STAR ISLAND 2019 花火と音響で作り上げる異世界アート

レポート by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2019年9月9日

starisland

花火と3Dサウンド、そして100名以上のパフォーマーが登場する“感覚拡張型エンターテインメント”、STAR ISLAND。2017年から国内外で開催されており、今年7月20日には東京・豊洲ぐるり公園を会場にして、約1万5千人を集めた。その有料観客席はさまざまなグレードがあり、中でも高台からソファーに腰掛けて観覧できるVIPシートが人気。ここではRAMSA製スピーカーで5.1chシステムが組まれているという。サラウンドと花火の競演はどう実現したのか、編集部は会場へ足を運び、関係者に取材を行った。

VIP席はRAMSAのスピーカーで
5.1chを2エリア分セッティング

STAR ISLAND 2019の会場となったのは、ゆりかもめの市場前駅から徒歩10分ほどに位置する豊洲ぐるり公園。豊洲市場のオープンに合わせて作られた大きな公園で、レインボーブリッジを臨める夜景スポットとなっている。STAR ISLANDを主催するのはエイベックス・エンタテインメント。同社イベント制作グループのゼネラルマネージャーを務める坂本茂義氏は「弊社は今まで屋内でのコンサートを主に行ってきましたが、STAR ISLANDはそのノウハウから生まれた新たなエンターテインメントです」と話す。

「花火をアップデートして新しい感動体験を与えたい、というところから始まりました。既存の花火大会よりエンタテインメント性を高めるのはもちろん、ディナーを食べながら、子供が遊びながら、バーべキューをしながらなど、あらゆる見方や楽しみ方を通じて新たな感動や気付きが生まれてくるのではないのかと考えたのです。そして、日常の世界にパラレル・ワールドが発生して、そこで花火が打ち上げられていることをコンセプトとしています」

▲エイベックス・エンタテインメントのイベント制作グループ ゼネラルマネージャーを務める坂本茂義氏

▲エイベックス・エンタテインメントのイベント制作グループ ゼネラルマネージャーを務める坂本茂義氏

STAR ISLANDは、毎回テーマに沿って制作されている。今回は『2019: A SPACE ODYSSEY』。開催日の7月20日は、アポロ11号が初めて月面に着陸してからちょうど50年の日だ。「宇宙への航海をイメージしやすいような楽曲選定をした」と坂本氏は語る。

「ダンス・ミュージックだけではなく、さまざまな方が楽しめるように、幅広い年代の洋楽のヒット曲もそろえました」

会場にはどのエリアからでも音楽が聴こえるように、数多くのスピーカーが設置されている。その中で最も音響にこだわっているのがVIPシート。VIPシートはRAMSA製のスピーカーで組まれた5.1chシステムにより、3Dサウンドが体感できる。同社のスピーカーを選定した理由について、坂本氏が答える。

「国内ブランドのスピーカーを使うことで、日本の企業を応援したいという気持ちがあったからです。STAR ISLANDはこれからさらなる世界進出を狙っているのですが、そこでVIPシートに日本製のスピーカーが使われていたら、日本の技術の高さを多くの人に知ってもらえますよね? 日本のマーケットがSTAR ISLANDというカルチャーに付随して、大きくなってくれることを強く願っています」

▲VIP席右側後方からのショット。奥に見えるのはレインボーブリッジで、その手前に写る船から花火が打ち上げられていた

▲VIP席右側後方からのショット。奥に見えるのはレインボーブリッジで、その手前に写る船から花火が打ち上げられていた

 

花火にも負けないパワーを持ち
癖が無く聴きやすいWS-LA500AWP

それではVIPシートのPAシステムを見ていこう。メイン・コンソールはYAMAHA RIVAGE PM10を使用。5.1chの6trソースを収めたマルチトラック・レコーダーのTASCAM DA-6400からPM10へ、アナログで信号を入力している。そこからDSP内蔵パワー・アンプのRAMSA WP-DM948へ伝送され、スピーカー群へ到達する。

▲YAMAHA RIVAGE PM10のアウトプットは、パワー・アンプのRAMSA WP-DM948に伝送される。ラックの上には、遠隔操作用のPANASONIC Let's Noteが確認できる

▲YAMAHA RIVAGE PM10のアウトプットは、パワー・アンプのRAMSA WP-DM948に伝送される。ラックの上には、遠隔操作用のPANASONIC Let’s Noteが確認できる

メイン・スピーカーはラインアレイ・スピーカーWS-LA500AWPを左右に3台ずつ、中央に2台をスタック。中央のサブウーファーにはWS-LA550AWPを3台設置している。後方には30cm径ユニットを積んだ、2ウェイ・スピーカーWS-AR200-Kが左右にスタンバイ。WS-AR200-KはサブウーファーWS-HP450の上にポール・マウントされていた。VIPシートには2つのエリアがあり、それぞれにこのシステムが組まれていた。

▲VIPシート中央に設置されたWS-LA500AWP。写真手前が右側のフロア、写真奥が左側のフロア用のもの。左右端にもWS-LA500AWPが3台ずつスタックされている

▲VIPシート中央に設置されたWS-LA500AWP。写真手前が右側のフロア、写真奥が左側のフロア用のもの。左右端にもWS-LA500AWPが3台ずつスタックされている

▲センターに配置されたスピーカー群。サブウーファーWS-LA550AWPが3台用意され、中央にはWS-LA500AWPを2台をスタックしている

▲センターに配置されたスピーカー群。サブウーファーWS-LA550AWPが3台用意され、中央にはWS-LA500AWPを2台をスタックしている

▲VIP席の後方両端には2ウェイ・スピーカーWS-AR200-Kがスタンバイ

▲VIP席の後方両端には2ウェイ・スピーカーWS-AR200-Kがスタンバイ

▲後方のWS-AR200-Kは、サブウーファーのWS-HP450とペアで設置されていた

▲後方のWS-AR200-Kは、サブウーファーのWS-HP450とペアで設置されていた

サウンドの印象について、坂本氏が語る。

「癖が無くてバランスの良いスピーカーです。近くで聴いても高域で耳が痛くなることはないし、低域はブーミーに鳴り過ぎない。ポップスやクラシック、ワールド・ミュージック、ダンス・ミュージックと、幅広い楽曲を流すこのイベントと親和性が高いスピーカーです。コンサートとは違った方向の良いサウンドだと思います」

5.1chのスピーカー・システムをフルに生かすべく、3Dサウンドのデザインを行ったのが、キスソニックスの伊藤カズユキ氏。AVID Pro ToolsとKISSONIXの3Dサウンド・プロセッサーを用いて、85分前後になる24ビット/48kHzのデータを作成。そのタイム・コードに合わせて花火の打ち上げプログラミングが行われたという。伊藤氏からもRAMSA製のスピーカーは高評価だ。

「通常のラインアレイはもっとガッツのあるサウンドが出るのですが、RAMSAのラインアレイは品の良いサウンドで聴きやすいです。中域の密度が濃くて、高域がしっかり伸びています。低域は花火が打ち上がる中でも会場を盛り上げる、良い響きが得られていました」

▲音響プロデュースを担当した、キスソニックスの3D音空間プロデューサー・デザイナー、伊藤カズユキ氏

▲音響プロデュースを担当した、キスソニックスの3D音空間プロデューサー・デザイナー、伊藤カズユキ氏

さらにパワーについても申し分ないと氏は続ける。

「今回は花火が上がる場所からスピーカーまで200mほどしかないため、音響が花火に負けてしまう心配もありましたが、十分な音量が出ていました。3Dサウンドの再現性も高く、VIPシートにふさわしいスピーカーだと思います」

屋外での花火との競演という類を見ないイベントでの音作りについて、氏はこう説明する。

「ダンス・ミュージックが流れたときに“クラブの方が迫力がある”となってはいけないので、立体的なアレンジを加えることで別の視点から楽しんでもらえるように工夫しました。アレンジャーがSTAR ISLAND用に制作/リミックスした曲を、私の方で立体的に聴こえるように5.1chサラウンド・ミックスをしています」

ミックスは包み込むような空間作りを意識したと語る。

「特に静かな楽曲では注力しました。一緒に来た人とうっとりした感覚を共有できるサウンドを目指したんです」

STAR ISLANDは日が落ちる前から開場していて、DJやパフォーマーの超人的な技を楽しめる。序盤はアンビエント・サウンドが会場を包み、小さめの花火が徐々に打ち上がり始める。次第に楽曲が流れ出して、盛り上がりと共に花火も多く打ち上げられた。その中でも音響はしっかり聴こえていて、花火と共存して異世界を演出していた。クリアでバランスの良いサウンドを有するRAMSAのスピーカーだからこそ、空間に調和して最高の雰囲気を作り上げてくれたのだと思う。

▲メイン・コンソールのYAMAHA RIVAGE PM10

▲メイン・コンソールのYAMAHA RIVAGE PM10

▲測定にはオーディオI/OのRME Babyface Proと、マイクのEARTHWORKS QTC40を採用。音響シミュレーション・ソフトのPASDが用いられ、パワー・アンプRAMSA WP-DM948と連携してチューニングが行われた

▲測定にはオーディオI/OのRME Babyface Proと、マイクのEARTHWORKS QTC40を採用。音響シミュレーション・ソフトのPASDが用いられ、パワー・アンプRAMSA WP-DM948と連携してチューニングが行われた

 

201910
サウンド&レコーディング・マガジン2019年10月号より転載

 

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