記録メディアにMOを使用した24ビット/96kHz対応8trデジタルMTR

YAMAHA D24

REVIEW by 宮原弘貴(MAGNET STUDIO) 2000年3月1日

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最近はパソコン・ベースのハード・ディスク・レコーディング・システムが注目を浴び、モジュラー型の専用デジタルMTR(ALESIS ADATやTASCAM DAシリーズなど)が話題になることが少なくなったような気がします。しかし、専用機にはパソコン・ベースのDAWには無い長所もあり、特に信頼性の高さでは専用機の方が上回っている部分もあります。YAMAHAから発売されたD24は、記録メディアにMOを採用した24ビット/96kHz対応の8トラック・デジタルMTRです。ちょっとカタログに目を通しただけでも、今までの専用機には無いさまざまな特徴を搭載しているようです。早速、その実力をチェックしていくことにしましょう。

信頼性とコストに優れたMOを
記録メディアに採用

冒頭にも述べましたが、D24の一番の特徴として、記録メディアに一般的に普及している3.5インチの640MBオーバーライト対応MOドライブを採用している点が挙げられます。ハード・ディスクを使ったデジタル・レコーダーでは、ディスクがフルになった場合、別のメディアにバックアップを取って本体のデータを消去する必要がありますが、本機の場合はMOディスクを入れ替えるだけで済むわけです。

メディアを入れ替えるというのは、今までのビデオ・テープを使ったデジタルMTRと考え方は一緒なのですが、最大の違いは信頼性です。テープ式のデジタルMTRを使っていると、テープを巻き込んだりすることもあり、ロケートの際に常にワン・クッションおいたり、こまめにバックアップを取ったりと気を使う部分が多かったのですが、MOに関してはそういったメカニカルなトラブルはほとんどなく、データが飛んでしまったなどのトラブルもほとんどありません。MOは、ハード・ディスクのランダム・アクセスとテープのリムーバブル性、そして高い信頼性を兼ね備えた記録メディアと言えるでしょう。

24ビット/96kHzに対応し
8台までの同期走行が可能

本機の対応フォーマットは、サンプリング周波数が44.1/48/88.2/96kHzとなっており、44.1/48kHzの場合は8トラック、88.2/96kHzの場合はAES/EBUデュアル・モード(1つの音声信号を2トラックに分けて録音/再生するモード)を使用するため、4トラックまでの同時録音/再生が可能です。量子化は16/20/24ビットで、ビット数に関してはどのサンプリング周波数でも自由に選択できるようになっています。スペック的には、現状のレコーダーで考えられるすべてのフォーマットに対応していると言えるでしょう。このようなハイ・ビット/ハイ・サンプリングはこれからの標準になっていくでしょうし、24ビット化に関しては、もはや当たり前といった感すらあります。

また、本機は最大8台までの同期走行に対応し、最大で64トラック同時録音/再生のシステムを構築することができます。接続も別売のシンク・ケーブル(YRC 01:1m/12,000円、YRC 10:10m/17,000円)でつなぐだけという至ってシンプルなものです。トラック構成としては8トラックになっていますが、各トラックに8つのバーチャル・トラックを装備しているので、1台でも最大64トラックを使うことが可能です。

4つの拡張スロットを装備し
多彩な入出力に柔軟に対応

D24は3Uのラック・マウント仕様になっており、フロント・パネルを見ると、右側にMOドライブとトランスポート系のスイッチ、中央にエディットやセットアップのスイッチとシャトル再生やデータ・エントリーに使用するジョグ/シャトル・ホイール、左側には各トラックのコントロール・スイッチとモニター・セレクト・スイッチ、テン・キーなどがあり、それぞれのセクションごとに分かりやすく配列されています。左上には各トラックに対応した16セグメントのLEDを使用したレベル・メーターがあり、その右側にはカウンターと現在のワード・クロックの設定やサンプリング周波数、ビット数などを表示するディスプレイが装備されています。

実際の操作性も良く、最初のうちはマニュアル無しでチェックしていたのですが、細かいトラック・エディットの部分は別として、セットアップなどを含めて戸惑うことなく操作できました。

リア・パネルには、ワード・クロック入出力、ビデオ・シンク入出力、MIDI IN/OUT/THRU(MTC、MIDIクロック、MMCにフル対応)、タイム・コード入出力(XLR)、本機を複数台で同期走行するためのSYNC IN/OUT、9ピン・プロトコルのSERIAL I/O、MOディスクのバックアップ時や外部ハード・ディスクなどに直接録音/再生する際に使用するSCSIコネクターなどがあります。

肝心のオーディオ入出力はというと、本機は標準状態ではS/P DIF(コアキシャル)のステレオ1系統の入出力しか装備していません。これは、リア・パネルにある4つのスロットに自分のシステムに応じて必要なフォーマットのボードを装着するというシステムになっているためです。この辺りの発想は、今までのレコーダーにはあまりなかったもので、02Rなどを世に送りだしてきたYAMAHAならではの考え方だと思います。

カードの規格自体は、同社のデジタル・コンソール01Vに採用されているのと同じミニYGDAIで、AES/EBU(MY8-AE:28,000円)、ADATオプティカル(MY8-AT:22,000円)、TDIF-1(MY8-TD:22,000円)の各デジタル・フォーマットの8ch入出力のほかに、24ビット4ch AD(MY4-AD:28,000円)、20ビット4ch DA(MY4-DA:22,000円)、20ビット8ch AD(MY8-AD:28,000円)のAD/DAボードが用意されています。

◀8ch AES/EBU対応のMY8-AE◀ADATオプティカル対応のMY8-AT◀TDIF-1対応のMY8-TD◀24ビット4ch ADのMY4-AD◀20ビット4ch DAのMY4-DA◀20ビット8ch ADのMY8-AD

複数のボードの同時使用にも対応しているため、異なるフォーマットのボードを入れてフォーマット・コンバーターとして使用したり、アナログ/デジタルの混在したシステムなど、極めて自由度の高いシステム構築が可能です。

99回のテイクを保持できる
オート・パンチ・イン/アウト

チェックに入る前にまず、MOディスクをフォーマットしてみましょう。ディスクを入れてフロント・パネルにあるフォーマット・ボタンを押します。10秒ほどで完了し、自動的に新規プロジェクトが作成され、準備完了です。プロジェクトとはディスク上で曲を管理する単位で、1枚のディスクに最大で99プロジェクト(99曲)まで設定することができます。

では、本機の音質、機能などをチェックしてみましょう。まず、AD/DAの音質から……といきたいところなのですが、実はデモ機のスケジュールの都合で、ADカード、DAカード共にチェックすることができませんでした。今回はデジタル入出力を使ったチェックのみになってしまったことを、ご了承ください。

チェックに際してはMAGNET STUDIOにあるDIGIDESIGN Pro Tools|24 Mixを24ビットAD/DA&ミキサー代わりに使用してAES/EBUで接続したものと、01VにADATオプティカルで接続した場合の2つを試してみました。

さて、音質面で一番気になるのは、16ビットと24ビットの違いでしょう。両者でいろいろなソースを本機に取り込んでみましたが、やはり比較的ピーク成分が多く、ダイナミック・レンジの広いもの(例えばアコースティック・ギターやアコースティック・ピアノなど)を比べると、24ビットの方が明らかに解像度が高いのが分かります。また、低いレベルで録音してしまった場合にも、24ビットの場合、16ビットに比べると解像度を高く保てるのが特徴です。フル・ビット使用して録音した場合の違いとしては、高域の伸びが良くなるというのもありますが、それよりも中低域の再現性が高くなるのが印象的です。ただ、16ビットにも良い意味での音の粗さがあったりするので、状況によって使い分けるというのがよいのではないでしょうか。

録音時に気に入った機能の1つが、マルチテイク機能です。オート・パンチ・イン/アウト時に最大99回までのテイク保持が可能というもので、後でその中からベストなテイクを選択することができます。ソロ・パートなどの録音に非常に便利でしょう。ちょっと気になったのは、パンチ・アウトの際にモニター音が一瞬切れることです。もちろんプレイバックすればちゃんとつながっているので問題ないのですが、できれば改善してほしい部分です。

タイム・コンプ/エキスパンドなど
編集機能も充実

次に、編集機能を見てみましょう。本機の編集機能は、トラック編集とパート編集の2つに分けられます。トラック編集はトラック全体に関する編集で、パート編集はあるトラックの指定した時間内を編集する際に使用します。両者共にCopy、Move、Eraseなどの豊富なコマンドが用意され、パート編集ではサブフレーム単位で編集ポイントを設定できるので、高度な編集にも十分対応できます。もちろんデータ非破壊のノンディストラクティブ編集なので、失敗した場合はUndoで元の状態に戻すことができます。

そして、本機で一番特徴的な編集機能が、タイム・コンプ/エキスパンドとピッチ・チェンジでしょう。それぞれ可変範囲は50%から200%まで設定でき、特にタイム・コンプ/エキスパンドの方は音質重視、リズム重視などのアルゴリズムが選択でき、状況によって使い分けることができます。音質もアルゴリズムの選択を間違えなければ十分実用的な音で処理されます。また、タイム・コンプ/エキスパンド、ピッチ・チェンジ共に実行前に効果を試聴できるプレビュー機能を装備しています。

最後に同期関係です。リア・パネルを見て分かるように、本機は必要な同期機能を標準状態で装備しています。スレーブになる際のチェイス・モードも数種類用意されており、どんな機器がマスターでも同期できるようになっています。試しにPro Toolsから本機に、タイム・コード同期しながらデジタル・コピーをしてみましたが、問題なく行なえました。また、モニター・スレーブのような常に同期させる使い方でも、ロックが外れたりチェイスしないといったことはありませんでした。その精度なども含めて信頼性は高いと言えるでしょう。ただし、本機はVITCには対応していません。9ピンのリモート・コントロール端子を装備しているだけに、映像との関連部分で惜しい気がします。

今回は、96kHz対応のコンバーターなどが無かったため、その部分は試すことができませんでしたが、本機をMTRとしてだけでなくマスター・レコーダーとして使うといったことも考えられるでしょう。今回チェックできなかったAD/DA部分に関しては、純正のもののほかに、APOGEEからAD-8000に相当するAD/DAボードが発売される予定だそうです。MOドライブも将来的には1.3GBのMOなどに対応するとのことですし、ソフトウェアもMOを使ってアップデート可能など将来性のある設計になっています。モジュラー型のMTRの導入を考えている方は、ぜひ本機を試してみてはいかかでしょうか。

▲オプションのAES/EBU対応ボード、MY8-AEを挿した状態のリア・パネル

YAMAHA

D24

380,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■録音媒体/3.5インチMOディスク(オーバーライト、ノーマル・タイプ)
■サウンド・ファイル形式/YAMAHA独自フォーマット
■サンプリング周波数/44.1、48、88.2(デュアルAES/EBU)、96(デュアルAES/EBU)kHz
■量子化ビット数/16、20、24ビット
■トラック(640MBオーバーライト・ディスク使用時)/ メイン・トラック=8トラック、バーチャル・トラック=64トラック(1メイン・トラックにつき8トラック)、同時録音/再生トラック=8トラック(44.1/48kHz)/4トラック(88.2/96kHz)
■最大録音時間(44.1kHz、16ビット、640MBディスク使用時)/15分×8トラック、30分×4トラック、60分×2トラック、120分×モノラル
■オーディオ入出力/S/P DIFコアキシャル入出力、ヘッドフォン出力
■シャトル再生/通常再生スピードの1/16〜4倍
■ピッチ・コントロール/±6%
■編集/Undo/Redo、Copy、Insert、Insert Copy、Move、Erase、Delete、Time Comp/Expand、Pitch Change、Optimize
■タイム・コンプ/エキスパンド/50〜200%(GENERAL、VOCAL、RHYTHM)
■ピッチ・チェンジ/50〜200%(±1,200セント、±1オクターブ)
■ディスプレイ/タイプ=大型蛍光表示管、文字=12文字×2行、カウンター=(時、分、秒、フレーム)、カウンター・モード=ABS(アブソリュート)/REL(レラティブ)、レベル・メーター=16セグメント/OVERインジケーター×8
■同期/パラレル・チェイス(最大8台)、シリアル・チェイス(2台)、外部SMPTE/EBUタイム・コード・チェイス(24、25、30D、30fps)、外部MTCチェイス、外部MMCコントロール、9ピン・リモート・コントロール
■外形寸法/480(W)×144(H)×383.9(D)mm
■重量/13kg

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