【音響設備ファイルVol.43】専門学校ESPエンタテインメント福岡 Live Hall EMY

音響設備ファイル by Text:iori matsumoto Photo:Takayoshi Matsuyama 2019年3月1日

ESP_Fukuoka_Hall_Top

福岡の中心地で2018年に開校した専門学校ESPエンタテインメント福岡。そのレコーディング・スタジオは2018年8月号の本コーナーでレポートしたが、実は同校には大型ライブ・ハウス並みの設備を誇るホール、Live Hall EMYがある。今回はこのホールにスポットを絞り、機材の紹介とともに同校の狙いを探っていこう。

 

学生の習得のため入門から最新までを用意

 学校法人イーエスピー学園が運営する専門学校ESPエンタテインメント福岡(以下、ESP福岡)は、音楽アーティスト科、声優芸能科、そして音楽芸能スタッフ科の3学科20コースを設けた、エンタメの総合学校だ。2018年に開校したばかりだが、東京・大阪の姉妹校では数多くのプロ・ミュージシャンやエンターテインメント従事者を輩出。そのノウハウを注ぎ込み、福岡から舞台上とバック・ステージの両方に人材を送り出そうとしている。

 福岡市の市街地に新築された8階建校舎の2階には、キャパ300(スタンディング)ほどのホール、Live Hall EMYが設けられていた。村本英之校長はこう語る。

 「東京・大阪も、ホールとレコーディング・スタジオを学校の核とするというコンセプトがありますので、ホールの設置は大前提。ステージに立つ側、それを支える側、両方の学生が在籍していますから、不可欠なんです」

 天井高のあるEMYの常設機材は、コンソールのDIGICO SD7を核に、JBL PROFESSIONAL VXT V Seriesをメイン・スピーカーに据えた仕様。言うなれば、千人クラスの会場に匹敵する各社のフラッグシップ機材を、このサイズに凝縮したようなものだ。村本氏はこう続ける。

 「コンソールは東京・大阪と同じものを導入しました。各校で情報共有ができるので、都合が良いという理由もありますね。そのほかはヒビノプロオーディオセールス Div. 福岡ブランチの西田さんにご相談しました」

 機材のプランニングを担当したその西田将二氏が心掛けたのは、PAを学ぶ学生が卒業するまでに必要な技術と知識を習得できるようなシステムだという。西田氏はこう説明する。

 「まず大阪校まで出向いて求められていることをリサーチし、村本先生と意見のすり合わせをしました。先生にご提案いただいたのは、最新のデジタル機材はもちろん、アナログのコンソールやケーブル、マルチボックスも用意して、初歩から習得できるようにしたい、という点でした」

 聞けば初年度ということもあり、2019年に入った時点でちょうどPAコースのカリキュラムはアナログからデジタルに移行したところだという。アナログ・コンソールとしてはSOUNDCRAFT GB8、仮設PA用スピーカーにJBL PROFESSIONAL SRX Seriesを用意。SD7へ至るまでの段階としてスモール・フォーマットのデジタル・コンソールも、授業用として備えているそうだ。PAコース講師のエンジニア、矢野弥氏はこう語る。

 「基本から最新まで、初歩からベテラン・エンジニアまでが使用できるホールと設備だと感じています。メインのSD7+VTX-V20の音は、良過ぎるくらいですね(笑)。学生が外でライブを見てきてどんな音だったかを報告してくれるのですが、このホールについては逆に言葉が出てこない。仮設の現場などと比べて、ストレスが無いからだと思います。学生が今後外に出て行っても、このホールの音が基準になってくれたらと思っています」

 教務担当の松本章吾氏も、このホールの出音をこのように絶賛する。

 「学校ができる前にオープンキャンパスを近くのライブ・ハウスで開催していました。それはそれで、“ライブ・ハウスらしい温かい音”というイメージがありましたが、このホールは洗練された音だと感じますね」

 

メイン・スピーカーはJBL PROFESSIONALのフラッグシップ・ラインアレイ・システムVTX V Seriesを採用。VTX-V20を片側に6基、サブウーファーのVTX-S25を片側に2基用意している。取材時は音楽アーティスト科ダンスパフォーマンスコースの授業が行われていたが、クリアな音質と引き締まった低域が印象的だった。照明はROBEのムービング・スポット・ライトをはじめMATSUMURAのLEDライトなどを導入

メイン・スピーカーはJBL PROFESSIONALのフラッグシップ・ラインアレイ・システムVTX V Seriesを採用。VTX-V20を片側に6基、サブウーファーのVTX-S25を片側に2基用意している。取材時は音楽アーティスト科ダンスパフォーマンスコースの授業が行われていたが、クリアな音質と引き締まった低域が印象的だった。照明はROBEのムービング・スポット・ライトをはじめMATSUMURAのLEDライトなどを導入


 

フロア・モニターはメイン・スピーカーとの統一を図り、JBL PROFESSIONAL VTX-M20を導入。そのほか仮設PA用やサイド・モニターとしてSRX835 Passive+SRX818S Passive、STX812Mといった多くのJBL PROFESSIONALスピーカーが用意されている

フロア・モニターはメイン・スピーカーとの統一を図り、JBL PROFESSIONAL VTX-M20を導入。そのほか仮設PA用やサイド・モニターとしてSRX835 Passive+SRX818S Passive、STX812Mといった多くのJBL PROFESSIONALスピーカーが用意されている


 

メイン・コンソールはDIGICO SD7。最大253chプロセッシング、128chバスという大規模PAにも対応可能なフラッグシップ・モデルだ

メイン・コンソールはDIGICO SD7。最大253chプロセッシング、128chバスという大規模PAにも対応可能なフラッグシップ・モデルだ


 

左から、ESPエンタテインメント福岡 村本英之校長、教務部音楽芸能スタッフ科の松本章吾氏、同科PAコース講師の矢野弥氏、ヒビノプロオーディオセールスDiv. 福岡ブランチ所長の西田将二氏

左から、ESPエンタテインメント福岡 村本英之校長、教務部音楽芸能スタッフ科の松本章吾氏、同科PAコース講師の矢野弥氏、ヒビノプロオーディオセールスDiv. 福岡ブランチ所長の西田将二氏

 

 

配線や電源にもこだわった設備

 西田氏は、プランニングにあたって機材選定だけをしたわけではない。ハイエンドな機材が最良の音で鳴るよう、実に細かいところまで気を配ったそうだ。

 「ESP福岡の母体となっているのは、ハイクオリティなギター・メーカーとして知られるESPですから、そのイメージに匹敵するような設備にしたいと考えました。サブウーファーのアンプだけパワーの大きなモデルにしたり、スピーカー・ケーブルも太めの高級なものを使っています。また、ケーブルにフェライト・コアを巻いてノイズを消すようにもしました。ハイエンドなESPギターのように、私も見えないところにこだわってみたいと。アンプのラッキングも、電源をグラウンドから浮かせてほかの部屋からのノイズも拾わないようにしています。ESP福岡はビルの設計からスタートしているので、毎月の定例会議には私も参加して、建築会社から意見を求められた際には提案をしたりしてきました。その甲斐もあって、このホールに来たオペレーターに“自分の知っているVTX V Seriesの音より良い”と言ってもらえました」

 良い野菜を作るために、良い土壌を用意する……それと似たアプローチだろう。しかし、すべてに最上のものを導入したわけではない。西田氏はこう続ける。

 「ホール常設機材はハイクラスのものを入れていても、一般の授業で使うケーブルは標準的ななものを選びました。学生の皆さんが世に出たときに、“最上のものでないと仕事ができない”と勘違いしてしまうといけませんから。次の世代につなげていくという意味でも、とてもやりがいのある仕事でしたね」

 昨年末にはZepp Fukuokaが再オープンするなど、九州のエンタテインメント・シーンは福岡を中心に一層の盛り上がりを見せている。そんな中で、ESP福岡が人材を育成していくことは、非常に意義深いことだ。その中枢として、このホールが位置付けられている。西田氏は最後にこう付け加えた。

 「ヒビノとしては、ここでセミナーを開いて、ESP福岡とプロPAの業界のパイプを築けたらと考えています。この業界に入ろうとしている学生の夢を形にできたらいいですね。具体的な話はこれから相談していきますが、学生の皆さんがPAの世界で羽ばたいていただいた方が、ESP福岡だけでなく私たちにとっても良いことだと思います。遠回りなことですが、それを避けていったら発展も無いでしょうから」

SD7の横にはラックも用意。アナログ・コンソールでの実習もあるため、LEXICON PCM96やTC ELECTRONIC D・Twoといったアウトボードも用意されている。その下のCDプレーヤーTASCAM SS-CDR250N×2台の下には、SD7のI/Oが収められている

SD7の横にはラックも用意。アナログ・コンソールでの実習もあるため、LEXICON PCM96やTC ELECTRONIC D・Twoといったアウトボードも用意されている。その下のCDプレーヤーTASCAM SS-CDR250N×2台の下には、SD7のI/Oが収められている

 

ステージ袖に置かれたSOUNDCRAFTのアナログ・コンソールGB8 32chモデル。8グループ、11×4マトリクス、8AUX、4ミュート・グループという仕様で、モニター卓としてはもちろんメインにも使える

ステージ袖に置かれたSOUNDCRAFTのアナログ・コンソールGB8 32chモデル。8グループ、11×4マトリクス、8AUX、4ミュート・グループという仕様で、モニター卓としてはもちろんメインにも使える

 

GB8の下にはAMCRON(現CROWN)のパワー・アンプ、IT4×3500HD(VTX-M20用)×2台とXTI6002×7台がスタンバイ。その右には配電盤を備え、「市民会館などに匹敵する仕様」と西田氏

GB8の下にはAMCRON(現CROWN)のパワー・アンプ、IT4×3500HD(VTX-M20用)×2台とXTI6002×7台がスタンバイ。その右には配電盤を備え、「市民会館などに匹敵する仕様」と西田氏

 

メインのアンプ・ラック。AMCRON(現CROWN) IT4×3500HD×6台をメイン・モジュールに、IT12000HD×2台をサブウーファーに使用している。そのほかプロセッサーのLAKE LM44、AES/EBUディストリビューターのMUTEC MC-2×2台のほか、イーサーネット・スイッチが用意されているのがいかにも現代のPAシステムらしい

メインのアンプ・ラック。AMCRON(現CROWN) IT4×3500HD×6台をメイン・モジュールに、IT12000HD×2台をサブウーファーに使用している。そのほかプロセッサーのLAKE LM44、AES/EBUディストリビューターのMUTEC MC-2×2台のほか、イーサーネット・スイッチが用意されているのがいかにも現代のPAシステムらしい

 

ESP福岡では照明専門のコースも設置。メインの照明コンソールとして直感的な操作性で定評があるというAVOLITES Arenaを採用している

ESP福岡では照明専門のコースも設置。メインの照明コンソールとして直感的な操作性で定評があるというAVOLITES Arenaを採用している

 

照明卓としては、MA LIGHTING GrandMA3も導入している

照明卓としては、MA LIGHTING GrandMA3も導入している

 

 

■関連リンク
専門学校ESPエンタテインメント福岡
https://www.esp.ac.jp/fukuoka/

■導入製品情報
JBL PROFESSIONAL VTX V Series
JBL PROFESSIONAL VTX M Series
JBL PROFESSIONAL SRX800 Passive Series

CROWN I-Tech 4x3500HD
CROWN I-Tech HD Series
CROWN XTi2 Series

SOUNDCRAFT GB8

LEXICON PRO PCM96

DIGICO SD7

MUTEC MC-2

AVOLITES Arena

 

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「JBL PROFESSIONAL SRX835P Powered & SRX828SP Powered」製品レビュー:AMCRON製のパワー・アンプを内蔵したアクティブ・スピーカー
https://rittor-music.jp/sound/productreview/2016/10/59188

 

サウンド&レコーディング・マガジン2019年4月号より転載
 

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