せるスタジオや作業スペースでは、大変お薦めできるシステムと言えるでしょう。

また、スタジオでは例えばミキサー席、プロデューサー席、その後ろのスペースなどを細かくGLMで測定して、プレイバック時に各設定を切り替えてモニタリングしたり、GLM上でのマニュアル補正もできるようなので、使い方はアイディア次第。さらに録音用にデザインされていない部屋、例えば、アーティストの自宅やホール楽屋でのコンサート収録などでのモニター環境補正には、とても威力を発揮してくれることでしょう。

 

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、ネットワーク端子×2、各種設定用のDIPスイッチ×2と音量トリム。その下には電源インレット、AES/EBU出力&入力、アナログ入力がある

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、ネットワーク端子×2、各種設定用のDIPスイッチ×2と音量トリム。その下には電源インレット、AES/EBU出力&入力、アナログ入力がある

 

撮影/川村容一

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年2月号より)

GENELEC

8351A

530,000円(1本)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
▪最大出力:110dB SPL ▪周波数特性:32Hz〜40kHz(−6dB)、38Hz~21kHz(±1.5dB) ▪クロスオーバー周波数:490Hz&2.6kHz ▪アンプ:150WクラスD(LF)+120WクラスD(MF)+90WクラスAB(HF) ▪外形寸法:287(W)×452(H)×278(D)mm(Iso-Pod含む) ▪重量:19kg(1本)

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