Chester Beattyが使う Studio One 第4回

ミュージシャンが使うStudio One by Chester Beatty 2019年10月28日

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第4回 オーディオ・エディット機能を
楽曲制作で有効活用する方法

筆者が理事を務める日本レコーディングエンジニア協会(JAREC)のWebサイトが新しくなりました! 吉田保さんや森元浩二.さん、山口照雄さんらJAREC会員への質問やお仕事の依頼など、気軽にコンタクトできます。さて、詳細はWebサイトをご覧いただくとして、今月もPRESONUS Studio One(以下S1)について書いていきましょう。

タイム・ストレッチの質が高いから
リズム・マシンの自走を録って使える

S1を使っていると“素晴らしいところはどこ?”という質問とともに“作業をしていて何か変わった?”と尋ねられるのですが、そのときは大体“波形編集ソフトを使わなくなったかな”と答えています。S1には、外部からオーディオを取り込んだり、切ったり張ったりという基本的な機能はもちろん、タイム・ストレッチやタイミングのズレ調整など優れたポイントが盛りだくさん。今回は、S1でオーディオをエディットしながら楽曲を制作するための2つの方法をお伝えします。
【その① タイム・ストレッチによるテンポ同期】
弊社スタジオで楽曲制作する際は、豊富にそろえたビンテージのリズム・マシンやシンセを積極的に使うようにしています。このとき悩んでしまう問題が、どのマシンを同期(シンク)のマスターにするかというもの。通常ならS1をマスターとしてMIDIクロックを送出し、MIDI接続したリズム・マシンをシンクさせるところですが、弊社スタジオではいつからかDAWとリズム・マシンをMIDI同期させるのをやめました。

▲ソング画面上部メニューのStudio One>環境設定>外部デバイスに入ると、リズム・マシンやハードウェア・シンセと連携するための設定が行える。“新規インストゥルメント”というのを作成し、MIDIクロックの送信をアクティブにするなどの設定をすれば(赤枠)、外部機器とのテンポ同期も可能

▲ソング画面上部メニューのStudio One>環境設定>外部デバイスに入ると、リズム・マシンやハードウェア・シンセと連携するための設定が行える。“新規インストゥルメント”というのを作成し、MIDIクロックの送信をアクティブにするなどの設定をすれば(赤枠)、外部機器とのテンポ同期も可能

ではどんな方法なの?と言われそうですが、とってもシンプル。リズム・マシンを単独で走らせ(自走させ)、その音をリアルタイムにS1へ録るだけ。このときS1とリズム・マシンのBPMはマッチしておらず、お互いズレていますが、録音した後で調整できるので大丈夫。何でそんなことするの?と言われれば理由はたくさんあるのですが、一番の動機はリズム・マシンが持っているグルーブやノリを生かしたいためです。

随分前なのですが、DJ TASAKAさんと共作をしたときMIDIシンクについて徹底的に実験したことがありました。使用したのはLINN LM-2やCASIO RZ-1、ROLAND TR-909などの往年のリズム・マシン。それらの鳴らし方として、以下の3つを試したのです。

●DAWでMIDIパターンを打ち込んでリズム・マシンをトリガーする
●リズム・マシンでパターンを打ち込み、DAWとMIDI同期させながら鳴らす
●リズム・マシンで打ち込んで自走させる

これら3つを比べたところ、三者三様の鳴り方をしました。すべて同じパターンで、なおかつジャストなタイミングで打ち込んでいるはずなのに不思議です。この経験から3つ目の方法を選ぶことになり、今もリズム・マシンを単独で走らせてS1へ録音するようにしています。

ワークフローとしては、まずS1でテンポを設定し、それに合わせてリズム・マシンのテンポをザックリと決めます。TR-909には気持ち程度のBPMカウンターは付いていますが(合わせても決して合いません)、TR-808やLM-2などにはカウンターさえ無いので、聴いた感じで適当に設定。そうやって自走させたパターンをS1に録音し波形のスタート・ポイントを作り、そこを先頭にして1〜2小節のドラム・ループを作ります。そしてループ・エンドの下の方を、Macのoptionキー(WindowsではAltキー)を押しながらドラッグするとタイム・ストレッチが行え、S1のグリッドに合わせられます。これで完成。S1のタイム・ストレッチはほかのDAWと違い全く違和感なく奇麗で、しかも処理が速いです。この機能があるからこそ、リズム・マシンの自走を録って使うことが可能になります。

▲リズム・マシンを自走させ、キックを録音。波形を思い切り拡大し、ド頭がグリッドにぴったり合うようにすれば、まさにジャストなタイミングでキックが鳴り出す

▲リズム・マシンを自走させ、キックを録音。波形を思い切り拡大し、ド頭がグリッドにぴったり合うようにすれば、まさにジャストなタイミングでキックが鳴り出す

▲波形の頭を決めたら、次にループの区間を設定。オーディオ・イベント終端の下の方を、コンピューターのoption(Mac)/Alt(Windows)キーを押しながらドラッグするとタイム・ストレッチが行える。左にドラッグすればテンポが速く、右だと遅くなる

▲波形の頭を決めたら、次にループの区間を設定。オーディオ・イベント終端の下の方を、コンピューターのoption(Mac)/Alt(Windows)キーを押しながらドラッグするとタイム・ストレッチが行える。左にドラッグすればテンポが速く、右だと遅くなる

▲リズム・マシン自走のループを少しだけタイム・ストレッチし、ソングのBPMにぴったりと合ったループを作成したところ。過度なストレッチは音質の劣化を招くが、ほどほどであればダメージを感じさせないのがS1のすごいところである

▲リズム・マシン自走のループを少しだけタイム・ストレッチし、ソングのBPMにぴったりと合ったループを作成したところ。過度なストレッチは音質の劣化を招くが、ほどほどであればダメージを感じさせないのがS1のすごいところである

本稿に掲載しているスクリーンショットは、筆者がミックスを手掛けた楽曲で、“ニュー・オーダー歌謡アイドル”などと呼ばれている加納エミリさんの作品です。彼女はDAWひとつで80′sフレーバーな楽曲を作り上げる素晴らしい才能をお持ちで、弊社スタジオに納品される時点でも完成されているのですが、この曲では彼女の作ったドラム・パターンをLM-2で打ち込み直し、さらにグッとくる楽曲に仕上げています。

 

オーディオ・ベンド機能を使えば
アタック単位でタイミング補正可能

【その② オーディオ・ベンドでのタイミング調整】
弊社スタジオには、MOOG MinimoogやRHODESのピアノなどMIDI非対応のシンセやキーボードもあります。これらの楽器を使用するときは、プレイヤーの演奏をS1に録っていくのですが、ベスト・テイクを押さえたつもりでも、タイミングのズレなどは大体レコーディング終了後に気付くものです。そんなときも、S1ならあっという間に補正できます。
まずはアレンジ・ウィンドウにある問題の波形をダブル・クリックし編集画面を開きます。それからオーディオ・ベンドのアイコンをクリックすると設定画面が出てくるので、ここで“分析”ボタンをクリックすれば波形をアタックの位置で分断するポイント(水色の縦線)が出現。ベンド・ツールを選び縦線を左右にドラッグすると、タイミングのズレた個所を修正することができます。

▲オーディオ・ベンド(赤枠内右)をアクティブにするとオーディオのアタック位置=波形内の縦線が検出される。それからベンド・ツール(赤枠内左)を選び縦線を左右にドラッグすると、アタックの位置が動かせるのでタイミングの補正が可能である

▲オーディオ・ベンド(赤枠内右)をアクティブにするとオーディオのアタック位置=波形内の縦線が検出される。それからベンド・ツール(赤枠内左)を選び縦線を左右にドラッグすると、アタックの位置が動かせるのでタイミングの補正が可能である

また、S1ではオーディオにクオンタイズをかけることも可能。複数の個所をタイミング修正したいときは、アレンジ・ウィンドウからクオンタイズ対象の波形を選びコンピューター・キーボードのQを押しましょう(上部メニューの“イベント>クオンタイズ”からも設定可)。

▲アレンジ・ウィンドウでオーディオ・イベントを選択し、コンピューター・キーボードの“Q”を押すだけでクオンタイズ完了。option(Mac)/Alt(Windows)+Qだと50%のクオンタイズとなる。オーディオ編集ウィンドウにあるQボタン(赤枠)を押すと、クオンタイズの詳細メニューが出てくる

▲アレンジ・ウィンドウでオーディオ・イベントを選択し、コンピューター・キーボードの“Q”を押すだけでクオンタイズ完了。option(Mac)/Alt(Windows)+Qだと50%のクオンタイズとなる。オーディオ編集ウィンドウにあるQボタン(赤枠)を押すと、クオンタイズの詳細メニューが出てくる

さて今回のまとめです。
①S1ではオーディオのタイム・ストレッチが容易にできて、しかも奇麗
②オーディオにもクオンタイズがかけられるので、タイミング調整はお手のもの

ちなみに、E-MU SP-1200に取り込んだサンプルを編集する場合、8本のスライダーでパラメーターを変更しながら行います。ただしこのスライダー、ザックリとした調整しかできず、ドラム・ループを作る際にもピッタリと合わせることはできません。しかしこの粗さが独特なグルーブ感をもたらしました。S1はオーディオの編集を自動/手動のいかなる方法でも扱えるので、慣れるとSP-1200的なノリも簡単に表現できます。これほど自由自在にオーディオを扱えると、波形編集ソフトやサンプラーの出番はなくなります。

 

 

 

*Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

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