in the blue shirtが使う Studio One 第3回

ミュージシャンが使うStudio One by in the blue shirt 2020年2月21日

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第3回 ドラムの音色選びを効率化する
オーディション・システムの構築法

お世話になっております、in the blue shirt有村です。我々時間の無い現代人にとっては、いかにDAWのオペレートにかける時間を減らしてクリエイティブなことに時間を割くかがキモになります。効率のみを考えて音楽を作るのはナンセンスですが無駄な努力は減らしたい……そんなあなたに、私がPRESONUS Studio One(以下S1)で行っているドラム組みのやり方をご紹介します。あくまで一例、もっと良い方法があるかもしれないので、皆さんの工夫のきっかけになればと思います。

Multi Instrumentを使って
2種類のサンプラーを一度に扱う

私のドラム・パターン作成は、オーディオ・ファイルをS1のアレンジ画面にベタ張りしていく場合と、MIDIで打ち込んでいく場合が半々くらいです。今回は後者の方を見ていきましょう。

まずは、S1純正のパッド搭載型ドラム・サンプラーImpact XTでメインのドラム・トラックを作成。先代のImpactはシンプルさ故の取り回しの良さが魅力でしたが、Impact XTにバージョン・アップしてからは16サンプル×8バンクの計128サンプルを一度に扱えるようになりました。さらに、各パッドのパラアウトの系統数がステレオ16+モノラル16になったので言うことなし。そして好みのサンプルをブラウザーからパッドにドラッグ&ドロップすると、簡単にアサイン完了です。ひとまずは、お気に入りのプリセット・キットをロードし、パターンを組んでみましょう。筆者は、Urbanic Producer Packなどのプリセットが好みです。

▲AKAI PROFESSIONAL MPCスタイルのドラム・サンプラーImpact XT。画面左にA〜Hの8つのバンクを選ぶためのタブがあり(赤枠)、各バンクで最大16種類のサンプルをパッドにアサインして扱える

▲AKAI PROFESSIONAL MPCスタイルのドラム・サンプラーImpact XT。画面左にA〜Hの8つのバンクを選ぶためのタブがあり(赤枠)、各バンクで最大16種類のサンプルをパッドにアサインして扱える

使用するサンプルについては、特に3点(キック、スネア、ハイハット)などのよく鳴らすものは、音色的に相性の良い素材を選びたいところです。そこでS1純正のMulti Instrument(複数のインストゥルメントやMIDIエフェクトを一括して扱うためのプラグイン)を用いて、サンプル・オーディションの効率化を図ってみましょう。まずはImpact XTを立ち上げたトラックに、これまた純正のサンプラーSampleOne XTをドラッグ&ドロップし、ポップアップ・ウィンドウ上で“結合”を選択。すると、そのトラックにMulti Instrumentが自動的に立ち上がります。Multi Instrumentの画面では、ドラッグ&ドロップでインストゥルメントやMIDIエフェクトのルーティングを直感的に組むことが可能です。

▲音源やMIDIエフェクト、スプリッターなどを視覚的にルーティングできるMulti Instrument

▲音源やMIDIエフェクト、スプリッターなどを視覚的にルーティングできるMulti Instrument

さて、まずはプリセット・キットのキックを差し替えてみましょう。今回は、MIDIノートのC1にアサインされたキックを差し替えます。手順については、Multi Instrumentにある“Note FX”欄からInput Filterを選択し、SampleOne XTの前段にインサート。Input Filterは、音源に送るMIDI信号のノートおよびベロシティの範囲を設定するためのMIDIエフェクトで、ここではKey Range欄で最低音も最高音もC1に設定します。これで、C1のノートのみSampleOne XTに送られている状態になりました。

▲画面の左側は、SampleOne XTの前段にMIDIエフェクトInput FilterをインサートしたときのルーティングがMulti Instrumentに表示された様子。右側がInput Filterの操作画面。音源に入力するMIDIのノート範囲や最小/最大ベロシティを設定できる(赤枠)

▲画面の左側は、SampleOne XTの前段にMIDIエフェクトInput FilterをインサートしたときのルーティングがMulti Instrumentに表示された様子。右側がInput Filterの操作画面。音源に入力するMIDIのノート範囲や最小/最大ベロシティを設定できる(赤枠)

次にSampleOne XTの設定。画面上部のタブでMapping画面にアクセスし、C1から上に向かって半音刻みで異なるサンプルを割り当てていきます。C1、C#1、D1、D#1……という感じで、各サンプルのRoot/Low/Highは、すべてRootの値にそろえておきましょう。

▲サンプラーのSampleOne XT。C1から上のノートに半音刻みでサンプルを読み込んでいる。Mapping画面(赤枠)を使えば視覚的に扱えて便利だ

▲サンプラーのSampleOne XT。C1から上のノートに半音刻みでサンプルを読み込んでいる。Mapping画面(赤枠)を使えば視覚的に扱えて便利だ

この状態でImpact XTのキックをミュートし、先に打ち込んでおいたドラム・パターンを再生。パターンはそのままに、キックの音色のみSampleOne XTから出力されるようになります。最初はSampleOne XTでC1にアサインしたキックが鳴りますが、SampleOne XTのトランスポーズ値を半音ずつ上げていくと送られるノートも半音ずつ上がっていき、C#1にアサインしたキック、D1にアサインしたキック、D#1に……というように音色が差し替わっていきます。

▲Multi Instrumentの画面左側には、各インストゥルメントの音量やミュート/ソロ、トランスポーズなどのコントロールが備わっている。画面のルーティングでは、SampleOne XTのトランスポーズを半音ずつ上げていくとサンプルが差し替えられるようになっている

▲Multi Instrumentの画面左側には、各インストゥルメントの音量やミュート/ソロ、トランスポーズなどのコントロールが備わっている。画面のルーティングでは、SampleOne XTのトランスポーズを半音ずつ上げていくとサンプルが差し替えられるようになっている

ドラム3点の音色候補群を
プリセット化しておくと便利

この手法の利点は、打ち込んだパターンを一切変更する必要が無いところと、パターンを再生しながら随時音色を変えられるところです。操作方法としては、SampleOne XTのトランスポーズ値をクリックし、上下にドラッグするだけなので簡単。コンピューターのshiftキーを押しながらドラッグすると、数字が急激に動いてしまうようなことが無くなり、半音単位での上げ下げがやりやすくなります。

SampleOne XTには莫大な数のサンプルをアサインできるため、追加もし放題です。また、この手法であれば“さっき試したサンプルに戻したい”といった場合もスムーズ。私はヒップホップっぽいキック、ハウスっぽいキック、テクノっぽいキックなど、雰囲気やジャンルごとにSampleOne XTにプリセット登録しており、お気に入りの音色をいつでも候補群として呼び出せるようにしています。そして、このやり方をスネアやハイハットにも用いると、よりスムーズに好みのキットを組めるでしょう。あとはMulti Instrumentプリセットとして保存しておけば、いつでも同じ環境を一発で立ち上げることができます。

▲キック(C1)と同様に、スネア(D1)やハイハット(F#1)も差し替えられるようにしたところ。各Input Filter(赤枠)でSampleOne XTに送出するMIDIノートを1つに絞っており、それぞれのSampleOne XTのトランスポーズを上下させると音色が置き換わる。各SampleOne XTでサンプル・セットを保存しておいたり、このMulti Instrumentの設定をプリセットにしておいても便利だ

▲キック(C1)と同様に、スネア(D1)やハイハット(F#1)も差し替えられるようにしたところ。各Input Filter(赤枠)でSampleOne XTに送出するMIDIノートを1つに絞っており、それぞれのSampleOne XTのトランスポーズを上下させると音色が置き換わる。各SampleOne XTでサンプル・セットを保存しておいたり、このMulti Instrumentの設定をプリセットにしておいても便利だ

今回紹介した手法は、準備にこそ手間がかかるものの、一番肝心なオーディションの段では逆に手間がかからないので、積極的にさまざまな音色を試すことができます。音色は鳴らしてみてナンボ! ガンガンいろいろなサンプルを試していきましょう。お気に入りの組み合わせが見つかったら、Impact XTにアサインし直してドラム・キットとして保存しておくと、これまた今後の役に立ちます。

さて、今回は説明し切れませんでしたが、SampleOne XTにはシンセさながらの音色エディット機能やエフェクトが搭載されています。いずれも強力なので、素材を選択するだけでなく音色の作り込みも容易。もちろん、SampleOne XTのトラックに外部エフェクトをインサートすることも可能なので、音作りの汎用性はかなり高いです。また、Multi Instrumentなどの自由度が高いツールなら、使い手のアイディア一つでさまざまな機能やサウンドが実現できます。私の方法はほんの1パターンに過ぎませんので、ガンガン試してみるとよいですね。

▲SampleOne XTの音色加工用パラメーター。グレー・バックの部分はシンセサイザーのような構成で、フィルターやエンベロープ・ジェネレーター、LFOなどを使用できる。下部の黒バックのところでは内蔵プロセッサーを扱え、画面のゲート、EQ、ディストーション、パン以外に、モジュレーション系エフェクトやディレイ、リバーブを搭載している

▲SampleOne XTの音色加工用パラメーター。グレー・バックの部分はシンセサイザーのような構成で、フィルターやエンベロープ・ジェネレーター、LFOなどを使用できる。下部の黒バックのところでは内蔵プロセッサーを扱え、画面のゲート、EQ、ディストーション、パン以外に、モジュレーション系エフェクトやディレイ、リバーブを搭載している

個人的には、トラック・メイクは理屈でなく試行錯誤の回数が重要だと考えています。DAWの機能を駆使して、短時間にたくさん試行錯誤ができる仕組みを考えるのは楽しいですよ。皆さんも、良き技を知っていたら私に教えてください。次回もこんな感じでいきます、何卒!!

 

*Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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