担当副社長が語るAVID Pro Toolsの向かう未来

AVID Pro Tools by 松本伊織(サウンド&レコーディング・マガジン編集部) 2016年10月27日

TimCarrol

AVIDオーディオ担当副社長ティム・キャロル氏インタビュー

 

本誌では今年6月、AVID CEOルイス・ヘルナンデスJr.氏に単独インタビューを敢行し、Avid Everywhereというテーマの下、音楽クリエイターに向けて同社がどのようなサービスを提供していくのかというビジョンを提示してもらった(リンク)。続いて7月に、同社オーディオ製品担当副社長ティム・キャロル氏を来日のタイミングでキャッチ。音楽クリエイターが待望している、DAWソフトPro Toolsのアップデートについて、直接話を伺う機会を得た。

 

今後2年は音楽制作関連機能の向上がメイン

キャロル氏は開口一番、「この先2年、Pro Toolsの音楽制作に関する機能のアップデートをロードマップに組み込んでいます」と語った。この発言の背景には、大型フィジカル・コントローラーS6の存在があるようだ。

「開発の中ではいろいろなアップデート・ポイントが挙がってきます。もちろん一度にすべてに取り組むことはできませんから、優先事項を検討する中でS6との連携に焦点を当てたことにより、ここ2年はポストプロダクション向けの機能を優先していました。ただ、音楽制作を全く念頭に置いていなかったわけではありませんし、我々がポスプロ向けと考えていた機能が音楽制作で活用されたり、逆に音楽制作向けと想定していた機能がポスプロのエンジニアに支持されたりといったこともよくあります」

こうして大きく音楽制作向け強化に舵を切ったPro Tools。最近の大きなトピックは、Pro Tools 12.5で実装されたPro Tools Cloud Collaborationだ。既に紹介しているように、クラウド上に置いたプロジェクトを複数のユーザーで共有しながら作業を進めることができる。ではそのほかにどんな機能が加わるのか? キャロル氏を筆頭とするオーディオ製品開発チームは、それを見極めるために欧米諸国や日本で何百人ものユーザーと会い、実態調査をしたという。

「彼らがどうやってPro Tools、あるいはPro Tools以外のツールを使っているかを聞いて回り、Pro Toolsをどんな作業に使っているのか、逆にどういう作業でほかのツールが使われているのかを調査しました。それによって、Pro Toolsに不足している機能や伸ばしていくべきポイントを検討する有意義な情報が得られたのです。それは、大きく分類すれば3つに分かれます」

その分類の最初に挙がるのは、意外にも既にPro Toolsが実装している機能についてとのこと。

「例えば“こういうMIDI編集ができればいいのに”という声に応える機能は既に実装されているのですが、それがどこにあるのか分かりづらい、あるいは使いづらいという場合があります。ユーザーが求める最新の使い方に対応できるよう、アップデートが必要です」

2つ目は、ほかのソフトに既に類似のものが搭載されている機能だ。

「その多くは、既に追加の計画がされています。ADC(自動遅延補正)やトラック・コミット/フリーズなどもそうでしたが、Pro Toolsに他社DAWソフトが先行しているような機能を追加する場合には、最も洗練した形で実装してきたと自負していますし、今後もそうしていけると思います」

そして3つ目は、AVIDからPro Toolsユーザーに対しての全く新しい提案。Pro Tools Cloud Collaborationがその最たる例と言える。

 

制作環境の最初から最後までを“統合する”役割

では具体的に、今後Pro Toolsにどんな機能が加わるのか? 現在明かせる範囲で紹介していただいた。

「まず、他のソフトで実現しているような機能としては、フォルダー・トラック、ワークスペース上でのループ・ブラウザー、CELEMONY Melodyneのようなサード・パーティ製ソフトの統合などが予定にあります。もちろん、Pro Toolsらしい洗練した形になるので、ご期待ください。同時に、全く新しいものとしては、Avid Everywhereに基づくクリエイター同士のコラボレーションがあるでしょう。また、オンライン/オフラインにかかわらず、誰が何を演奏し、どのテイクが良かったという情報を管理するためのパフォーマンス・ライツ管理ソリューションも併せて提供する予定です」

こうした機能改善と同時に、キャロル氏がもう一つ着目しているのが音楽クリエイターとPro Toolsの関係性だという。最後にこう語ってくれた。

「音楽クリエイターは作業内容によって複数のアプリケーションを使い分けることが多いことはよく認識しています。個々のアプリケーションに得意とする分野がありますからね。何百人もユーザーの話を聞く中で、Pro Toolsだけで作業を完結する方もいれば、編集やミックスにPro Toolsを使う方もいることは承知しています。もちろんPro Toolsは作曲やサウンド・デザインからミックスまで、すべてのニーズに応えるだけの機能が備えられていますが、作業の一部分で使う場合にも、ユーザーの作業とクリエイティビティを途絶えさせることがないよう、制作環境の最初から最後までを統合できる役割を果たせるようにと考えています」
 

Pro Tools 12.6の新機能

この9月に発表された最新バージョンでは、レイヤー編集、フェード・カーブ・ダイレクト編集、プレイリスト機能強化などに加え、Pro Tools HDではクリップ・エフェクトが追加された。ここではクリップ・エフェクトとプレイリストについて紹介していこう。

 

●クリップ・エフェクト

Pro Tools HDではクリップ単位で実効可能なインプット・トリム、位相反転、EQ、フィルター、ダイナミクスの各モジュールを装備。編集ウィンドウ上部にドック型インターフェースで用意される。Pro Tools HDで処理したクリップ・エフェクトは通常版でも再生/レンダリングが可能だ。EQ/ダイナミクスは標準付属のChannel Stripプラグインと同一で、同プラグインのプリセットをクリップに適用することもできる

Pro Tools HDではクリップ単位で実効可能なインプット・トリム、位相反転、EQ、フィルター、ダイナミクスの各モジュールを装備。編集ウィンドウ上部にドック型インターフェースで用意される。Pro Tools HDで処理したクリップ・エフェクトは通常版でも再生/レンダリングが可能だ。EQ/ダイナミクスは標準付属のChannel Stripプラグインと同一で、同プラグインのプリセットをクリップに適用することもできる


 

●プレイリスト強化

初期設定で選択しておくことで、録音や編集でクリップが重なった際、もともとあったクリップを新規プレイリストに自動で退避させることが可能となった。この画面では録音済みの個所に別テイクを新規録音。もともとあったクリップが下の別プレイリストへ順次移動している。複数テイクからのコンピングやテイク編集に便利な機能だ

初期設定で選択しておくことで、録音や編集でクリップが重なった際、もともとあったクリップを新規プレイリストに自動で退避させることが可能となった。この画面では録音済みの個所に別テイクを新規録音。もともとあったクリップが下の別プレイリストへ順次移動している。複数テイクからのコンピングやテイク編集に便利な機能だ


 

Pro Tools 12.6の新機能詳細はAVIDブログをご覧ください。

What’s New in Pro Tools 12.6
http://www.avidblogs.com/ja/whats-new-pro-tools-12-6/
A Journey to Pro Tools 12.6
http://www.avidblogs.com/ja/journey-pro-tools-12-6/

サウンド&レコーディング・マガジン2016年11月号より転載

TUNECORE JAPAN