京都岡崎音楽祭「KYOTO OKAZAKI LOOPS」が大盛況の内に終了!

レポート by サウンド&レコーディング・マガジン編集部 2016年9月13日

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2016年9月3~4日の2日間にわたり京都の岡崎エリアで開催された“OKAZAKI LOOPS”。プログラム・ディレクターにバレエ・ダンサーの首藤康之、彫刻家の名和晃平、京都市交響楽団常任指揮者の広上淳一、西陣織の細尾真孝、そして音楽家の高木正勝という5名を迎え、音楽、アート、ダンス、伝統といったさまざまなジャンルが融合した多彩な内容となった。サンレコに縁の深いミュージシャンも多数出演したのでその模様をレポートしていこう。

「音」をとらえる@ロームシアター京都 プロムナード

▲evalaに立体音響インスタレーション「hearing things #Metronome」

▲evalaに立体音響インスタレーション「hearing things #Metronome」

OKAZAKI LOOPSの中心となった会場は、1月にリニューアル・オープンしたロームシアター京都。2,000超の客席を有するメインホール、700超のサウスホール、そして200席のノースホールの計3つのホールでさまざまな公演が行われたほか、プロムナードでは前日となる2日から“「音」をとらえる”と題した展覧会を開催。佐々木有美+Doritaの「Slime Synthesizer」や氷でレコードを作る八木良太の「Vinyl」、そしてevalaの「hearing things #Metronome」などが展示されていた。特に、暗室の中で3台のメトロノームが奏でる音だけを使ってスリリングな立体音響を生成するevalaの作品は、体験枠があっという間に埋まってしまうほどの人気を博していた。(サウンド&レコーディング・マガジン2016年11月号の特集「めくるめく“VR音響”の世界」にて、本作品についてevalaのインタビューを掲載)

『ALMA MUSIC BOX:死にゆく星の旋律』コンサート with 京都市交響楽団@みやこめっせ3階 第3展示場

▲京都市交響楽団をバックにスティーヴ・ジャンセンやミトが緊張感の高い演奏を披露

▲京都市交響楽団をバックにスティーヴ・ジャンセンやミトが緊張感の高い演奏を披露

チリにある電波望遠鏡アルマがとらえた電波データをもとに70枚のオルゴール盤を作ったインスタレーション作品「ALMA MUSIC BOX」は、2014年に東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで発表された後、そのオルゴールの音を使ってさまざまなミュージシャンが音楽を作り、CD『ALMA MUSIC BOX:死にゆく星の旋律』という形にまで発展。今回、そこに参加したミュージシャンが京都市交響楽団をバックに演奏するという、実に豪華な演目が開催された。オーケストラ編曲を担当したのは徳澤青弦。アルバムにもトウヤマタケオとのユニット=Throwing a Spoonとして参加していた彼が大胆かつ繊細なアレンジを施す。出演者は入れ替わり立ち替わり登場し、澤井妙治や蓮沼執太が得意の電子音を響かせたかと思うと、スティーヴ・ジャンセン+ミトという夢のリズム・セクションが立ち上がり、湯川潮音やAimerの歌声がこだまする。滞空時間からはボーカルのさとうじゅんこのみが参加し、ガムラン・パートをオーケストラが、ケチャのパートをミトや蓮沼執太が担うといった一幕も。ほかのアーティストのパートではチェレスタの前に陣取ってオルゴール風サウンドを付加していた徳澤も、Throwing a Spoonのときは流麗なチェロを聴かせてくれた。圧巻はクリスチャン・フェネスで、彼が奏でるエフェクティブなギターとオーケストラが巨大な音の壁を構築し、まさにここでしか聴けない音響の渦に観客が取り込まれていった。

大山咲み/高木正勝@ロームシアター京都 メインホール

▲和太鼓奏者やダンサー、そして紙芝居まで、多彩なメンバーが集まり繰り広げられた高木正勝の「大山咲み」

▲和太鼓奏者やダンサー、そして紙芝居まで、多彩なメンバーが集まり繰り広げられた高木正勝の「大山咲み」

“山咲み”というコンサート・シリーズを展開している高木正勝がそのスペシャル・バージョンを披露。通常は8人編成で行っているところを11人に増強し、さらには口上やインドの紙芝居などいろいろな要素が加えられ、祭としての色を濃くしていた。京都出身で、近年は丹波の山村で制作を行っている高木にとってここは地元。普段のコンサートよりかなりリラックスした様子で、客席からの掛け声も多く飛び交う親密な空気が醸成されていた。それに影響されるように演奏はよりダイナミックに、より自由になり、いつしか会場はホールというより野外のような雰囲気へと変貌。高木がもともとやりたかった“村の空気をそのまま持って行く”というコンセプトが見事に実現されていた。なお、この“山咲み”コンサートの初演を収録した高木の新作CD/DVD『山咲み』についても、サウンド&レコーディング・マガジン2016年11月号にて高木へのインタビューを掲載しているのでこちらもぜひご覧いただきたい。

ミルフォード・グレイヴス&土取利行@ロームシアター京都 メインホール

▲フリー・ジャズ・ドラマーの巨匠であるミルフォード・グレイヴス(右)と土取利行による息の合ったプレイ

▲フリー・ジャズ・ドラマーの巨匠であるミルフォード・グレイヴス(右)と土取利行による息の合ったプレイ

その高木正勝「大山咲み」にもゲストとして参加したパーカッションの土取利行が、フリー・ジャズ・ドラマーの巨匠ミルフォード・グレイヴスとデュオでのライブを行った。互いが打ち鳴らす音が、あたかも会話のように交わされ、打楽器だけとは思えない豊穣なサウンドが空間を満たしていく。ラストではグレイヴスが客席へ降り、杖をつきながらダンスして回るというハプニングもあり、アバンギャルド音楽好きが多い京都のオーディエンスも大満足であった。

VESSEL@ロームシアター京都 サウスホール

▲ダンサー同士のカラダが絡みあい、あたかも1つの肉塊のように見える……

▲ダンサー同士のカラダが絡みあい、あたかも1つの肉塊のように見える……

ディレクターの1人である名和晃平が舞台美術を、振付をベルギーのダミアン・ジャレが担当したダンス作品。名和が舞台上に作り上げた水面で、森山未來をはじめとするダンサーたちは皆、腕で顔を隠し、人間というより肉塊がうごめくような動きをし、それをさらに深化させるように原摩利彦が重たいサウンドを絡めていく。正直、気持ち悪ささえ感じる動きはコンテンポラリー・ダンスとしてもかなり異色なもので、観客はただただ圧倒されていた。本作は10月に岡山県の犬島、そして来年1月には横浜公演も予定されているので、興味のある方はぜひ観覧してほしい。

蓮沼執太「OKAZAKI AMBIENT」@ロームシアター京都 ノースホール

▲徳澤青弦、クリスチャン・フェネス、澤井妙治、そして蓮沼執太という4人が音の渦を作り出す

▲徳澤青弦、クリスチャン・フェネス、澤井妙治、そして蓮沼執太という4人が音の渦を作り出す

蓮沼が展開するアンビエント・シリーズは、普段音楽が立ち上がらない場所でその環境に溶け込むようにパフォーマンスをするというプロジェクト。「六本木アンビエント」を皮切りに、「葉山アンビエント」「松原温泉アンビエント」「丸の内アンビエント」、そして弊誌とともに作り上げた「スパイラル・アンビエント」とさまざまなところで開催されてきたが、今回はロームシアター京都 ノースホールという小規模なスタジオ空間で行われた。徳澤青弦、クリスチャン・フェネス、澤井妙治、そして蓮沼執太という4人が電子楽器や生楽器を使てさまざまな抽象音を発し、観客はその間を巡っていくという趣向だ。『ALMA MUSIC BOX:死にゆく星の旋律』コンサートでは品のいい演奏をしていた澤井やフェネスも、解き放たれた猛獣のように暴れ、蓮沼もモジュラー・シンセで攻めたサウンドを出し続けていた。

2045@京都国立近代美術館 1階ロビー特設会場

▲人工知能(AI)が選曲とテンポ合わせまでを行い、人間とバック・トゥ・バック!

▲人工知能(AI)が選曲とテンポ合わせまでを行い、人間とバック・トゥ・バック!

徳井直生と真鍋大度が開催しているDJイベント「2045」は、人口知能(AI)に選曲させることをテーマに行われているもの。これまではファイル・ベースでプレイされていたが、今回、徳井はレコードでできるようにバージョン・アップしていた。最初に人間がかけた曲に合うものをAIが選曲し、そのレコードをターンテーブルに置くとAIがテンポ合わせまでを行うという、まさに人間とAIのバック・トゥ・バックが実現されていたのだ。

紹介した以外にも、前夜祭としてYEN TOWN BAND ORCHESTRA、オープニング・セレモニーであった首藤康之のバレエ、そして大橋トリオのライブや、平安神宮の参道で行われた朗読劇、さらには京都名産品コーナー(漬物寿司がおいしかった)など、実に盛りだくさん。文化発信地としての京都の力をまざまざと見せつけられるフェスであった。

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