CD24対応CD-Rライターを搭載した多機能マスタリング・マシン

ALESIS Master Link ML-9600

REVIEW by 南雲和晴(ハイパーソニック) 2000年5月1日

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ALESISと言えば、ADATという名物製品を発売しているメーカーであり、パーソナル・レコーディング機器の普及に多大な貢献をした会社である。今回同社から発売されるMaster Link ML-9600は、マスター・レコーダーというポジションに殴り込みをかけて来た大胆な製品である。世間にはマスター・レコーダーというカテゴリーの製品が多数あるが、それらを相手にどう挑んでくるのか? 非常に楽しみな製品だ。

ISO9660で作られた
CD24フォーマット

編集部から運ばれてきたこの製品、箱から出してみると単なるオーディオ用CD-Rライターか?と思わせる風貌。しかし取扱説明書を見る前に本体を舐めまわすように見ると何か違う。フロント・パネルにHD、CDやWord Length、Sample Rate、Track DSPなどと書かれたスイッチがあるではないか。これはハイ・サンプル/ハイ・ビット対応のオーディオ用CD-Rライターなのか? と思ったが、それにしてはRecordボタンがあるのにCREATE CDとか書かれたボタンもあるし……。このままじゃラチがあかないので諦めて英文の取扱説明書を嫌々読んで見る。何と!このマシン、ハイ・ビット/ハイ・サンプリング対応の2トラック・ハード・ディスク・レコーダー+デジタル・マスタリング・プロセッサー+CD24フォーマット対応CD-Rライターが一体化された製品であることが判明した。つまりコンソールのマスター・アウトをこのマシンに入力&記録し、そのまま本体内でマスタリングしてオーディオCDが作成できるという代物である。おまけにCD24という同社オリジナル・フォーマットで記録することにより、24ビット/96kHzの高品位CDが簡単にできてしまうという驚きの製品なのだ。

CD24フォーマットという24ビット/96kHzが記録できるフォーマットがあると書いたが、これ、実は大変ナイスなアイディアで作られているフォーマットである。通常のオーディオCDは皆さん良くご存じだと思うが、16ビット/44.1kHzの音源からレッド・ブックというフォーマットで作られている。しかしこのCD24フォーマットはCD-ROMのフォーマットであるISO9660で作られており、音源の実態はAIFFで記録されているのである。つまりこのCD24で作成されたCD(CD-ROM)をISO9660のCD-ROMが読みこめる他のDAWに持ち込むことも可能なのだ。また、CD24フォーマットで作成されたディスクは本機で通常のCDと同じように再生することも可能である。後述するが入出力に関してS/P DIFとAES/EBUがサポートされているので、レコーディング・スタジオとマスタリング・スタジオの両方にこのマシンがあれば、CD24ディスクがマスター素材と成りうる可能性があるのだ。

筆者の場合、ファイナルはPro Toolsをベースに作業を行なうことが非常に多いので、本機はミックス・ダウン用のマスターとして使ってみたいと思った。ちなみに実際CD24フォーマットで書いたディスクをPro Toolsに持っていって取り込み作業をしたが、幾つか注意点がある。それは純粋にISO9660でデータがディスクに書かれているので、そのままMacintoshのハード・ディスクにコピーしても、Pro ToolsのAudio importでファイルを認識することができないのである。これはMacintosh固有の問題なのだが、ファイル管理上このファイルはどのデータ形式であるか?という情報があり、ソフトウェアはそれでファイルを選別しているからこのような事態が起こる。だからその情報を書き変えれば問題無く取り込むことができる。

専用ボタンの装備により
ミスのないオペレートが可能

フロント・パネルを見てみよう。一般的なオーディオ用CD-Rライターと同様であるが、ハード・ディスク・レコーダーとマスタリング処理用のデジタル・プロセッサー系の機能ボタンが幾つかあるのが違う点。非常に好感が持てるのは、サンプル・レートやビット数、作成CDフォーマットなどがボタン一発で切り替えられること。視覚的にも非常に分かりやすいので、ミス・オペレーションを未然に防いでくれるだろう。

入出力に関しては必要最小限の設計になっており、非常にシンプルである。アナログ/デジタル両セクション共に、バランス/アンバランス入出力が装備されており、通常使用には何ら問題無いようになっている。ちなみにデジタル・セクションの信号フォーマットはIEC958 TYPE1で、AES/EBUおよびS/P DIFのいずれもコンパチビリティが保たれているため、コンシューマー機器からプロ・オーディオ機器まで接続できるようになっている。アナログ・セクションは+4dBのバランスと−10dBのアンバランスのデュアル構成。また、すべてのコネクターは金メッキ仕様で接点不良等を軽減するようになっている。これだけあれば全然OKなのだが、欲を言えばWORD SYNC端子とアナログ入出力の調整用トリムを付けてほしいところ。アナログ用トリムはデジタル・ベースのみで使用するならば必要無いが、アナログを使用してシビアな使い方をするときにはなくてはならないものだ。

付属品に、ラック・マウント用の金具、BASF社のCD-Rディスク、専用リモコン、電源ケーブルなどがある。リモコンは一見不要にも思えるが、スタジオ・ワークで本機が離れて置かれる場合などに、非常に便利だろう。

取り込みからCD-R作成まで
作業は実に簡単

オーディオCD作成までの流れは簡単で、次のプロセスで行なう。
①収録したいソースからML-9600のハード・ディスクへ録音する
②ハード・ディスクに収録した素材を編集する
③編集した素材にコンプレッサー、イコライザー、リミッター、ノーマライズなどのDSP機能(下図)を行なう

④プレイ・リストを組み立てる
⑤CD-R書き込みモードをレッド・ブック・モードにしてCD-Rに書き込む

単にマスター・レコーダーの代わりとして使い、他のDAWへデータを持ち込む場合は
①〜②は同じ
③プレイ・リストを作成
④CD-R書き込みモードをCD24モードにしてCD-Rに書き込む
⑤CD24フォーマットで書き込んだディスクを他のDAWで読み込む(AIFFと対応するビット数、サンプル・レートをサポートしているDAWで、ISO9660 CD-ROMを読み込み可能なものに限る)

ちなみにハード・ディスクは4.3GBのIDEタイプが内蔵されており、24ビット/96kHzで記録した場合は最大95分、16ビット/44.1kHzで記録した場合は最大310分記録することが可能である。これだけの記録容量があれば、24ビット/96kHzモードでもアルバム1枚分を楽に収録することが可能だ。

CD24モードでCD-Rにデータを書き込む場合、収録時間は以下の表の通りである。ハイ・ビット&ハイ・サンプリングになればなるほどデータ量が増えるので、それに伴い収録可能時間が短くなるのは当然である。

従来のCD-Rの音質を超えた
高品位なマスター作成が可能

今回、フリーダム・スタジオさんのご協力で実際のスタジオで試聴することができました(どうもありがとうございました!)。

まずスタジオに常設のCDプレーヤーからコンソール経由で分配し、1つを本機へ、もう1つを比較用に他社製オーディオ用CD-Rライターへ送った。そしてそれぞれをコンソールへ戻し、切り替えて試聴できるようにした。時間の都合上アナログ入力および16ビット/44.1kHz(レッド・ブック)のみの評価しかできなかったが非常に興味深い結果が出た。

まず、CDプレーヤーとしての再生能力だが、非常にレンジ感のあるサウンドと感じた。ローがキリッと締まっているが、コントラバス等も悠々と再生されたので、非常に低域の解像度が高いのであろう。それと位相が良いため分離も良い。高域はほんの気持ち程度ブースト感があるが、下品な感じはしなかった。CDプレーヤーとしては非常に気持ち良く聴けるものだと思う。

次に実際にアナログ経由で取り込んだ音源素材をCD-Rに記録し再生してみることにした。素材をハード・ディスクに取り込む作業からやることになるが、作業は非常に簡単。システムをハード・ディスク・レコーダー・モードにしてNew Trackで新しいトラックを設定。Rec Readyするとレベル・メーターでインプット・レベルが見れるのでレベルを調整する。あとは録るだけである。トラックを増やすにしてもNew Trackボタンを押せば済むので、どんどん録っていけるのがよい。

トラックの編集はスタート・ポイントとエンド・ポイントのクロッピング(トリミングとも言う)のみである。MDみたいに曲の途中から切るような編集はできない。トリッキーな編集をする場合は他のDAWで編集してから本機に流し込むといった作業が必要になる。あくまでも本機はマスター・レコーダーというポジションの製品なのでこれで良いのだろう。

CDに収録したいトラックがそろい、すべての設定&処理が完了したら、CreateCDボタンを押す。ブランクCD-Rディスクがロードされていると、レンダリングと呼ばれるCDに書き込むためのイメージ・ファイルを生成する作業に入る。このときにフェード・イン/アウト設定などの処理が行なわれる。レンダリング終了後にCD-Rへ4倍速で書き込んでくれる。本来、本機はトラックのトリミングなど、マスタリングに必要な機能がすべてこの1台に詰め込まれているが、時間の都合上録った素材をそのまま書き込んだものでサウンド・チェックすることにした。

結論として、自分の想像を超えたものであると感じた。元の質を損なわず、音が太くなる傾向にありハイの抜けもいい。従来のCD-Rだと4倍速でオーディオCDを書き込むと音やせが目立つが、あまりそれを感じさせないのだ。単なる便利ツールを超え、Master Linkの名前にふさわしいマスター機であることには間違いないだろう。

今回、ソースの問題など制限のある中でのチェックになったが、時間があれば24ビット/96kHzやCD24などたくさん実験してみたいことがあった。ぜひまた機会を見つけて使用してみたいと思っている。ちなみに後で価格が250,000円と聞き、あまりの安さに引きつってしまった。単体CDプレーヤーとしても高水準を満たし、そして24ビット/96kHz対応のハード・ディスク・レコーダーとマスタリングDSPにCD24対応CD-Rライター……これがすべてそろってこの値段というのは本当にショックである。

ALESIS

Master Link ML-9600

250,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■AD/DAコンバーター/24ビット128倍オーバー・サンプリング
■サンプリング・レート/44.1、48、88.2、96kHz
■ビット数/16、20、24ビット
■全高調波歪率/0.002%
■SN比/113dB
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+0dB/−0.3dB、44.1kHz/48kHz時)、20Hz〜40kHz(+0dB/−0.5dB、88.2kHz/96kHz時)
■寸法/432(W)×88(H)×279(D)mm
■重量/6.2kg

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