高品位設計のオール・イン・ワン型ボイス・プロセッサー

PRESONUS VXP

REVIEW by 半谷高明(BEA-POT STUDIO) 2000年5月1日

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PRESONUSは1990年代に設立されたアメリカのメーカーで、現在までプリセット・タイプのコンプ、2ch/8chのコンプ、同じく2ch/8chのマイク・プリアンプを製品ラインナップとしている。特にマイク・プリアンプは高級なJENSENのトランスを採用するなど評判が良いようだ。今回ご紹介するボイス・プロセッサーVXPは、コスト的にJENSENのトランスこそ使われていないが、これまでの製品のノウハウを継承して作られており、その実力は期待できそうだ。

プリアンプからコンプ、EQ、
エキスパンダーなど多機能を搭載

まずはフロント・パネルの説明からしていこう。本機は6つのセクションで構成されている。写真では12個のつまみがあるように見えるが、幾つかは内側/外側の二重つまみになっていて、実際には17個のつまみが装備されていることになる。

●MIC-PREAMPセクション
ゲイン・コントロールとIDSSコントロールつまみがある。ゲインは60dBで、ファンタム電源と20dBパッドも装備されているので、コンデンサー・マイクやダイレクト・ボックスを使用したライン入力も可能だ。IDSSというのは取扱説明書によれば、真空管機材やアナログ・テープに見られる”暖かさ”を付加する機能で、デジタル環境で使用されることを意識したものらしい。

●COMPRESSORセクション
プリセットされた16のコンプレッション・カーブを選択するロータリー・スイッチと、イン/アウト・レベルの二重つまみがある。細かい設定はできないが、実用的には十分だろう。スレッショルド・レベルもプリセットなので、イン・レベルを上げ下げして効果の深さを調節することになる。また、コンプをオフにするスイッチもあるので、ドライ音との聴き比べは簡単だ。

●EXPANDERセクション
効き始めるレベルを決定するスレッショルドと、音量をどれくらい小さくするかを調節するレシオの二重つまみがある。ノイズ・ゲートのような働きをするが、スイッチ的にストッと切れるのではなく、ボリューム操作的な効果が得られるダウンワード・エキスパンド方式となっている。

●DE-ESSERセクション
スレッショルドと周波数選択の二重つまみがある。800Hz〜8kHzの範囲で、設定した周波数付近の音のみを下げることが可能。特にボーカルの”サ行”の音が耳障りな場合に、それを緩和してくれる。

●EQUALIZERセクション
4バンドのセミ・パラメトリック・タイプ。LowとHighはシェルビング、LowMid、HighMidはQの切り替え(0.5/2.0)付きで、周波数/レベルの二重つまみになっている。また、80Hzのローカット・フィルター、EQのオン/オフ・スイッチも装備されている。

●MASTERセクション
ピーク成分のみを抑えるピーク・リミッターのスレッショルド・レベルと、本機の最終アウト・レベルを調節するつまみがある。

なお、EQを除くセクションにはそれぞれLEDメーターを装備。また全スイッチはオンにすると点灯するため、視覚的にも動作が確認しやすい。

一方、リア・パネルには、XLRのマイク・インプット、XLR/TRSフォーンのバランス・アウトプットが装備されている。さらに、プリアンプとコンプの間に設けられたセンド・リターンがあるので、ここに外部エフェクターを挟み込んだり、リターン端子をライン・インプットとして使用することも可能だ。

音の崩れが少ない
スムーズな補正を実現

実際に本機を操作してみた感じでは、EQセクションにセンター・クリック付きボリュームを採用するなどの配慮もあり、全体的には良好。ただし、二重つまみはウッカリすると外側と内側を同時に回してしまう恐れがある。慣れもあるかもしれないが、個人的には小さくしてでも全つまみを独立させた方がより使いやすいと思った。

音色に関しては、”スムーズで柔らかく、高級機材の音”という印象。今回はボーカル以外にも、アンプ録りエレキギター、ダイレクト・ボックス使用でのベース/エレキギターでチェックしてみたのだが、どの音も共通してそう感じた。極端なEQセッティングをしても、音の崩れが少なく、不必要な音色変化がないのだ。従って、出音の良さを生かしつつ、多少の補正を加えたいボーカルやギターのアンプ録りには向いているだろう。事実、ギターのライン音は、スタジオの卓より一段とジェントルになったし、アンプ録りに至っては本チャンに使ってしまったほどだ。その反面、出音を素材として扱ってエグいEQ処理をしたい場合や、荒々しさを加えたいハードコア系には不向きかもしれない。まぁそのときはマイク・アンプ部分だけを使えばいいのだが。

本機のセールス・ポイントは、1Uボディに目一杯詰めこまれた多機能ぶりだ。経験から言っても、ボーカル録りには必要あるいは超助かる機能ばかりである。もしこれらの効果を得るために、複数の機材をパッチ・ベイ接続するとなると……想像するだけでも悲惨な接点の増加となる。

またオール・イン・ワン・タイプのハード・ディスク・レコーダーや、デジタル・ミキサーのマイク・アンプに不満があったり、録り段階で小さなディスプレイにパラメーターをとっかえひっかえ表示させるのが煩わしい人にはピッタリだろう。そういった場合、本機にオプションの24ビット・デジタル出力カード(35,000円)を付ければ、デジタル環境への入力部としての役割も加えられ、より一層のクオリティ・アップも期待できる。

本誌の広告などを見ても、ここ最近、本機のようなボイス・プロセッサーと呼ばれる製品が各メーカーから発売されている。プロ用の高価なものもあるが、本機ならアマチュアでも何とか手が届く。皆さんの選択肢にもぜひ加えてみてほしい。

PRESONUS

VXP

128,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■周波数特性/10Hz〜50kHz
■ダイナミック・レンジ/<115dB
■全高調波歪率/<0.003%(0%IDSS)、>0.5%(100%IDSS)
■入力ゲイン/+12dB〜+38dB
■コンプレッサー/16プリセット
■エキスパンダー/スレッショルド(−70dBu〜+20dBu)、レシオ(1:1〜20:1)
■ディエッサー/スレッショルド(−40dBu〜+20dBu)、周波数(800Hz〜8kHz)
■EQ/Lowcut Filter(80Hz)、Low(シェルビング:100Hz)、LowMid(ピーキング:90Hz〜700Hz)、HighMid(ピーキング:450Hz〜5.8kHz)、High(シェルビング:12kHz)
■接続端子/インプット(XLR)、アウトプット(XLR、TRSフォーン)、センド(TRSフォーン)、リターン(TRSフォーン)
■外形寸法/483(W)×44(H)×178(D)mm
■重量/3.6kg

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