9エフェクトを6ルーティングで使用可能なマルチエフェクター

T.C.ELECTRONIC M.One

REVIEW by 横川理彦 2000年2月1日

20000201-04-001

このところFinalizer、M3000、Gold Channel、Intonatorと立て続けにヒット作を飛ばしているT.C.ELECTRONIC社から、今度はついに価格が10万円を切るエフェクターが発売された。マルチエフェクターのM・OneとディレイのD・Twoである。ここではM・Oneを取り上げて、その実力のほどをチェックしてみることにした。

説明書無しでも容易に扱える
明解な操作系

M・Oneは、2系統のエフェクトを直列/並列など6種類のルーティングで組み合わせられるマルチエフェクターで、エフェクトの内容は大きくリバーブ、ディレイ、コーラス、フランジャー、ピッチ・チェンジ、EQ、ダイナミクス、トレモロ、フェイザーの9種類である。1Uサイズで、軽量。四角いボタンを多用した前面パネルのデザインは、YAMAHAのSPXシリーズに似ている。

今回、取扱説明書無しでチェックしたのだが、操作系は明解で、パラメーターの階層も浅く、大変使いやすい印象を持った。特に、液晶パネルの表示は必要なデータが見やすく配置されていて、画面の小ささを感じさせない。他のメーカーもデザインの参考にするといいと思います。

また、リア・パネルは、バランス仕様のフォーンのアナログ・イン/アウト、S/P DIFのデジタル・イン/アウト、MIDI端子、フット・ペダル端子とシンプル。デジタル・クロックのイン/アウトなどは省かれている。

T.C.ELECTRONICならではの
使えるプリセット群

まず、ミキサーにアナログで接続し、さまざまな音源を入力してM・Oneのプリセットのプログラムの音色を聴いてみた。このとき、正面パネルの”MIX”ツマミや”EFFECT BAL.”ツマミで、ドライ音との比較や、2系統のエフェクトのバランス変更などを行なった。

プリセット番号の若い辺りでは、2種のリバーブ/アンビエンスがインプットの左右に独立でかかっている。この時点で、まずリバーブにノイズが少なく非常にクリアなことに驚く。たとえこれが1系統だとしても、これまでの同価格帯のものとはクオリティ自体に差がある。また、ホール/ルーム/アンビエント/スプリング/プレートのそれぞれがはっきりとした音質の特徴を持っているし、2種の残響音をパラレル/シリアルでミックスしていっても音が濁らないのはさすがだ。

興味深いのは、ダイナミクスとリバーブをシリアル(直列)にしたプログラムで、5kHz辺りでコンプをかけてディエッシング(ボーカルのサ行の子音を抑える)してからリバーブをかけたり、ドラムやバックトラック用にトータル・コンプをかけてからリバーブをかけるプログラムなどは音に説得力があり、2系統のエフェクターならではの可能性を感じさせる。

プリセットは全体に、名前にちゃんと見合った使えるエフェクト音になっていて、T.C.ELECTRONIC社が培ってきた実績がよく現れている。また、ディレイやフェイザーなどで前面パネルの”TAP”ボタンにパラメーターが振ってあるのも面白い。リズムものでうまくタイミングを計ってボタンを押すと効果的だ。

パラメーターは簡略化され
エディットはやりやすい

次に、エフェクト1だけをモニターし、個々のエフェクトを1つ1つチェックしてみた。全体に、パラメーターはかなり簡略化してあり、エディットはやりやすい。また、プログラムの切り替えやパラメーターのエディット時に音が途切れたりノイズが出ることもなく、タイム・ラグもほとんどないのには感心した。

リバーブ系で面白いのは、残響音にモジュレーションがかけられることで、このスピードと深さを調整すると個性的な響きになる。ディレイは最長5秒、フィードバックを高くしてもぎりぎり発振しないので、ディレイ・タイムを短くしてユニークな音を作ることができる。コーラス/フランジャーは、スピードを速めにして(最速20Hz)フィードバックやデプスを調整するのが面白い。フェイザーは前述のように、タップ・ボタンでテンポを入力する方法が使える。また、このときにタップ・テンポをさらに分割したり(1/32音符の3連まで)、MIDIクロックでテンポを指定したりすることもできる(ディレイも同様)。フェイザーのタイプもマイルドな”Vintage”とモダンな”Smooth”の2種が用意されている。

24ビットのAD/DAとしても
十分使えるクオリティ

最後にS/P DIFの入出力を利用して、デジタル/アナログをいろいろに組み合わせてみた。アナログ入力に比べるとデジタル入力の方が若干スッキリした切れの良い音になる。入力のデジタル/アナログを切り替えたときに、少し音切れがあるだけでノイズが出ないのは素晴らしい。出力はアナログ/デジタルともに出っ放しだ。24ビットのAD/DAコンバーターとしても十分使えるクオリティだと思う。

まとめとしては、まずリバーブ機として同価格帯のものと比較するなら、音色とエフェクトのプログラムの正確さにおいてM・Oneは2歩も3歩もリードしている。さすがにハイ・エンドのリバーブ専用機に比べれば、音質とパラメーターの多さでかなわないが、ホーム・レコーディングのメイン・リバーブや、プロのスタジオのサブリバーブとしてはあり余る実力を持っている。2系統のエフェクトの組み合わせも追求しがいがあるし、操作性の良さは特筆すべきものだ。安心して推奨できる1台である。

▲左からアナログ入力端子LR(フォーン、バランス)、アナログ出力端子LR(フォーン、バランス)、デジタル入出力端子(コアキシャル、S/P DIF)、MIDI端子(IN/OUT/THRU)、フット・スイッチ用端子

T.C.ELECTRONIC

M.One

88,000円
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■最大入力レベル/24dBu
■最大出力レベル/20dBu
■ダイナミック・レンジ/>93dB(20Hz〜20kHz、アナログ入力)、>101dB(20Hz〜20kHz、アナログ出力)
■周波数特性/+0/−0.1dB(20Hz〜20kHz、アナログ入力)、+0/−0.5dB(20Hz〜20kHz、アナログ出力)、DC〜23.9kHz±0.01dB@48kHz(デジタル入出力)
■クロストーク/<−95dB(20Hz〜20kHz、アナログ入力)、<−100dB(20Hz〜20kHz、アナログ出力)
■全高調波歪率/<0.004%@1kHz(アナログ入力)、<0.002%@1kHz(アナログ出力)
■AD/DA/24ビット
■サンプリング周波数/44.1/48kHz
■出力ディザー/HPF TPDFディザー
■外形寸法/483(W)×44(H)×194.8(D)mm
■重量/1.85kg

TUNECORE JAPAN