フロスティ(アドヴェンチャー・タイム)インタビュー

The Choice Is Yours by 白石裕一朗(Sound & Recording Magazine編集部) 2014年11月12日

frosty_photo

本誌連載『THE CHOICE IS YOURS』連動ブログ。今回は東京でのRed Bull Music Academy出演のために来日したフロスティのスペシャル・インタビューをお届けします。デイデラスとのユニット=アドベンチャー・タイムの11年ぶりの2ndアルバムとなる『オフ・ビヨンド』の制作やDJとしてのポリシー、主宰するロサンゼルスのネット・ラジオ局dublab.comの歩み/今後について、普段通りの快活な口調で語ってくれました。(通訳:渡瀬ひとみ)

音楽をシェアして皆の心に光を与えたいんだ

◎デイデラスとの出会いから聞かせてください。
フロスティ 彼とはUSC(南カリフォルニア大学)のカレッジ・ラジオで出会った。歳は僕が1つ上で、もう20年の付き合いになる。初めて会ったとき、彼が“Mr. Memory”と書かれたTシャツを着ていたことを覚えているよ。音楽の話をして、すぐに意気投合したんだ。エクスペリメンタルな電子音楽という共通の趣味はあったが、デイデラスはパンクやサーフ・ロックに詳しかったし、僕はどちらかと言うとサイケデリック・ロックやワールド・ミュージック寄りだった。情報交換という意味でも有意義な出会いだったね。

◎USCのカレッジ・ラジオの一日は、どのようなものだったのですか?
フロスティ カレッジ・ラジオのステーションは音楽のクラブ・ハウスのようなもので、オルタナティブな音楽好き/オタクが集っていた。その中でシリアスにラジオをやっていきたいという数名が、“ディレクター制度”を立ち上げてレコード・レーベルとの結び付きを強め、局内にライブラリーを構築し始めたんだ。実はそのときの面子が現在のdublab.comにつながっている。

◎あなたやデイデラスは当時から自分の番組を持っていたのですか?
フロスティ そうだよ。2人ともエレクトロニック・ミュージックの番組ディレクターをやっていたし、当時から自分の番組を持っていた。現在dublab.comでデイデラスがホストを務めている『Entropy Sessions』も、僕の『Celsius Drop』も、カレッジ・ラジオ時代の番組名をそのまま使っているんだ。つまり同じ番組をもう20年以上続けていることになるね。

◎当時、音楽の情報収集はどのようにして行っていたのですか?
フロスティ サンフランシスコやニューヨークなど、ロサンゼルス以外の都市も含め、レコード・ショップには常に通っていた。当時はまだ音楽業界にも活気があったから、カレッジ・ラジオのステーションにはレコード・レーベルのプロモ盤がたくさん送られてきていたんだ。その中のあまり好きではない盤を、中古レコード店に持ち込んではトレードしていたよ。ラジオ放送自体で収益を上げていたわけではないけれど、お金の無い学生にとって、そうした環境はありがたかった。

◎レコード・ショップを通して音楽的知識を育んだんですね。
フロスティ それまで知らなかった素晴らしい音楽に感銘を受けることは、既に知っている大好きな曲を聴くよりも満足感を得られる行為だ。だが、ミステリアスなレコードに初めて針を落とすときのワクワク感は、学生のころの方が鮮烈だった気がするね。今ではYouTubeで簡単にレアな音源に触れられるから。

Exif_JPEG_PICTURE

▲『オフ・ビヨンド』のリリース元であるringsのオフィスにて

◎デイデラスとビートを作り始めたきっかけは?
フロスティ 彼と僕は大学でエレクトロニック・ミュージックのコースを専攻していて、DIGIDESIGN Pro Toolsなどのソフトウェアの使い方を学んでいた。あるとき教授からMOOGなどのシンセサイザーがたくさんある部屋の鍵を渡されて、“自由に使っていいぞ”と言われたんだ。だが結局その部屋に出入りしていたのは、僕とデイデラスだけだった。そこでモジュラー・シンセのパッチを組んで、ノイズやSEを作ってはカセットMTRに録っていたよ。そうやって一緒に音楽を作り始めたんだ。

◎DJとビート・メイクは、あなたの中でどう区別されているのですか?
フロスティ DJとして他人の音楽を紹介することと、オリジナル曲の制作は、僕の中で強く結びついている。と言うか、ラジオで曲をかけたり音楽について文章を書いたりすることや、ビートを作ることもライブの企画を立てることも、すべて同じ目的でやっていることなんだ。僕はインスピレーションを与える音楽をリスナーに紹介したいし、自分でも作っていきたい。そうした役割を意識しながら日々の活動を行っている。あと僕にとっての音楽制作は、“友人との楽しみを発展させていく”という意味合いも大きい。自分自身のキャリアのためにビートを作っているわけではないんだ。

◎『オフ・ビヨンド』は、アドヴェンチャー・タイムとして11年ぶりのアルバムになるわけですが。
フロスティ 実は『Dreams Of Water Themes』(2003年)の直後にもう一枚アルバムを出せるくらいの素材はあったんだが、コンピューターがクラッシュして、データがすべて消失してしまったんだ。それからもお互い忙しい中をぬって制作を続けていたけど、さっきも話したように、僕にとって音楽制作は友情の延長線上にあるから……デイデラスとの制作の50%はランチで、25%はレコード・ショッピング、20%はくだらない話をしているから、なかなか進まなくてね。

◎過去の曲をサンプリングして再構築するという制作手法は、dublabのテーマである“Future Roots”にも通じるように感じます。
フロスティ そうだね。誰も、これまで生み出された音楽をすべて聴くことはできないと思うんだ。僕自身は、そんな音楽全体を一枚の“絵”としてとらえている。一枚の風景画の中に、見たことがない形の山があり、川が枝分かれして畑につながっていたり、空には鳥が飛んでいる……音楽とは、そのような感じで、過去から未来へと綿々とつながっているものだと思うんだ。すごく豊かなものだし、制作にあたっては、そこからいろいろな要素を取り入れたり学んだりできると考えている。

◎アルバムではエキゾチックなネタ使いが聴かれますが、欧米以外の音楽に引かれる理由は?
フロスティ 父が空軍にいた関係で、子供のころから引っ越しが多かったんだ。18歳まで9回引っ越して、ヨーロッパなどいろいろな地域で暮らした。母は文化的な人で、幼い僕をアフリカン・ダンスやジャズ、日本の尺八などのイベントに連れていってくれた。そうした音楽体験が、サブリミナルにすり込まれているのだと思う。その一方で、Top 40に入るようなポップ・ミュージックも大好きだったから、きちんとしたメロディやハーモニーがある音楽と辺境の音楽は、僕の中で同列に存在しているんだ。

◎アドベンチャー・タイムの音楽やあなたのDJプレイは、マニアックではあるけれど、アウトプットは常にチャーミングですよね。
フロスティ 僕が好んでかける音楽には、ある種の“楽観主義”が通底しているとは思う。DJとしては、たとえ悲しい音楽をかける場合でも、リスナーに何かしら共感できる部分がなければならないと思う。マニアックな音楽でも、“どこかに共感できる部分があるかどうか”が選曲の起点になることは多いかな。リスナーを引き付ける要素は音楽のいろいろなところにあると思う。だから僕がDJの際によくやるのは、“ジャンル・ホッピング”という手法。あまり関連性の無い曲を続けてプレイしたりする。あとは選曲を事前に決め込まず、その場の雰囲気に合わせて臨機応変にプレイするということかな。

◎dublab.comの15年をどのように総括しますか?
フロスティ このところ日本やベルリンにも広がりが出てきたし、すごく満足しているよ。僕の意図は、各国のスタッフをLAからコントロールすることにはない。dublabのライトなリスナーでもいいし、ヘビー・リスナーからレジデントDJになってもらってもいい。どんな形でも構わないから、人々を巻き込んでいきたいんだ。それがチェイン・リアクションのように自発的に広がっていく……というのが、僕がdublabを始めたときに思い描いていたビジョンなんだ。人々にインスピレーションを与えて、それぞれのユニークな旅につながってくれればいい。だから、このところコネクションがオーガニックに広がってきているのはうれしいね。dublab.jpはユニークだし、それはdublab.deも同様だ。この調子でdublabという“器”を使って、世界の人々と音楽をシェアしていければいい。

jp

▲東京・中目黒Malmoでのdublab.jp出演時にスタッフと

◎2013年の『Beacon In The City』での原雅明氏、ピーター・バラカン氏との対談(本誌2014年1月号に掲載)で、“ラジオに携わる人間は、強く伝えたいメッセージが無ければダメだ”と発言していたのが印象に残っています。あなたがラジオを通して最も訴えたいメッセージとは?
フロスティ 音楽をシェアして皆の心に光を与え、音楽を聴く喜びを感じてくれればいいと思う。耳の肥えたリスナーには、彼らが満足できる音楽を提供していきたいし、アンダーグラウンドな音楽をあまり聴いたことがないリスナーにも親しみを感じてもらいたい。さっきも言ったけど、とにかくさまざまなレンジのリスナーを巻き込んでいきたいんだ。イメージ的には、dublabというすごく大きなレコード部屋があって、そこでいろいろな人が一緒になって楽しめればいいかな。

◎今後やってみたいことはありますか?
フロスティ 宇宙で寿司を食べたい。テレポーテーション。あとはもう少しだけ眠りたいね!

 

 『オフ・ビヨンド』
アドヴェンチャー・タイム
rings:RINC-1

プリント

 

 

 アドヴェンチャー・タイム(フロスティ&デイデラス)

AT_photo

デイデラス:
エキセントリックであり、電気的で、伝染するエネルギーの持ち主。デイデラスことアルフレッド・ダーリントンの色鮮やかで幅広い音楽は、一言では言い表せない。数々のショッキングなLP、EP、リミックス、そして絶賛されているインプロビゼーション満載のライブを体感すれば、彼ほどまでにユニークなアーティストは存在しないことを実感するはずだ。最新ソロ・アルバムはBRAINFEEDERからの『The Light Brigade』。
daedelusmusic.com

フロスティ:
1999年に非営利のWebラジオ局兼クリエイティブ集団であるdublab.comをLAの仲間と設立。それ以来、彼はdublabと共にポジティブな音楽、アート、カルチャーを世界中に広めている。dublabのfuture rootsラジオ放送以外にも、“dublab presents”のアルバム・リリースや世界中で開催されるアート展のキュレーションも担当。LA Weekly誌で“LAのベストDJ”を受賞した彼は、世界中を廻りながらエキゾチックな場所でエキセントリックなレコードをプレイ。dublab.comで彼の長期にわたるラジオ番組『Celsius Drop』も定評がある。
dublab.com/frosty

 

TUNECORE JAPAN