『Hold On, I’m Comin’』 Herbie Mann

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2013年11月21日

フルート・ファンクの世界: ハービー・マン編

今回の”裏”Recommend Disc

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『Hold On, I’m Comin’』 Herbie Mann

 

『ホールド・オン、アイム・カミン』ハービー・マン

 

Atlantic (1973)

 

Amasonで購入

正直言ってオレ的にはキング・カーティスのライヴ盤に匹敵するくらい名盤だと思っているこのアルバムがなぜもっと話題にならないのか分からないし、オリジナル盤が中古レコード屋で800円くらいでタタキ売られている理由も分からないし、知り合いにハービー・マン大好きとかいうと決まってちょっと出来の悪い奴、みたいな視線で見られる理由も分からないんですけど、じゃあハービー・マン聴いたことあんのかよと尋ねると、あの流行りもんにすぐ飛びついて音楽性コロコロ変える節操の無さがキライとか、あんなもんはジャズじゃないとか、上半身ハダカなのに薄毛で体毛密林な『Push Push』(71年)というアルバム・ジャケがキモイとかいう話になって、オイオイそんなこと言うけどチック・コリアだってロイ・エアーズだってラリー・コリエルだってミロスラフ・ヴィトウスだってハービー・マン・バンド出身だし、このアルバムの頃だってデヴィッド・ニューマン師匠が参加してるしド変態ギタリストのソニー・シャーロックなんてトンがった連中も従えてるし、オメエ等がキモイって言った『Push Push』なんてバーナード・パーディとかチャック・レイニーに混じって亡くなる直前のデュアン・オールマンがギター弾きまくってるんだぜ、さらに言えばAtlantic傘下にエンブリオ(Embryo)って自分のレーベル作らせてそこでも時代先取り的な作品とか新人発掘とかしてたんだぜ、まさに“マンズ・マンズ・ワールド”なんだぜ、そりゃ確かにオレだって大学生のときに『Push Push』のCD買ったときには家族にゲイって疑われそうだからそっと棚に隠したけどさ、ぜいぜい(息)、ということが何度かありました。

もう少しハービー・マンのイイところを熱弁したいところですが、文字数に限りがあるのでこのへんでアルバム紹介にまいります。1972年のライヴ盤。マン氏は『Memphis Underground』(69年)の大ヒットをうけてのジャズ・ファンク〜ジャズ・ロック路線真っ盛りな時期。「ヘ〜ビ〜、マーン!」と連呼し大観衆を煽りまくるMCに迎えられての1曲目は「Soul Beat Momma」。嗚呼ソウル・ビート・母ちゃん。ファンク・ビートの遥か斜め上をいくハード・ロック的な攻撃的ビートに乗って2本のフルートが絡み合いテーマ演奏するそのカッコ良さと言ったら!ブルースから祭り囃子まで直結するフルートのヒップさに血がたぎり、キメのブレイクでさらに悶絶し、テナーに持ち替えたニューマン師匠が男くさいソロを取るあたりで失禁する、この20数年何度それを繰り返したことか。B級でもニセモノでもゲテモノでも何でもいいから髪振り乱して踊りまくりたくなるこの“衝動的なダマされ感”こそハービー・マンの音楽の真髄ではないかと。同じフルートでもちょっとハスキーなマン氏の音色と端正で落ち着いたニューマン師の音色、個性が分かれてオモロいですね。B面のヒット曲2曲「Memphis Underground」と「Hold On, I’m Comin」も最高です。前者はソニー・シャーロックの夜を切り裂いてノイズをまき散らすみたいなブチ切れたギター・ソロが、後者はマン氏とドラムのエキサイティングな一騎打ちからニューマン師がテナー持って乱入するあたりの流れが、もう心のカウパー氏腺液ダダ漏れ状態なワケです。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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