LYNX Aurora(n)テスト・レポート〜Mine-Chang

LYNX Aurora(n) by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 撮影:八島崇 2018年8月15日

AuroraN_Minechang

1998年、PCIカード型が主流の時代からプロ・スペックのオーディオ・インターフェースを作り続けるLYNX STUDIO TECHNOLOGY(以下LYNX)が、昨年満を持して世に送り出した最新モデル、Aurora(n)。Pro Tools|HD、Thunderbolt、USB、Danteといったさまざまな接続方式に対応するほか、最大32イン/32アウトまでを自由に構成できるといった特徴を備えた柔軟なオーディオI/Oだ。しかし、最大のポイントは、従来から定評ある透明度が高く色付けの少ないサウンドに、さらなる磨きをかけたことにある。ここではさまざまな角度から、その実力を明らかにしていくが、実機でのテストは2人のクリエイターに行っていただく。

 
 

驚いたのはDA変換の位相特性の良さ
ピタッとフォーカスが合った感じがします

 prime sound studio formに所属するレコーディング・エンジニアであり、アーティスト作品からCM音楽、ゲーム音楽などまで作編曲家/プロデューサーとしても活躍するMine-Chang氏。コンピューターやオーディオなどさまざまな技術にも明るい氏には、Aurora(n)で行ったあるテストについて語ってもらおう。

 

コンソール・アウトをそのままとらえるA/D

 Mine-Chang氏はAurora(n)をAVID HD I/Oと比較するために、こんな試験を行ったそう。

 「そのとき作業していた100trくらいの音源をPro Toolsのバスである程度まとめて、16chパラアウトしてスタジオのSSLコンソールに立ち上げてみたんです。コンソールのch1〜16がHD I/O、ch17〜32がAurora(n)。レベルが大きいと良く聴こえてしまうので、1kHzの基準信号ではありますが0.1dBの差も無いよう調整してから行いました。コンソールのステレオ・アウトからはHD I/OとAurora(n)に戻して録音し、それをコンソールのエクスターナル・インに立ち上げて、瞬時に切り替えられるようにしたんです。もちろんインプットもレベル差が無いように調整しました」

 このテストがもたらした結果は、意外なものだった。スタジオで聴く限り、HD I/OとAurora(n)に大きな差が感じられなかったそうだ。

 「まずDA変換、つまり再生に関しては、スタジオ・モニターで聴き比べるとどちらがHD I/OでどちらかAurora(n)なのか分かりませんでした。フラットというか、現代のこのクラスの機材に変な癖は無いんだなと感じたんです……少なくともこの時点では」

 一方、AD変換については明らかな差が認められたという。

 「Aurora(n)の方がコンソール・アウトの音に近いと思いました。HD I/Oは“AD/DAしたマスターの音”。バランス感にしても、音像感にしても、HD I/Oより透明感のある音だと感じました。Aurora(n)はADコンバーターとして優秀というのが、このときのテストで得た感触でした」

▲テスト時のPro ToolsのI/O設定画面。スタジオ常設のHD I/O×3台に加え、Aurora(n)が“4台目のHD I/O”として認識されていることが分かる(画面右部)

▲テスト時のPro ToolsのI/O設定画面。スタジオ常設のHD I/O×3台に加え、Aurora(n)が“4台目のHD I/O”として認識されていることが分かる(画面右部)

 

ピークを感じさせないA/Dの音質

 ところが、先に違いが無かったと結論づけたはずのD/A部のテストは、予想外の結果をもたらすことになる。

 「DA変換したソースをラフ・ミックスとして32ビット/96kHzで録り、持ち帰ってイアフォンで聴き比べたら、Aurora(n)とHD I/Oで全く音が違うんです。特にライブ音源。HD I/Oの方は聴き慣れたライブ音源というイメージでした。ラフ・ミックスだからバランスがいい加減で、少し音が遠いかなと。それがAurora(n)は、ラフ・ミックスであるにもかかわらず、会場のアリーナの感じが出ていたんです

 Mine-Chang氏はAurora(n)のDAコンバーター部が持つ位相特性の良さに、その理由があると分析する。

 「AD/DAコンバーターはフィルターの集合体であるため、群遅延(group delay)があって、帯域によって位相の変化が違うんです。測定器で見える程度の本当にごくわずかですが、低域の方がディレイ=位相ずれが大きい。その群遅延がチャンネルごとにそろっていないと、複数本のマイクで空間をキャプチャーしたものを再生するときに、位相がずれてしまい、空間の再現性はここまで高くなりません。でも、最近のイメージャー系エフェクトを見れば分かるように、位相がずれている方が広がりは出ますし、悪いことばかりではないんですね。ただ、Aurora(n)は位相特性が良いので、センターがビシッと出る。そして、実際にマルチマイクで拾った空間通りの広がりが分かるんです。音色がシャープというのとは違う、ピタッとフォーカスが合った感じがします」

 この特徴によって、相対的にセンター成分がタイトに感じられるということも氏は指摘するが、音場だけでなく、聴こえてくるサウンドにも影響を与えているという。

 「ちょっと不思議な体験だったんですけど、普通はボーカルの耳につく部分や歌詞の間違いが気になるところが、Aurora(n)でDA変換した音源は実際にライブ会場で聴いているような感覚がして、そういうことが気にならない。ヘッドフォンで聴くと、まるでイマーシブ・オーディオでした」

 

イマーシブ・オーディオの出力として

 普段はAD/DAコンバーターとしてPRISM SOUND ADA-8XRを使用しているというMine-Chang氏。絶対的信頼を寄せる愛機と比較しても、Aurora(n)の位相特性の良さは注目すべき点であるという。

 「ADA-8XRは位相も振幅もそろっているし、音の立ち上がりも速い。それに比べるとAurora(n)は立ち上がりのスピード感は遅いと感じます。これはスイッチング電源の機材の特徴です。オーディオ的なにじみやきめ細かさはトランス電源回路の方が有利ですが、スイッチング電源の方が左右の位相がそろいやすく、中域の情報量が多い。Aurora(n)も、小さく軽く作れるというだけではなく、音質的な理由もあってスイッチング電源を採用していると予想します」

 そんなMine-Chang氏が、自身でAurora(n)を使う機会はあるのだろうか? そう尋ねると、こんな答えが帰ってきた。

 「アナログで最大32イン/32アウトが可能なので、これだけ位相が良かったらイマーシブ・オーディオ用の出力として使ってみたいです。Dolby Atmosの7.1.2chだとしたら10chあれば足りますね。今年の秋に海外でイマーシブ・オーディオのインスタレーションをやる予定があるのですが、そんな機会に使ってみたいI/Oです」

 
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Aurora(n) オープン・プライス

Aurora(n)。最高24ビット/192kHzに対応する、マスタリング・グレードのAD/DAコンバーターを搭載したオーディオ・インターフェース。“LSlot”というカードを使用することで、AVID Pro Tools|HD、Thunderbolt、Dante、USBといったさまざまな接続方式に対応しており、将来の規格変更にも対応し得る。チャンネル数は、1Uサイズながら8ch単位で最大32ch入出力まで対応可能

Aurora(n)。最高24ビット/192kHzに対応する、マスタリング・グレードのAD/DAコンバーターを搭載したオーディオ・インターフェース。“LSlot”というカードを使用することで、AVID Pro Tools|HD、Thunderbolt、Dante、USBといったさまざまな接続方式に対応しており、将来の規格変更にも対応し得る。チャンネル数は、1Uサイズながら8ch単位で最大32ch入出力まで対応可能


 

●AURORA(n) 8
HDモデル/USBモデル:310,000円前後
Thunderboltモデル:355,000円前後
Danteモデル:365,000円前後
●AURORA(n) 16
HDモデル/USBモデル:430,000円前後
Thunderboltモデル:475,000円前後
Danteモデル:485,000円前後
●AURORA(n) 24
HDモデル:550,000円前後
Thunderboltモデル:595,000円前後
Danteモデル:605,000円前後
●AURORA(n) 32
HDモデル:670,000円前後
Thunderboltモデル:715,000円前後
Danteモデル:725,000円前後
●AURORA(n) Pre 1608 (16イン/8アウト:8プリ)
USBモデル:460,000円前後
Thunderboltモデル:505,000円前後
※カスタム構成にも対応
 
Aurora(n)に関する問合せ:フックアップ
https://hookup.co.jp/products/lynx-studio-technology/aurora-n

 
2018年8月号
サウンド&レコーディング・マガジン2018年8月号の記事を元に再構成したものです

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