ドイツの新メーカーが開発した本格的なチューブ・マイク

BRAUNER VM1

REVIEW by 鎌田岳彦 2000年5月1日

20000501-06-001

ドイツのBRAUNER社から、真空管のマイクが新登場! “BRAUNER”とは、ちょっと聞き慣れないメーカーですが、それもそのはず今回のVM1が1号機となる新しいメーカーです。ドイツと言えば、NEUMANN、TELEFUNKENなどマイクの名機を生み出した名だたるメーカーの国ですから、今回のこのマイクも大いに期待できることでしょう。ローコストのコンデンサー・マイクが数多く出てきている最近の状況に一石を投じる堂々の価格とスペック。それでは、VM1の実力を早速チェックしてみたいと思います。

サスペンションとフィルターが付属
指向性はバリアブルに切り替え可能

VM1の外観は、薄いゴールドの混じったシルバー(最近の流行でしょうかね)で、カプセルを覆うネットも細かくていねいに加工されてます。細身で少し縦長な外観! AKGのThe Tubeを少し大きくした感じのマイクで、BRAUNERの渋いデザインのロゴも含めて、なかなか高級感のあるフェイスです。付属品として、マイクのサスペンションと、大型の専用ポップ・ノイズ・フィルターが付いています。これをセットするとマイク全体が巨大なサイズになり、かなり雰囲気が変わりますが、なかなか存在感があります。

電源は専用電源で、電源側に指向性の切り替えとパッド(−10dB)が付いていて、マイク本体には何もスイッチなどは付いていません(ローカットはマイク/電源共にありません)。指向性は無指向性から双指向性まで、バリアブルにコントロールできるシステムで、通常の単一指向性やスーパー・カーディオイドなどのパターン以外にも、それぞれの中間の設定も可能です。SPLは136dB、周波数特性は20Hz〜28kHzで、しかも内蔵のピックアップ・アンプ自体の特性は5Hz〜130kHzという驚異的なスペックを実現しています。

なお、マイク、電源、サスペンション、ケーブルを含むすべての付属品は、しっかりとした作りのハード・ケースに収納されています。

S/Nが良くつややかで繊細
かつ存在感のあるサウンド

それでは、実際にこのマイクの音を聴いてみましょうか。マイク・アンプにはSSLの最新アナログ・コンソールJ9000シリーズを使いました。スタジオでは定番中の定番、NEUMANNのU87iとの比較でまず聴いてみます。

出力レベルは、2本のマイクともほぼ同じ。ほとんど同じ設定でのチェックができるので(出力レベル差があるとマイク・アンプの特性やS/Nが影響するので)、比較にはとても好都合です。まず、立ち上げ時の残量ノイズは、完全にこのVM1の勝ちですね。マイクがつながってないかのような静寂です(当然ですが、U87iがS/Nが悪いマイクというわけではありませんよ)。

今回は、VM1が一番多く使われるであろうボーカルを中心にチェックしてみました。最初の印象は高域の伸び具合がとても滑らかで、抜けの良いサウンドだということ。スピード感もあり、かなり厚めのアレンジのサウンドの中でも、十分につやのあるボーカルが表現できるでしょう。中域、低域の量が少ないわけではなく、特に100Hz以下の低域がもたつくことのない充実したサウンドです。周波数特性もVM1の方が高/低域共に広いと言えます。U87iが10年以上経ったマイクなので、個体差も含めた経年変化などを考えると少々分が悪いかもしれませんが、まるで1〜2枚幕を取り外したかのような印象の差が感じられました。

実際に、ウィスパーや声量の小さな歌でも、とてもセンシティブに表現され、特に女性ボーカルではいい結果が得られました。逆に少しざらついた声質や割れ気味の声(特にハード・ワークで声のコンディションが悪くなってきたときなど)では、そのキャラクターが少しだけ大げさに感じられてしまうのが、ちょっと気になるかもしれません。パンチある声でも十分に存在感あるサウンドになりますが、オン・セッティングでのレアなニュアンスの声に特にお薦め! 実物より超リアルに(ちょっと変な日本語ですが)表現されますよ。

マイクの指向性をバリアブルにコントロールできるのも(一部の古い真空管マイクにも同じようなシステムの物がありますが)、なかなか面白そうですね。今回は時間の問題でいろいろな楽器を試すなど細かなチェックができませんでしたが、オフ・マイクとオン・マイクの中間のセッティングのときには、特に威力を発揮するのではないでしょうか。また、アコースティック楽器、例えばピアノやギター、ウッド・ベースなどのオン・マイク・セッティングは、相当いい感じのサウンドが期待できそうです。

あと、真空管マイクなので、電源投入時からのウォーム・アップ時間も少し気を付けた方がいいですね。普通の真空管の機材に比べて、比較的早く安定しますが、最低でも30分前には電源を入れることをお勧めします。歌や演奏もテイクが進むごとに徐々にヒート・アップしますが、真空管もまさにヒート・アップしていくと、サウンド・キャラクターが変わってっちゃうのでね!

コスト・パフォーマンスの高いマイクが数多く登場してる咋今ですが、久しぶりに十分手応えのある個性的なマイクに出会った気がします。マイクの回路は完全なハンドメイドで、厳選されたパーツのみを使って組み立てられているのでしょう。ドイツ職人の一本筋の通った仕事から生まれたこのVM1を、あなたもぜひ1度使ってみてください。

BRAUNER

VM1

395,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■タイプ/大口径真空管マイク
■真空管/EF86、EF806S or AC701k
■ノイズ/13dB
■S/N/79dB
■感度/28mV/Pa
■指向性/バリアブル(双指向性、無指向性、カーディオイド、スーパー・カーディオイド、ハイパー・カーディオイド)
■周波数特性/20Hz〜28kHz
■最大SPL/136dB
■パッド/−10dB
■外形寸法/約49(φ)×215(H)mm
■重量/760g

TUNECORE JAPAN