レベル・マキシマイザーL1をハードウェア化した製品

WAVES L2

REVIEW by 伊藤圭一(KIMスタジオ) 2000年6月1日

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WAVESというイスラエルの会社が開発した最新モデルがこのL2だ。これまで、Pro ToolsをはじめとするDAWのプラグ・イン・メーカーとして知られていた同社が、初めてハードウェアのエフェクターを作ってきたのだ。果たしてその実力はいかがなものだろうか?

自然なリリース感を
簡単に得られるARC機能

本機はプラグ・インでおなじみのL1を単体エフェクター化したもの。あえて言うならトータル・コンプ/リミッターだが、Ultramaximizerという命名は、機能を見事に言い当てている気がする。パラメーターもプラグ・インとほぼ同じなので、L1のユーザーならすぐに理解できるだろう。

まずは、左の「Threshold」でコンプレッションを加えるレベルを設定する。すぐ隣にインプット・レベル・メーターが配置されているので、ピーク値などが分かりやすく、設定も容易だ。スレッショルドというより、ここで設定したdB値分、音量感を稼ぐことができると思って操作すると分かりやすいだろう。L1のようにメーターのスケール上に設定値を示す矢印は現れず、設定したdB値が7セグメントのLEDで数値表示されるのみだが、この表示は大きくかつ明るくて見やすい。設定のためのロータリー・コントローラーも大きく、微妙な値の設定も容易だ。通常のコンプレッサーはスレッショルドを下げるに従いピークを抑えるため、その分アウトプット・レベルをアップさせる必要があるのだが、本機はその必要がない。

そして真ん中の「Out ceiling」によりアウトプット・レベルを決める。シーリング(天井の意味)という表現がピッタリなくらい、アウトプットのピークは完全に抑えられている。デジタル・リミッター特有の先読み機能により、急峻なアタックにも完全に追従する。もちろんアウトプット・レベル・メーターも備わっている。

一番右の「Release」では、文字通りリリース・タイムを設定できる。0.01〜1,000msecの範囲で設定できるが、Auto Releaseスイッチを入れて「ARC(Auto Release Control)」を選択すれば、自然なリリース感を簡単に得られる。タムなどの余韻を故意に持ち上げたいなど特別な意図がない限り、ARCは常にONで問題ないくらいだ。

「Release」のところには、ゲイン・リダクション量を示すバーグラフ・メーターがあるが、−0.5〜−12dBのスケールを見ても、極端なコンプレッションではなく、自然な音質を保った使用が前提とされていることが分かる。このメーターに印字されたスケールは細かくて読み取りにくいが、メーター類そのものもは明るく反応が早いのがうれしい。液晶などを使ったメーターに比べると、本機のメーター類はすこぶる見やすく、ピーク・ホールドも備わっており、アタックにも完全に追従する動きの速さは小気味良い。シビアなレベル監視の必要なミックス・ダウンやマスタリングには最適だ。これらすべてのパラメーターは2ch仕様で、リンクも可能である。

なお、L1ではスレッショルドとアウトプットを連動させて動かすことができ、そうすることで聴感上の音圧を変化させることなくピークを抑えられたが、L2ではその連動機能が省かれている。別個に操作することで全く同じ効果が得られるため、大きな問題ではないのだが少々残念だ。パラメーターの設定をつまみを回しながら行なえる操作性はL1には無いものだが、逆にL1のように設定をストアすることはできない。

24/96対応AD/DAとIDR機能で
高音質なマスターを作成可能

一方、プラグ・インのL1と違い、L2にはAD/DAコンバーターが備わっていることが最大のメリットだ。そのため、Pro Toolsを使えない場合には、すこぶる便利だ。私もL1を使いたいがためだけにPro Toolsを立ち上げたセッションは数多い。また、ミックス・ダウンやマスタリングの際に、本機のA/Dでデジタル化してデジタル・ドメインでリミッティング処理をし、そのままデジタル・マスターに録音したり、D/Aにより再度アナログにして、アナログ・マスターに送ってマスタリングすることもできる。さらに、アナログ・コンソールのインサートに接続して、レコーディングやミックス・ダウンで単体エフェクターとして使用できるメリットも大きい。

AD/DAは16〜24ビットの分解能が選択できる上に、サンプリング周波数も44.1/48/88.2/96kHzの各周波数が選択可能となっており、現在必要なすべてのフォーマットに対応している。また、L1でも評価の高かった、IDR(Increased Digital Resolution)が素晴らしい。ノイズ・シェイピングやディザーとリクオンタイズ機能の組み合わせにより、16ビット・マスターを作る場合でも19ビット相当の分解能を得ることができる。緩やかな余韻感を楽しみたい音楽などでは特に効果的だ。

こうした機能を生かしてミックス・ダウンの最終段にインサートして、本機のデジタル・アウトをデジタル・マスターへ送るのがお奨めの使用方法だ。クオリティが高く選択の幅も広いL2の24ビットA/Dでデジタル化し、デジタル領域で音圧感とピークを完璧にコントロール後、CDマスターを作れるのだ。ミックス・ダウンで、各楽器にインサートする使用方法も見逃せない。音圧感を出しにくいウッド・ベースなども簡単に前に出してくれる。Pro Toolsがなく、プラグ・インのL1を羨望の眼差しで見ていたレコーディングやマスタリングのスタジオにとって、これは買いだろう。

WAVES

L2

オープン・プライス(市場予想価格340,000円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■アナログ入出力/RCA(アンバランス)×2+XLR(バランス)×2
■デジタル入出力/RCA(S/P DIF)+XLR(AES/EBU)
■ワード・クロック入力/BNC×1
■ビット数/16/18/20/22/24ビット
■サンプリング周波数/44.1/48/88.2(×2 mode)/96(×2 mode)kHz
■ノイズ・シェーピング/Normal、Moderate、Ultra、None
■外形寸法/482(W)×87(H)×223(D)mm
■重量/6.29kg

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