名機NT1譲りの高性能&コスト・パフォーマンスを誇るコンデンサー・マイク

RODE NT1-A

REVIEW by 鎌田岳彦 2003年6月1日

20030601-05-001

6年も前になるのか……本誌でRODE NT1のレビューを書いたのが。“えっ!この値段でこんなスペックのコンデンサー・マイクが……”という当時の衝撃は忘れません。このNT1の登場以降、コンデンサー・マイクの価格がビックリするほど下がったのも記憶しています。元祖NT1は全世界で大ヒットしたマイクで、読者の中にもユーザーが多いことでしょう。そして、コスト・パフォーマンスも含めてその実力が世界で認められたNT1の後継機に当たるのが、今回レビューするNT1-Aです。NT1レビュー時の印象も踏まえて、早速NT1-Aのチェックをしていきましょう。

スタイリッシュなボディと
驚きのハイスペック

それでは、まず外観を含めた本機の印象から。大きさは恐らくNT1と同じ程度のサイズですが、仕上げ具合はかなり良くなっており、高級感溢れるサテン・ニッケル仕上げのボディです。NT1は実力本位というか無骨というか、デザイン的な面にはあまり好感を持てませんでしたが、NT1-Aでは手触りも含めてかなりおしゃれに生まれ変わった感じです。ダイアフラムが格納されている先端のメッシュ部分は、内側が細かく外側は粗めの2重のネットで覆われています(NT1と同様、サイド部分に折れ曲がる部分の加工が若干粗いのが残念です)。本体にはパッドや指向性切り替え、ローカットなどのスイッチは一切付いておらず、シンプルな設計となっています。

ダイアフラムは1インチ金メッキ加工で単一指向性のみ。XLR出力端子も金メッキ仕様になっています。同社のNT1000から引き継いだサーフィス・マウント電子回路を搭載し、またSPL値137dBA、セルフ・ノイズ値5dBAと驚異的なスペック・アップが図られています。コンソールやマイク・プリアンプからファンタム電源を供給することで、すぐに使えるでしょう(48V以外に24Vの電源でも稼働可能)。付属品には、ショックマウント・サスペンション・ホルダーと専用ソフト・ケースが用意されています。

広い帯域特性と
歪みにくさが魅力

それでは、実際のチェックに移りましょう。ここではNT1-AのほかにNEUMANN U87&U87Aiも用意し、FOCUSRITEのコンソールに付いているヘッド・アンプにつなげて比較してみました。

各マイクの出力差は、U87だけ5〜6dBほど低かったですが、NT1-AはU87Aiとほぼ同レベルの高出力で、しかもマイク自体の残留ノイズはU87Aiよりも若干少ないように感じました。

次に男性のストレート・ボイスを対象に、1mほど離れた場所にマイクを設置してチェックしてみました。最初はマイクごとのキャラクターの差はあまり無かったのですが、対象に少しずつマイクを近づけていくにつれ、キャラクターの差が出てきました。ちょうど50cmくらいの距離まで近付けた状態では、音の粘り具合がかなり違います。NEUMANNの2本はいずれも中低域に野太さのような存在感がありますが、NT1-Aは若干スッキリしたサウンドです。高域の感じはU87Aiに似ていますね。かなり高い帯域までスムーズに伸びています。10cm前後のオンマイクの状態ではもう少し差が表れ、NT1-Aは若干ポップ・ノイズが多くなったようにも感じられました。

さらにアコースティック・ピアノでのチェックです。U87はなだらかなカマボコ型周波数特性で、低域/高域のロールオフ感がありましたが、U87AiとNT1-Aはよりワイドな帯域特性を持っているようです。ほかにもピーク成分のある音や大音量でのサウンド・チェックもしましたが、NT1-Aで全く問題無く集音することができました。特に、NT1-Aはかなり大きな音が入力されても歪みにくい特性を持っていることが分かりました。

今度は、別のスタジオで女性ボーカルとアコースティック・ギターを対象に、NEVE 1073のマイク・プリアンプを使ってNT1-AをU87と比較してみました。これまでと同様、集音レンジの広さはNT1-Aの勝ちでした。ただ、NT1-Aはウィスパー・ボイスに対してはポップ・フィルターなどを使わないと“吹かれ”が起こりやすいのでご注意を。またアコギの場合、高域のヌケは良いのですが、集音レンジが広い分、低域や振動などのノイズまで拾ってしまうようです。これを回避するためには、対象楽器に対する距離や角度など、マイキングをいろいろ試して音決めをしましょう。

以上、全体的なNT1-Aの印象としては、ワイド・レンジを誇り、歌など小音量の楽器からギター・アンプやドラムなどの大音量の録音まで、かなり万能に使えるマイクだと思いました。逆に“吹かれ”には弱いので、ボーカルの極オンマイク時や、ジャンベ(パーカッション)のロー・セッティング時には、空気(風)がマイクのカプセルに直撃しないようにしましょう。また帯域特性が広いので、超低域のノイズのチェックは大切ですね。余計な低域はマイキング、ローカットやEQ等で整理しながら録音するといいです。

今回のチェックで、RODE社の技術が現代の録音環境に合わせてよりグレードアップしたことを実感しました。本誌読者も含め、整備されたレコーディング・スタジオ以外での録音が当たり前に増えてきた昨今、このスペックのマイクを使いこなすためには、スピーカーやヘッドフォンなど、より良いモニター環境が重要だと痛感しました。それにしても、このコスト・パフォーマンスは驚きです。この価格ですから、ピアノやドラムなどのステレオ録音に備えて、できたら2本そろえることをお勧めします。同社のコスト・パフォーマンスの高さは、一体どこまで行くのでしょうか……!

RODE

NT1-A

28,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■カプセル/1インチ・シングル・ダイアフラム
■指向性/単一指向
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/100Ω/5mA
■感度/−31.9dB re 1V/Pa(25mV@94dB SPL)±2dB
■外形寸法/50(φ)×190(H)mm
■重量/326g

TUNECORE JAPAN