Device 35 ランダム性と周期性を持ち合わせるルーパー

Maxで作る自分専用パッチ by onigiri 2019年9月24日

▲simple loop modifierプレゼンテーション・モード

▲simple loop modifierプレゼンテーション・モード

基礎的な機能ブロックをつなぎ合わせることで独自のソフトウェアを構築できるCYCLING ’74 Max。現在ネット上では数え切れないほどのパッチがシェアされており、それらのプレーヤーとしても活用が可能です。ここでは最先端のプロフェッショナルが作成したクールなパッチを紹介。パッチのサウンドを試聴できるほかファイルをWebよりダウンロードして、新しい音楽の制作に役立ててください

Device 35 ランダム性と周期性を持ち合わせるルーパー

▲simple loop modifierプレゼンテーション・モード

▲simple loop modifierプレゼンテーション・モード

 

▲simple loop modifierパッチング・モード

▲simple loop modifierパッチング・モード

 

▲complex loop modifierプレゼンテーション・モード

▲complex loop modifierプレゼンテーション・モード

 

▲complex loop modifierパッチング・モード

▲complex loop modifierパッチング・モード

 

ファイルをダウンロードする→patches1911

 

再生位置をランダム化する

読者の皆様、初めまして。onigiriと申します。普段はCYCLING ’74 MaxやDAWを使用した楽曲制作を行っており、最近ではShrine.jpというレーベルから1stアルバム『microwave』をリリースしました。今回は、そのアルバム制作に使用した“オーディオ・ファイルの再生位置をランダムに切り替えてループ再生するパッチ”を紹介。分かりやすいようにパッチ構造を単純化したので、中〜上級者の方にとってはやや物足りないかもしれませんが、これからMaxを始める方にとっては取り組みやすいものになっていると思います。

それでは早速音を出してみましょう。今回紹介する2つのパッチのうち、“simple_loop_modifier.maxpat”を開いてください。プレゼンテーション・モードのパッチ上部にある“replace”というボタンをクリックし、オーディオ・ファイルを読み込みましょう。何小節分かのドラム・ループなどで試すと効果が分かりやすいかと思います。パッチ上部のトグル・スイッチをオンにし、[ezdac~](スピーカーのアイコン)をクリックすると音が鳴ります。鳴っている音を保存しておきたい場合、画面左側の“recording start/stop”からWAV形式で録音することが可能です。

このパッチを使うと元のオーディオ・ファイルと違う音が鳴りますが、それはオーディオ・ファイルの再生位置とループのデュレーションを一定周期でランダムに変更しているためです。そして、その仕組みがパッチの構造上重要なポイントになります。

次はこのパッチの構造について説明します。まずはパッチング・モードに切り替えてみましょう。このパッチは役割ごとに幾つかのセクションに分かれています。本記事では説明の便宜上、それらをサブパッチ化せずに四角で囲みました。このパッチの発音部は、[buffer~]オブジェクトにオーディオ・ファイルを読み込み、[play~]オブジェクトで再生していることで成り立っています。オーディオ・ファイルの再生位置は[metro]オブジェクトによって一定周期でランダムな位置に変更されます。このパッチでは[metro]オブジェクトの時間の管理はミリ秒単位ではなく、音符単位で行いました(“4n”の場合は4分音符相当のデュレーション)。
“randomize BPM”というセクションを詳しく見ていきましょう。このセクションではテンポの管理を行っています。トグル・スイッチがオフになっていると任意のテンポを設定することができ、オンになっているとテンポが周期的に変更されます。通常は“BPM”と“density”の設定に合わせてオーディオの再生位置が変更されますが、“randomize BPM”をオンにすることでテンポに揺れが生まれ、より不規則なサウンドになるのです。

テンポの周期的な変更については一工夫してあります。次はそのテンポを生成している“generate BPM variations”というセクションを見ていきましょう。ここではテンポを常にランダム生成しているのではなく、あらかじめ生成した乱数を[coll]オブジェクトに格納し、[counter]オブジェクトで順番に呼び出しています。このパッチはリズム・トラックの響きに複雑なニュアンスを加えたり、環境音にリズミックな変化を加えたりする目的で設計したので、ランダム性と周期性が程良く共存するようにこのような仕組みにしました。

 

[groove~]オブジェクトによるタイム・ストレッチ

次は“complex_loop_modifier.maxpat”というパッチについて解説します。パッチから音を出す方法は“simple loop modifier.maxpat”と同じです。パッチ自体はさほど複雑ではありませんが、“simple_loop_modifier.maxpat”と比べると、読み込んだオーディオ・ファイルとはかなりかけ離れた音が鳴ります。

パッチング・モードを見ると、パッチ右側の2列のセクションは“simple_loop_modifier.maxpat”と同じ構造になっていますが、パッチ左側の発音部のオブジェクトは[play~]オブジェクトから[groove~]オブジェクトに変更しています。

このパッチはオーディオ・ファイルの再生位置やデュレーションだけでなく、再生スピードを変更できるようにしています。[play~]オブジェクトは[phaser~]などのオシレーターからオーディオ・ファイルの再生を制御するため、再生速度はオシレーターの周波数により変化しますが、[groove~]オブジェクトの場合は[sig~]オブジェクトを介して再生速度の値をそのまま渡せるので、再生速度の制御は[groove~]オブジェクトの方が簡単に行うことができます。

パッチ上部の“time stretch”というトグル・スイッチをオンにすると[groove~]オブジェクトのタイム・ストレッチ機能が有効になり、再生速度の変化がピッチの変化ではなく、デュレーションの伸縮具合に影響するようになります。また、“mode”というメニューを変更すると、“Timestretching Mode”が変更され、音の質感が変わります。

パッチの説明は以上になります。今回はかなりシンプルなパッチでしたが、いろいろなサウンド・ファイルを読み込んだり、パッチを改造して楽しんでいただければ幸いです。

 

onigiri

profile_onigiri

【Profile】東京を拠点に活動する電子音楽家。環境音や、ギターを中心としたさまざまな楽器音のサンプリング、CYCLING ’74 Maxなどのサウンド・プログラミングを取り入れた楽曲制作を行う。海外レーベルのコンピレーションへの参加、映像作品への楽曲提供をしてきたほか、5月にはShrine.jpより1stアルバム『microwave』をリリースした。

 

 

max_logo

CYCLING ’74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能

問合せ:エムアイセブンジャパン
http://www.mi7.co.jp/

 

TUNECORE JAPAN