リアル・タイム操作をさらに追求したGrooveBoxの新機種

ROLAND MC-307

REVIEW by 高井康生(Ahh! Folly Jet) 2000年6月1日

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ダンス・トラック用ワークステーションとしては、もはや”定番”の地位を確立した感のあるROLANDのGrooveBoxファミリーに、新たにMC-307が加わった。今回は価格的にはシリーズ中ミッド・クラスといった設定になっているが、大幅な操作性の向上と強力な新機能の追加で、先行上位機種にも負けない非常にコスト・パフォーマンスの高い仕上がりになっている。

GrooveBoxファミリーの
多機能&簡単操作を継承

MC-307は大まかに言って、音源、シーケンサー、エフェクターという3つのセクションと、プログラミングやちょっとした演奏に使う鍵盤、各種エフェクターや内蔵シンセ音源をリアル・タイム制御するためのつまみで構成されている。ユーザーがプログラミングした数小節のパターンを組み合わせてソングを構成し、再生させながら各パート(リズム、ベース、上モノなど)をミュート・ボタンで出し入れしたり、フロント・パネル上の各つまみでフィルターやLFO、各種エフェクターのパラメーターにアクセスして演奏する”ライブ・シーケンサー”という説明が分かりやすいだろう。パネル・デザインも先行の2機種とは印象が変わり、随分すっきりしているが、それと正比例して操作も非常に簡単で合理的になった気がする。どうやら今回の開発に当たって、オール・イン・ワン・タイプの弱点である操作性の難点が徹底的に見直されているらしいのだが、まずは基本的なセクションから見ていってみよう。

ダンス・ミュージック制作に
最適な音色を搭載した音源部

MC-307の音源部は、先に発売されている上位機種MC-505と同等のPCMシンセサイザー・モジュール(最大同時発音数64音)を搭載しており、800種類の音色と40種類のリズム・セットが用意されている。各音色は、ピアノ、キーボード&オルガン、ギター、ベース、オーケストラ、ブラス、シンセ、パッド、エスニック、リズム&SFXの10種類のカテゴリーに分類。まずこのカテゴリーを選んで、その中から気に入った音色を探せるようになり、検索の能率が格段に向上した。

音色としては、昨今のさまざまなダンス・ミュージック・スタイルのマナーに対応すべく、あらかじめ加工されたTB-303、Juno、Jupiter、TR-808/909といった往年のROLAND名機群や、FM音源のシミュレートまでをも含むビンテージ〜モダン・シンセ群を搭載しており、どれも”それっぽさ”抜群で即戦力が高い。一方、ピアノやオーケストラ・ウインドなどの生モノ系の音色は、単体で聴くと専用機のそれとは違い、多少チープな印象を受けてしまうのだが、オケの中に入れてやると、不思議と他の”ダンス・ミュージック・トーン”との絡みが良く、感心してしまった。

さらにユーザーは、フィルター、LFO、エンベロープ、アンプなどのパラメーターにアクセスして、かなり本格的にオリジナルの音色を作成可能であり、作成したトーンはユーザー・パッチに最大256個まで保存できる。リズム・トラックを含む最大8パートのマルチティンバー音源としても使えるこれらの音色ライブラリーは、MC-307の大きな魅力と言えるだろう。

2種類の打ち込み方法が選べる
シーケンサー部

MC-307のプログラミング方法には、タイミング・スケールに沿って音程や音の長さなどを指定していく”TR-REC”(いわゆるステップ・レコーディング)と、キーボード・パッドを実際に演奏して打ち込むリアル・タイム・レコーディングの2通りが用意されている。TR-RECはリズム・トラックの打ち込みに、リアル・タイムは上モノの打ち込みにと目的に合わせて選べるわけだが、どちらの方法で打ち込んでも小節数の増減やトランスポーズなどのMIDI情報へのアクセスを含め、通常のMIDIシーケンサーで可能なエディットは網羅していると言えるだろう。

さらに、演奏データのタイミングをクロック単位(1小節長の1/384)で前後に微妙にずらす”シフト・クロック”や、ROLANDシーケンサーの伝統芸である、データを1音ずつジョグ・ダイヤルで追って補正可能な”マイクロスコープ・エディット”、演奏データの符割りを倍の長さや半分の長さに変換できる”リクロック”など、異なった符割り/BPMのパターンを接続するときに便利なエディット・プログラム群がトラック制作の自由度を上げている。一見地味に見えるところまで周到に考えられた設計は、ビギナー・ユーザーにとってもうれしい配慮だ。

また、GrooveBoxシリーズの際立った特徴と言えるのが、あらかじめ71種類用意されたテンプレート(例: 後ノリ/軽くスイングなど)を当てるだけで、パターンのノリとアクセントを変化させることのできる”グルーヴ・クオンタイズ”と、ギターのストロークやボサノバのタッチ、さらにカントリーの3フィンガー奏法のシミュレートまでをも含む多彩な”アルペジエーター”。これらの機能を使って、1つのパターンにさまざまな表情を持たせたり、アレンジの実験が簡単に行なえるところなどは、作曲支援ツールとしても力を発揮してくれそうだ。

新機能GRABスイッチ搭載の
エフェクター部

内蔵のエフェクターは、同時使用可能な3系統が用意されており、それぞれにリバーブ、ディレイ、そしてダンス・ミュージック用に最適化された25種類のプログラムを備えたマルチエフェクター”M-FX”(表①)が割り当てられている。

ここまではMC-505とほぼ同じスペックだが、今回は”GRABスイッチ”という新機能が追加された。これは同社のDJミキサーから移植された機能で、ひとことで言えばリアル・タイムでエフェクトのON/OFFを行なうというもの。通常はOFFの位置にあるスイッチ・レバーをGRABの位置に倒している間だけ、あらかじめアサインしておいたエフェクトがかかり、手を離せばスイッチ・レバーがスプリングでOFFの位置に戻って、エフェクトがスルーされる……という至って簡単な仕組みだ。このエフェクトのON/OFFに楽器の演奏的なフィールを加味したダビーな設計は、本機の”遊べるマシン”感を強力に煽っている。店頭チェックの際はぜひとも試していただきたい機能の1つだ。

マルチエフェクター”M-FX”は、先に述べた通り基本的にはMC-505と同スペックだが、今回新たに流行りの3バンドの”アイソレーター”というプログラムが加わっている。これは特定の帯域をカットする強力なフィルターで、GRABスイッチと組み合わせれば、トラックの再生中に低音部だけをカットしたり、反対に高音部だけをカットしたりできるというスグレものだ。

他にも再生中のBPMに合わせて34種類のタイミングと16種類のアクセントで音をブツ切りにする”スライサー”、フィルターとリング・モジュレーターを足したような独特の効果が得られる”ラジオ・チューニング”といったトリッキーなものから地味なところでは内蔵のPCM音源とのマッチングが良い”ディストーション”まで厳選された”使える”エフェクトが用意されている。

さらに各エフェクトのパラメーターは4つの”アサイナブルつまみ”に割り当てられるので、トラックの再生中にリアル・タイムで直感的にエフェクトをコントロールすることが可能だ。もちろん、このアサイナブルつまみには、シンセサイザー・セクションの任意のパラメーターをアサインしてコントロールすることもできる。

ターンテーブルとの併用にも
バッチリな機能を装備

MC-307には、DJプレイ時にターンテーブルとのBPM合わせをより直感的に行なうための”ターンテーブル・エミュレーション”というブロックが装備されている。フロント・パネルの右側にある大きなスライダーと、PITCH/BPMボタン、HOLD/PUSHボタンからなるこのセクションは、見ての通りターンテーブルのピッチ・アジャスト・スライダーを模したものだが、デジタル機器ならではの利便性も当然合わせ持っている。

とはいえ、使い方は至って簡単。PITCH/BPMボタンが両方ONになっているときは、スライダーはターンテーブルと同じ、つまり上下させることによってピッチと速度が変化するという働きをするが、どちらか一方のボタンのみをONにすると、ピッチまたは速度のみを変化させることができるというものだ。

まずはフロント・パネル右下のTAPボタンで、まず大体のBPMを合わせてから、このターンテーブル・エミュレーション機能で微調整をするという使い方がセオリーなのだろうが、HOLD/PUSHボタンの使いこなしによっては、トリッキーな効果も期待できる。この機能もまた、MC-307のDJ用機器にも通じる直感的なオペレーション設計を強く感じさせるセクションだ。

大急ぎで説明してきたが、他にもローパス、バンドパス、ハイパス、ピーキングの4タイプが用意された効きの良いフィルターや、6種類の波形をピッチやフィルター、アンプに自由にアサインできるLFOセクション、そしてキーボード・パッドに割り当てたシーケンス・フレーズやドラムのフィル・インを指1本で再生する”リアル・タイム・フレーズ・シーケンス(RPS)”機能など、先行機器から継承した各種の便利機能も含め、徹底してリアル・タイム制御にこだわった設計がなされており、いじっていて本当に飽きない。また、ほとんど取扱説明書を見ずに目的のパラメーターにたどりつけるほどすっきりしたインターフェース・デザインも好印象だ。

今回はちょっとほめ過ぎの感も否めないが、いやホントに便利な時代になったな……というのが、年寄りくさいが素直な感想だ。テクノ/ハウス系の反復を主体としたトラックを作りたい人、またDJプレイとの併用に便利なライブ・シーケンサーを探している人にも、要チェックの注目マシンだと言えるだろう。まずは店頭のデモ機で、国内屈指のクリエイターたちが制作した240種類のプリセット・パターンを試聴してみてはいかがだろうか。「え〜っ、1台でココまでできるの?」と驚くのは筆者だけではないはずだ。

ROLAND

MC-307

75,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■パート数/24パート(メイン=8+RPS=16)
■最大同時発音数/64音
■パッチ数/プリセット=800、ユーザー=256
■リズム・セット数/プリセット=40、ユーザー=20
■エフェクト/リバーブ=6タイプ、ディレイ=2タイプ、M-FX=25タイプ
■シーケンサー/トラック数=8+ミュート・コントロール、分解能=96クロック/4分音符、テンポ=20.0〜最大240.0、ソング数=50
■録音方法/リアル・タイム、NEW TR-REC
■パターン数/プリセット=240、RPS=470、ユーザー=最大200
■最大記憶音数/約95,000音
■クオンタイズ/グリッド、グルーブ(71タイプ)、シャッフル
■アルペジエーター/プリセット=43、ユーザー=10
■接続端子/ヘッドフォン、MIX OUT<L(MONO)/R>、フット・コントロール、MIDI IN/OUT
■外形寸法/422(W)×98(H)×277(D)mm
■重量/2.2kg

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