【Studio One 4特集 ② – 開発者インタビュー】Studio One 4の「テーマ」と「テクノロジー」

創造性を呼び起こす“ネクスト・レベルのDAW”=Studio One 4 by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 Translation:Tomohiro Moriya 2018年8月28日

Developer

前項で、そのあらましを紹介したStudio One 4。アップデートされたポイントについて、さらに詳しい話をお届けすべく、PRESONUSソフトウェア開発チームのアーンド・カイザー氏(写真)にインタビューを行いました。

ライブにも使えるImpact XT
ドラム入力にたけた編集画面

●バージョン4へのアップデートに際しては、何かコンセプトやテーマはありましたか?
カイザー 我々はメジャーなアップデートを行う場合、ユーザーからのフィードバックやリクエストを重視しています。その結果、今回は“MIDI編集のワークフローの改善”と“パターン・ベースのビート・メイキング”が主なテーマとなりました。

●標準搭載のドラム用サンプラーImpactがImpact XTになり、機能強化されています。以前は16個のパッドにサンプルをインポートして扱う仕様でしたが、新しく8つのバンクを備えたことで、最大128個(16個×8バンク)ものサンプルを使えるようになりましたね。
カイザー Impactはベーシックなドラム・サンプラーでしたが、Impact XTはパワフルなドラム用ワークステーションとなっています。目玉機能としては、ループのスライスやリアルタイムでのタイム・ストレッチが挙げられますね。こうしたサウンド・デザイン関連の機能、さらにはステレオ16系統+モノラル16系統の全32アウトプットを備えたことにより、1台でもトラックを作れるのです。パッド搭載型のMIDIコントローラーと組み合わせれば、スタジオとステージの両方で力を発揮するでしょう。

 

Impact XT

▲ドラム・サンプラーImpactの進化版。8つのバンクを持ち、それぞれに16個のサンプル・インポート&トリガー用パッドを備えています。ループ再生やソング・テンポとの同期はもちろん、複数のサンプルのアタマを合わせてトリガーしていくことも可能なので、DJ感覚のライブ・パフォーマンスにも最適です

▲ドラム・サンプラーImpactの進化版。8つのバンクを持ち、それぞれに16個のサンプル・インポート&トリガー用パッドを備えています。ループ再生やソング・テンポとの同期はもちろん、複数のサンプルのアタマを合わせてトリガーしていくことも可能なので、DJ感覚のライブ・パフォーマンスにも最適です

 

●そのステージでの使用に関してですが、リアルタイムでのタイム・ストレッチが可能ということは、複数のループを現場でミックスするようなライブも行えるわけですね。
カイザー それこそがImpact XTの核心であり、現場から提案されたこともでもあります。タイム・ストレッチとループ再生、トリガーのクオンタイズ機能を組み合わせれば、クリエイティブなライブ・パフォーマンスが可能です。私は、このImpact XTを複数台立ち上げる必要さえ無いと思っています。128個のパッドと32のアウトプットにより、1台で想像以上に多くのことができるからです。

●ビートに関するものとしては、ドラム・エディターという新しい編集画面もありますね。
カイザー ドラム・エディターは、ユーザーがドラムを打ち込みやすいように設計した画面で、Impact XTのトラックにはデフォルトで立ち上がります。ピアノロールに切り替えることもできますが、多くのユーザーから“独立したドラム・エディターが欲しい”と要望されたので追加しました。

 

ドラム・エディター

▲ドラム入力のために視認性を重視したエディター。インストゥルメント・トラックにピアノロールと併装され、鍵盤アイコンでピアノロール、太鼓アイコン(画面左上)を押すとドラム・エディターを表示できます

▲ドラム入力のために視認性を重視したエディター。インストゥルメント・トラックにピアノロールと併装され、鍵盤アイコンでピアノロール、太鼓アイコン(画面左上)を押すとドラム・エディターを表示できます

 

●パターンのエディターとしては、ステップ・シーケンサー・スタイルの“パターン機能”も新しいものです。
カイザー パターン機能を使用すると、よりクリエイティブなビート・メイキングが実践できます。例えばImpact XTと併用する場合、各打楽器のステップ数を異なる値に設定したり、特定のノートをリピート再生するなどして、さらなる実験が行えるのです。パターン機能で作ったデータは、特殊なMIDIイベントとしてトラック画面に表示されますが、同一のトラック上で通常のMIDIイベントも使えます。つまりパターン機能とピアノロールの両方で音源をトリガーできるため、新たなコンビネーションとなるでしょう。

 

パターン機能

▲ステップ・シーケンサー型のエディター。ドラム・エディターよりも多機能で、ノート・ナンバーごとにステップ数を変えたり、ノート・リピートやランダマイズも行えます

▲ステップ・シーケンサー型のエディター。ドラム・エディターよりも多機能で、ノート・ナンバーごとにステップ数を変えたり、ノート・リピートやランダマイズも行えます

 

●音階演奏に向けたサンプラーのSample OneもSample One XTとして生まれ変わりました。
カイザー 大きな変更点としては、Mai TaiやPresence XTといった標準搭載の音源に使っているフレームを採用したことです。相変わらずシンプルなサンプラーではありますが、いろいろとクリエイティブな使い方が可能です。

 

Sample One XT

▲音階演奏が行えるサンプラーSample Oneの新世代バージョン。Mai Taiなどと同じフレームに入り、エフェクトなどを搭載したほか、サンプルのスライスやMIDIノートへのマッピング、ノーマライズ、リバース、録音機能なども実装されました

▲音階演奏が行えるサンプラーSample Oneの新世代バージョン。Mai Taiなどと同じフレームに入り、エフェクトなどを搭載したほか、サンプルのスライスやMIDIノートへのマッピング、ノーマライズ、リバース、録音機能なども実装されました

 

オーディオ素材であっても
和音の再マッピングを行う

●アップデートの中では、コード・トラックとハーモニー編集も出色です。コード・トラックはソングのキーやコード進行を指定し、ハーモニー編集はコード・トラックにMIDI/オーディオ・データの和声を従わせるものですが、何がデータベースになっているのでしょうか?
カイザー まず、コード・トラックの作成には“コードセレクター”というツールが便利で、プリセットのデータを選んでコード進行を組むことができます。これの開発には、弊社のノーテーション・ソフトNotionのコード・データベースを用いました。コード・トラックへの追従のさせ方には幾つかのモードがありますが、例えばオーディオのループを従わせたいときには“ユニバーサル”というモードが有効です。これを適用すると、ループの中のすべての音は、ターゲットとなるスケールの音へシンプルにアサインされます。ほかのモードでは、もともとのオーディオの中で鳴っているコードを基準として、構成音の再マッピングを行います。

 

コード・トラック&ハーモニー編集

▲コード・トラックはソングのキーやコード進行を指定する機能で、トラック画面上部に位置。MIDI/オーディオの両方からコードを検出し進行を組める上、コードセレクター(画面)を使えばプリセット・データでコード進行を作成可能です。ハーモニー編集は任意のMIDI/オーディオ・データをコード・トラックに従わせる機能で、追従のさせ方や楽器にマッチした処理の仕方を選べます

▲コード・トラックはソングのキーやコード進行を指定する機能で、トラック画面上部に位置。MIDI/オーディオの両方からコードを検出し進行を組める上、コードセレクター(画面)を使えばプリセット・データでコード進行を作成可能です。ハーモニー編集は任意のMIDI/オーディオ・データをコード・トラックに従わせる機能で、追従のさせ方や楽器にマッチした処理の仕方を選べます

 

●オーディオの和音を分解して扱えるアルゴリズムのように思えますが、なぜそうしたことができるのですか?
カイザー 詳細は明かせませんが、オーディオからコードを検出する機能とMIDIから検出する機能、構成音の再マッピングには、それぞれ異なるテクノロジーを用いています。さらに、ハーモニー編集には“チューンモード”というメニューもあり、ベースやギター、ピアノ、ブラス、ストリングスなどの楽器に最適化した処理が可能です。これによりノイズを低減しています。処理後のサウンドのクオリティは、ハーモニー編集によって動かす音の数や組み合わせに影響を受けます。これに関しては、かなりの実験を行っていますね。

●Studio One 4のアップデートに関して、テーマとテクノロジーの両面から興味深いお話を伺えました。
カイザー PRESONUSソフトウェア・チームは、日本のユーザーたちと親密な関係を築いてきました。彼らからのフィードバックもあり、Studio One 4にはグレイトな新機能が搭載できたと思っています。チームを代表して、日本のユーザーに感謝の気持ちを送りたいと思います。

 

TUNECORE JAPAN