ZOOM F8〜プロの現場に耐えるフィールド・レコーダー(1)土方裕雄

ZOOM F8

ZOOM F8 by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2015年10月23日

撮影:小原啓樹

撮影:小原啓樹

ハンディ・レコーダーHシリーズにおいて新しいアイディアを多数投入し、レコーダー・メーカーとしての名声を高めてきたZOOMが満を持して発表したのが、マルチトラック・フィールド・レコーダーF8だ。小型/軽量かつ低価格という同社の強みとプロ・スペックを両立させた本機の実力を、2回にわたってレポートしていく。今回は本機の主用途であるフイールド・レコーディングのプロに、F8の強みとなるポイントを聞いた。

 192kHzで8chのマイク録音ができるレコーダーは少なくとも同価格帯ではこれまでありませんでした

フィールド・レコーディストとして、国内はもちろん世界中の自然音を収録してきた土方裕雄氏。早くからハイレゾでの収録やサラウンド収録にも着目しながら、フィールド録音のクオリティ向上を図ってきた氏の目に、ZOOM初のプロ向けフィールド・レコーダーはどう映るのか? 1カ月ほど使っていただいた後、話を伺った。

ZOOM F8

ZOOMF8Main
75dBゲインのマイクプリを8基備える、最高24ビット/192kHz対応のマルチトラック・レコーダー。各入力に対応する8つのトラックと、L/Rミックスのステレオ・トラック(192kHz時は使用不可)とを併せて10trの同時録音が可能。タイム・コード入出力や単三電池×8やACに加えて9〜16Vのバッテリーが使用可能な3電源仕様、デュアルSDカードなど、プロ仕様のレコーダーに必須の機能を実装している。また全入力チャンネルに用意されたリミッターや、1つの入力に対してゲイン違いの2tr録音をするデュアル・チャンネル・レコーディング・モードなど、現場で起こりうるトラブルを回避するための機能も満載。専用iOSアプリであるF8 ControlからBluetooth経由での遠隔操作と、メーターなどのさまざまな情報のモニタリングも行える。

960gという軽量さが動き回るのに有利

●土方さんがF8に興味を持たれたのは?

土方 まずは大きさと重量ですね。Webに発表されたスペックでも、コンパクトにまとまった製品なんだろうなと想像できましたが、実際に手にしてみると想像よりも小さくて、これはすごい製品だなと衝撃を受けました。もちろん価格も。大体このくらいのスペックだと安くても25万円くらいかな?と予想していたのですが、それよりもずっと低価格ですよね。

●実際に手にしてみて気がついた点は?

土方 自然環境音を録音できるこうしたレコーダーで、192kHzで録音するときに、1台で8trの録音ができる機種は極めて少ないんです。192kHzになると録音トラック数が半減するものが多かったし、8tr録音できるとしても8ch分のマイクプリを備えているものは、少なくともこの価格帯ではありませんでした。だから今まではサラウンド収録の場合、4tr/192kHzで録れるレコーダーを2台リンクして使ってきたのですが、それが1台にまとまっているメリットは大きいですね。僕は10年くらい前から192kHz録音を続けているのですが、立体感については48kHzと96kHzの差よりも192kHzと96kHzの差の方が大きいと感じたこともありますから。記録できる空気の振動が細ければ細かいほどハイレゾは有効なので、その意味でF8は革命的だと思います。

●重量とコンパクトさはフィールドに持ち出す機材として重視する点ですか?

土方 そうですね。本体重量が960gと軽量な点は、動き回るような現場では大きなファクターです。サイズは操作性とのトレードオフですが、小さければ限られたスペースの中で自由度が高まります。F8の入力トリムのノブは相当小さいのですが、適度な重みもあって、誤動作しにくいと思います。また、PFLスイッチを押すとゲイン数値が画面に現れるので、各チャンネルのトリム設定を正確に把握できるのはいいですね。

▲フロント・パネルに並ぶ入力トリム。小ぶりだが適度な重みのあるしっかりとした作りだ。コントロールは内部でデジタル制御しているため、設定値をディスプレイに表示することや、ノブに触れても設定が動かないようにロックをかけることもできる(撮影:小原啓樹)

▲フロント・パネルに並ぶ入力トリム。小ぶりだが適度な重みのあるしっかりとした作りだ。コントロールは内部でデジタル制御しているため、設定値をディスプレイに表示することや、ノブに触れても設定が動かないようにロックをかけることもできる(撮影:小原啓樹)

●iOSでのリモート操作も試されましたか?

土方 APPLE iPhoneにF8 Controlを立ち上げて、レベル・メーターとして活用しています。F8本体の画面と併せて、パソコンでいうデュアル・ディスプレイのような形ですね。

▲専用キャリング・ケースPCF-8に収めて使用しているところ。APPLE iPhone 6上のF8 Controlでレベルを監視しながら収録している

▲専用キャリング・ケースPCF-8に収めて使用しているところ。APPLE iPhone 6上のF8 Controlでレベルを監視しながら収録している

タイムコード管理で録音後の編集も万全

●気になる音質はいかがでしょう?

土方 高域まで特性が伸びていて、S/Nが良いですね。テレビ収録でのセリフの収音には、リミッターも細かく設定できる点と併せて有効だと思います。現場で突然大声を出す人もいる……例えば子供番組で小さなお子さんが”きゃー!”と大声を出すこともあるので。デュアル・チャンネル・レコーディングで、同一チャンネルのゲイン違いバージョンを録っておけるので、二重三重に安心できます。ローカット・フィルターもバリアブルなので、吹かれをカットする場合も風の強さに応じて調整できますね。

●そのほか便利だと感じている点は?

土方 タイムコード入力があるので、カメラから情報をもらって、タイムコード・ベースで管理や編集ができる。MAの前段階で、カメラに収録した音声から僕のレコーダーに記録したものに差し替えるということをよくやっているんですが、そうすると音のグレードが上がるし、作品全体のグレードも上がるんです。その編集のためにはタイムコードは必須ですね。あとは以前からハンディ・レコーダーのH6を使っているので、交換用マイク・カプセルもF8に接続して試してみたいと思っています。

●今後、どんな現場でF8が活用できそうですか?

土方 やはり軽量でコンパクトな点が魅力なので、登山などフットワークが重視される現場では活用していきたいと思っています。

▲左サイド・パネル

▲左サイド・パネル

▲右サイド・パネル

▲右サイド・パネル

▲リア・パネル

▲リア・パネル

土方裕雄

1980年代から世界中の自然環境でフィールド録音に携わる。テレビ番組、展示映像、テレビCM、企業PR作品などの音声業務を担当。自然環境の音空間をリスニング・ルームに実像感を持って再現することをテーマとして、フィールドでのサラウンド録音における音源ごとの最適マイキングを探求している。かなり早い時期から24ビット/192kHzでのサラウンド・フィールド録音を手がけ、360度の定位だけでなく、奥行き、深さなど遠近感を伴った録音と音響再現を実現。

撮影:小原啓樹

撮影:小原啓樹

F8で録音したハイレゾ・サウンドをダウンロード!

  • せせらぎ(24ビット/96kHz WAV×2ファイルをZIP圧縮:約190MB)
  • 秋の虫の声(24ビット/96kHz WAV×2ファイルをZIP圧縮:約190MB)

今回、土方氏がF8で収録した自然環境音。収録には50kHzまでの細かな空気振動をとらえる無指向性マイク、EARTHWORKS QTC50を高さ3mの位置に5本、6mの位置に4本設置。9.0chのハイト・サラウンドという方式で、高さ6mのマイクは残響成分を狙ったものだ。収録は24ビット/192kHzで行い、試聴音源はこれを元にステレオ化した後、ポリフェーズ・フィルターを通してダウン・コンバートしたものとなっている。

※これらのWAVファイルは試聴用です。権利者の許可無く再配布・販売・アップロードすることや無断使用はお控えください(編集部)。

▲9chサラウンドのマイク・ツリー

▲9chサラウンドのマイク・ツリー

▲2台のF8を使い、下段の5chと上段の4chを録音

▲2台のF8を使い、下段の5chと上段の4chを録音

▲森の中にマイク・ツリーを設置して収音

▲森の中にマイク・ツリーを設置して収音

Presented by ZOOM

ZOOM F8に関するお問い合わせ:ズーム http:/www.zoom.co.jp/

ZOOM

F8

オープン・プライス(市場予想価格15〜16万円前後)
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。

【SPECIFICATIONS】
■記録フォーマット:WAV、MP3 ■ビット&レート:最高24ビット/192kHz 入力ゲイン:+10〜+75dB(マイク) ■ノイズ:−127dBu以下(A-weighted、入力ゲイン+75dB、150Ωinput) ■周波数特性:10Hz〜80kHz(192kHz動作時) ■外形寸法:178.2(W)×54.3(H)×140.3(D)mm ■重量:960g(本体のみ)

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