低域が豊かな大出力バイ・アンプ方式パワード・モニター

YAMAHA MSP10

REVIEW by 鎮西正憲 2000年2月1日

20000201-06-001

スタジオ用ニアフィールド・モニター・スピーカーの定番とも言えるNS-10MシリーズのYAMAHAから、パワー・アンプ内蔵の小型スピーカーMSP10が発売されました。このMSP10は、先行のMSP5のスケール・アップ版です。ホーム・レコーディングなどのパーソナル・ユースから、プロ・スタジオ使用においての大音量にも、十分耐え得るものとなっています。

再生周波数帯域は
40Hz〜40kHzの広いレンジを実現

まず概要ですが、後面のアンプ部を含めた外形寸法は265×420×329mm(W×H×D)、形式は20cmコーン型ウーファー、2.5cmチタン・ドーム型ツィーターの2ウェイ仕様、バスレフ型エンクロージャーとなっています。実感としての大きさはNS-10Mのひと回り分くらい大きいです。NS-10Mと同じスペースに置けると思いますが、その場合のリスニング・ポイントは、やや近過ぎるかもしれません。フロント・パネルは、ウーファーのコーンも含めブラックですが、つや消しの滑らかな黒に控えめの白いYAMAHAのロゴ、中央に配置された緑色の小さなパワー・インジケーターがポイントになっているので、業務用の無骨さは全然感じられません。

後面に張り付いたアンプ部はLF用、HF用のバイ・アンプ駆動となっています。アンプの上部には、それぞれ音場補正用の3ポジションのアッテネーター、80Hzのローカット・スイッチがあります。入力は+4dBのXLRバランスのみとプロ・ユース仕様ですが、−6〜+4dBのアッテネーターが付いていますので、接続する機器の出力感度に合わせることができます。重量はアンプ付きなので20kgと結構重く、設置するときに指を挟んで痛い思いをしました。再生周波数帯域は40Hz〜40kHzと、かなりレンジが広く採られています。

以前、MSP5のレポートをしたときに、スタジオ・モニターとして使うならもっと容量が大きく、ウーファーは20cmは欲しいと書きました。私の声がYAMAHAさんに届いたかどうかは知りませんが、まさに希望通りのものが出てきたわけです。

低域はNS-10Mよりも豊かで
よりバランスが作りやすい

では実際に音を聴いてみることにします。例によって私のフランチャイズであるマグネット・スタジオのDIGITAL MAGNETに持ち込み、試聴を行ないました。このスタジオはDIGIDESIGN Pro ToolsとYAMAHA 02Rというフル・デジタル・スペックのスタジオです。

DIGITAL MAGNETの2ndモニターは、NS-10M Studioですが、サウンド・チェック用CDで聴いてみた第一印象は、そのキャラクターがとてもよく似ているということです。ボディやスピーカーの大きさからスケール感の違いはありますが、切り替えて聴き比べてみても、ミックス・バランスや印象が変わるということはありません。最近のハイ上がり傾向のスピーカーと比べると、高域の伸びはそれほどでもなく、少し地味な感じがします。しかし、音に色付けがなく、バランスも良いので、落ち着いて聴くことができます。ただ、ここにあるスピーカーが、届いたばかりの新品でエージング不足のせいからなのか、ハイハットやシンバルなどの金物は少々ザラついて聴こえました。

低域はNS-10Mよりも明らかに豊かですが、ガタイに見合ったもので、不自然にブーストされた感じはありません。NS-10Mの場合、その中域の張った特性上、ボーカルなどが大きく聴こえがちですが、MSP10は下が出ているので、狙ったバランスを作りやすいと思います。ウーファーとツィーターのクロスオーバー周波数は2kHzということで、ウーファーは40Hzからその辺りまでを受け持つわけですが、周波数特性図を見ると1kHz付近に谷が付けてあり、紙製コーン特有の中域の張りを補正していると思われます。

アンプ部はLF用120W、HF用60Wと十分で、モニター・ボリュームを相当上げてもキックなどがバフバフ歪むことはありません。また、大音量時にはLRの位相が変わってハイハットなど金物の定位がやや不鮮明になりました。

音場補正用のアッテネーターは、LF3ポジション(0dB、−1.5dB、−3dB/50Hz)、HF3ポジション(+1.5dB、0dB、−1.5dB/10kHz)をモニター環境(部屋の鳴り、設置場所等)に応じて調整できますが、LFの設定が50Hzと低いせいか−3dBにしても微妙にしか変わりませんでした。80Hzのローカット・スイッチと併用しないとあまり効果はないでしょう。

ハード・ディスク(Pro Toolsなので)を立ち上げてミックスをやってみましたが、ルックスによる先入観で「ロー、ハイはもっと出るはず」と思い、ついオーバーEQ気味になってしまいました。実際は思ったよりもフラットな特性です。好みとしてはHFアッテネーターは+1.5dBの位置が最もバランスが良く、音を作りやすく感じました。また、音量を絞ってもローがなくなることはなく、バランスも変わりません。

MSP10は、パワードであるという点、音を色付けせずに再生するという点、音圧があるという点で、モニター・スピーカーとしての条件を十分に満たしていると思います。音質的には個々の好みはあるでしょうが、NS-10Mを聴き慣れた人にとっては違和感はない音です。実際、1時間も聴いているうちにエージングが進んできたのか、耳が慣れたのか(?)、非常に作業しやすい音に感じてきました。価格も手ごろな設定で、コスト・パフォーマンスの高いモニターの登場と言えるでしょう。

YAMAHA

MSP10

75,000円(1本)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】

SPECIFICATIONS

■周波数特性/40Hz〜40kHz(−10dB)
■ユニット構成/LF:20cmコーン(4Ω防磁型)、HF:2.5cmチタン・ドーム(8Ω防磁型)
■クロスオーバー周波数/2kHz、30dB/oct
■定格最大出力/LF:120W@400Hz、HF:60W@10kHz
■SN比/≧98dB(IEC-A weighting)
■外形寸法/265(W)×420(H)×329(D)
■重量/20kg

TUNECORE JAPAN