in the blue shirtが使う Studio One 第1回

ミュージシャンが使うStudio One by in the blue shirt 2019年11月26日

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第1回 オーディオ編集の効率を上げる
ショートカット&コマンド集

皆さま初めまして。in the blue shirtという名義で音楽制作をしている有村と申します。これまでに2枚のアルバムをリリースしたほか、TVドラマの劇伴、CMやWeb広告の音楽を作ったりもしています。私はPRESONUS Studio One(以下S1)を使い、“カットアップ”と呼ばれるオーディオ編集ベースの手法を積極的に採って制作しています。今月から数回にわたり、この連載で私の制作技法を紹介させていただくことになりました。DAW特有の編集の妙を知ってもらうささやかなきっかけになれば幸いです。

MIDIをドラッグ&ドロップし
瞬時にオーディオ化

私がS1を使い始めたのは2011年。バージョンが2だった時代です。当時Windowsユーザーだった私は、まだ使っている人が少なく、最上位版がより安価に買えるという理由で人生初の有料DAWとしてS1を購入しました。思い返すと、当初は標準搭載のシンセがモノフォニックのMojitoのみ。貧乏学生だったのでサード・パーティのシンセを買い足す余裕も無く、そのことがカットアップ・メインの制作スタイルの形成に一役買っている気がします。ちなみに現在のS1は、NATIVE INSTRUMENTS Massiveなどのサード・パーティ製品とも十二分に渡り合えるポリフォニック・シンセMai Taiをはじめ、音源面でも充実のDAWとなっています。私の制作人生、S1とともに成長してきたという謎の自負があり、愛着は人一倍です。

私の制作スタイルをざっと説明するならば、“ある程度の尺のオーディオ素材をカットアップし(=細切れにし)、切り張りで再構築する”といった感じ。特にボーカルのカットアップとエディットには並々ならぬ情熱を注いでいます。そうした技法の都合上、オーディオ編集の手数が世間一般の平均に比べるとやたら多いです。今回は、クリエイティブな部分に頭と時間を使えるよう、S1でのカットアップ〜エディットを効率化できる機能やコマンドを紹介。読者の中にカットアップ道を突き進みたい方が居るなら、ここで紹介する操作(特にショートカット)は最低限の素養として体で覚えることをお勧めします。

【STEP① インストゥルメント・トラックをオーディオ化】
まずは素材作り。今回は、標準搭載のサンプル・プレイヤーPresence XTに収録の音色“Organ FunFair”(筆者のお気に入り)を立ち上げ、リアルタイム入力で適当に打ち込んでMIDIイベントを作成します。うまく弾く必要はなく、尺もある程度でOKです。MIDIイベントができたら、次に新規のオーディオ・トラックを作成。そこへMIDIイベントをドラッグ&ドロップすると瞬時にオーディオ化され、波形(オーディオ・イベント)になります。S1のナイス機能として、このオーディオ・イベントを元のインストゥルメント・トラックにドラッグ&ドロップすると、なんとMIDIクリップに戻ります。素晴らしき時代。

▲カットアップでフレーズを作る際には、まず素材の用意を。筆者は、MIDIキーボードを使ったリアルタイム入力で適当なMIDIパターンを打ち込み、それを空のオーディオ・トラックにドラッグ&ドロップしてオーディオ化。こうして得たオーディオ・イベントをカットアップ&エディットしてフレーズ・メイクしていきます

▲カットアップでフレーズを作る際には、まず素材の用意を。筆者は、MIDIキーボードを使ったリアルタイム入力で適当なMIDIパターンを打ち込み、それを空のオーディオ・トラックにドラッグ&ドロップしてオーディオ化。こうして得たオーディオ・イベントをカットアップ&エディットしてフレーズ・メイクしていきます

【STEP② 範囲ツールの設定をチェック】
ちゃんと弾けているわけでもない、どうしようもないオーディオを編集していきます。ギターやボーカルの録り音、サンプル・パックの素材など、オーディオであれば同じ方法で編集可能です。その実操作へ移る前に設定を確認。有村が編集フリークの方にオススメするのは“イベントエリア上側の範囲ツール”を解除し、代替ツールを“範囲ツール”にするという設定です。あくまで好みですが、イベントエリア上側の範囲ツールを用いると、キーボードを使う頻度が減るのと引き換えに、イベントの端で行う各種操作(後述)がしづらくなります。私のように、細切れ素材を扱う場合は画面中切れ端だらけになるので、この設定はほぼマストです。

▲筆者は“イベントエリア上側の範囲ツール”(ピンク枠)を解除しておく派。また、代替ツールは矢印ツールのプルダウン・メニューから範囲ツールに設定します

▲筆者は“イベントエリア上側の範囲ツール”(ピンク枠)を解除しておく派。また、代替ツールは矢印ツールのプルダウン・メニューから範囲ツールに設定します

 

2ステップ必要な操作を
ショートカットに登録

【STEP③ 素材の一部を切り出す】
次に、カットアップの方法です。オーディオ・イベントの上をcommand(WindowsはCtrl)キーを押しながらドラッグすると、イベントの一部が選択され色が変わります。その部分を任意の場所へドラッグ&ドロップすれば、単体のイベントとして切り出すことが可能です。またcommand(WindowsはCtrl)キーを押しながらドロップすると、元のイベントを変形させることなく切り出せます。私は後者の操作をパレットから絵の具を取り出すようなイメージで、かなりの頻度で用いています。

▲command(Mac)/Ctrl(Windows)を押しながらオーディオ・イベントの上をドラッグすると、色が変わります。画面中央の薄くなっているのが当該部分

▲command(Mac)/Ctrl(Windows)を押しながらオーディオ・イベントの上をドラッグすると、色が変わります。画面中央の薄くなっているのが当該部分

▲選択した部分を任意の場所にドラッグ&ドロップすると、イベントの一部が切り取られた形になります(ピンク枠)

▲選択した部分を任意の場所にドラッグ&ドロップすると、イベントの一部が切り取られた形になります(ピンク枠)

▲選択した部分をドラッグし、command(Mac)/Ctrl(Windows)を押しながらドロップすると、元のイベントはそのままに目的の部分を切り出せます

▲選択した部分をドラッグし、command(Mac)/Ctrl(Windows)を押しながらドロップすると、元のイベントはそのままに目的の部分を切り出せます

【STEP④ 切り出した素材を編集】
切り出した素材への編集テクは数え切れないほどありますが、その中で重要度が高いものをピックアップしてみます。

●位置ずらし 先ほどの素材を選択し、option+command(WindowsはAlt+Ctrl)キーを押しながら左右にドラッグ。すると、車窓から見た景色のように波形だけが動きます。

▲option+command(Mac)/Alt+Ctrl(Windows)を押しながらオーディオ・イベントを左右にドラッグすると、波形だけが動きます。“イベント=枠、波形=枠の中身”と考えれば分かりやすいでしょう

▲option+command(Mac)/Alt+Ctrl(Windows)を押しながらオーディオ・イベントを左右にドラッグすると、波形だけが動きます。“イベント=枠、波形=枠の中身”と考えれば分かりやすいでしょう

イベントの長さ=窓枠、波形=外の景色という感じで、切り出した後にオーディオの再生位置を変えたいときに便利です。

●ストレッチ(伸縮) イベントの右端を、option(WindowsはAlt)キーを押しつつドラッグするとストレッチできます。

▲オーディオ・イベントの右端を、option(Mac)/Alt(Windows)を押しながらドラッグするとストレッチが行え、普通にドラッグするとイベントの長さを変えられます

▲オーディオ・イベントの右端を、option(Mac)/Alt(Windows)を押しながらドラッグするとストレッチが行え、普通にドラッグするとイベントの長さを変えられます

 

●ピッチ・トランスポーズ 画面左上のアイコン“i”を押すと左にインスペクターというウィンドウが開きます。そこにある“トランスポーズ”欄の数字を変えることで、オーディオのピッチを半音単位で変更可能。私はこれを多用するため、option+command+上下の矢印キー(WindowsはAlt+Ctrl+上下の矢印キー)にトランスポーズを割り当ています。

▲筆者は、F4キーでインスペクターを開き、トランスポーズ欄でピッチを調整するという操作をショートカットに登録。画面上部メニューStudio One>キーボードショートカットで登録でき、コマンドはoption+command+上下の矢印キー(Mac)/Alt+Ctrl+上下の矢印キー(Windows)です

▲筆者は、F4キーでインスペクターを開き、トランスポーズ欄でピッチを調整するという操作をショートカットに登録。画面上部メニューStudio One>キーボードショートカットで登録でき、コマンドはoption+command+上下の矢印キー(Mac)/Alt+Ctrl+上下の矢印キー(Windows)です

 

●反転 イベントを選択し、command(WindowsはCtrl)+Rのキーを押してみてください。オーディオが反転(リバース)します。“Reverse”の“R”と覚えましょう。

▲イベントを選択し、command(Mac)/Ctrl(Windows)+Rキーを押すとオーディオが反転する

▲イベントを選択し、command(Mac)/Ctrl(Windows)+Rキーを押すとオーディオが反転する

 

●ピッチ補正 イベントを選択し、command(WindowsはCtrl)+Mのキーを押してみましょう。S1に一機能として組み込まれているピッチ補正ソフト=CELEMONY Melodyne Essentialがイベントにインサートされ、ノート単位でピッチの変更ができるようになります。私はボーカル・エディット時に、これなしではいられない体になってしまったため、S1を手放すことができません。

▲command(Mac)/Ctrl(Windows)+Mキーで立ち上がるCELEMONY Melodye Essential

▲command(Mac)/Ctrl(Windows)+Mキーで立ち上がるCELEMONY Melodye Essential

駆け足になってしまいましたが、以上の操作は体で覚えるまで繰り返すと、エディット作業が思いのままにできるようになります。かなり特殊な切り口でのスタートでしたが、これらのコマンドを用いて、実際にどのように楽曲を構築していくかを次回以降に紹介します。果たして興味がある人はいるのか!? 引き続き、何とぞよろしくお願いいたします!!

 

 

*Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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