手軽にビンテージ感を演出できる大音量に対応したリボン・マイク

MXL R144

REVIEW by 中村文俊(Officeインビレッジ) 2012年1月15日

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DAWなどのデジタル機器が普及するほどに、目にする機会が増える”アナログ感・温かい音・飽和感の解消”という言葉。リボン・マイクもその流れで復活した機材のひとつです。かつてアナログのMTRやSONY PCM-3348などで録っていた時代には、特殊用途で使うことが多いマイクでしたが、最近では各メーカーがリボン・マイクを発売し、値段やスペックもかなりこなれてきています。昔はいかにハイファイにしようと努力したのが、最近ではその逆を求めることもしばしば。時代の波とは面白いものです。さて、今回紹介するリボン・マイクのMXL R144は、何と実売で1万円を切るというモデルで、お手軽にリボン・マイクの”あの感じ”を味わうことができます。それでは早速試していきましょう。

マイク・ホルダーなど充実の付属品
SPL130dBで大音量入力にも対応

本機にはキャリー・ケースが付属し、その中にマイク本体、ショックマウント・マイクホルダー、マイクを磨くためのクロス、ショックマウントの交換用ゴムも付属します。この価格でよくぞこれだけ付属品を充実させましたね、というのが正直な第一印象です。特にショックマウントの交換用ゴムは、マイクを使っているうちにゴムが伸びてきて使い物にならなくなるので、交換用パーツが付属しているのはうれしいところです。

マイク本体はパープル色とメタル・フィニッシュで見た目にもやる気を感じます。もちろんリボン・マイクなので落としたりするのは厳禁ですが、作りもしっかりしていて、少々ラフに扱っても壊れなさそうです。指向性パターンはリボン・マイク特有の双指向性で、薄さ1.8ミクロンのアルミニウム・リボンを組み込んでいます。また本機は最大SPLが130dBまであり、加えて価格も手ごろなので、さまざまな録音に試すことができるでしょう。元来リボン・マイクは吹かれに弱く、大音圧の録音では扱いづらいのに加えて、高価なモデルが多いため気を遣ってしまい、実験的なレコーディングには使いにくいマイクでもありました。ですから本機は良い意味で、いろんな録り方にチャレンジできそうで楽しみです。しかし、気軽にリボン・マイク特有の温かみのある音質を試せるとは、良い時代になりましたね。

ちなみに付属のショックマウントにセットすれば関係ありませんが、マイク自体はハンドリング・ノイズが多めなので、マイクを動かすときはモニターをミュートしましょう。これは一般的な話で本機に該当するかは分かりませんが、リボン・マイクはファンタム電源を間違って入れると故障する場合があるので、念のために注意してください。

リボンらしいふくよかで甘い音色
ナチュラルな音の太さが印象的

それではまずはボーカルで音をチェックしてみます。とてもふくよかでリボン・マイクらしい甘い音色が得られました。有名なリボン・マイクと比べても音の太さでは本機の方が優れていると思います。ただし、この点はマイクとの距離で音質がかなり変化するので、欲しい音色とのマッチングには位置関係が肝になるでしょう。MXLのWebサイトに公開されていた音色デモのムービーでも、ボーカルは距離を取ってマイクを設置していました。少し離し気味にセットすると、まったくギスギスしないナチュラルな歌声を拾ってくれます。重低音がボンボンしていないのにもかかわらず、ちゃんと太さがあるのはうれしいですね。ベタ付きの声でも吹かれに強い印象でした。

次にブラスでのチェックです。トランペットとトロンボーンにはしばしばコンデンサー・マイクを使いますが、軽くなり過ぎたりひずみっぽくなることがあります。本機の場合はそれも無く、甘い胴鳴りの音を拾ってくれるので、かなり使える音色だと思いました。ただし、本機をテストした録音では、ポップス向けの切れのあるブラス感も欲しかったので、コンデンサー・マイクとブレンドすることで良い感じに録音することができました。

続いてギターですが、アコギの弾き語りっぽいアルペジオでは1本でも良い感じに録れました。またバンド中でコンデンサー・マイクとミックスしても、サウンドが金属っぽくなり過ぎずに好印象です。本機は最大SPLに余裕があるので、エレキギターでもディストーションからクリーンまで使える上、ある程度の爆音でも全く問題ありません。ただし癖となる部分は薄いので、ダイナミック・マイクなどとミックスすることで、バリエーションに豊んだサウンドを得ることができます。

いろいろと試してみましたが、やはりリボン・マイクは本体のゲインが小さいので、簡易的なマイクプリではノイズ面でも不利になります。ですから本機を使う場合、ある程度クオリティの高いマイクプリを使った方が、その性能を遺憾なく発揮できると思います。

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年2月号より)

撮影/川村容一

MXL

R144

オープン・プライス (市場予想価格/9,975円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

問い合わせ
宮地商会M.I.D.
TEL: 03-3255-2888 http://www.miyaji.co.jp/MID/

【SPECIFICATIONS】
▪指向性/双指向▪周波数特性/20Hz〜17kHz▪感度/−56dB(0dB=1v/pa)▪出力インピーダンス/250Ω▪最大入力音圧/130dB SPL(@1kHz)▪外形寸法/47(φ)×171(H)mm▪重量/400g

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