『A Soul Experiment』Freddie Hubbard

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2012年11月22日

バーナード・パーディーのイイ仕事:フレディー・ハバード編

今回の”裏”Recommend Disc

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『A Soul Experiment』Freddie Hubbard

『ア・ソウル・エクスペリメント』フレディー・ハバード

Atlantic (1969)

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残念なジャケを見るとむしろ萌えてくるのはオレだけでしょうか。このジャケの内側には意外ととんでもないお宝がひそんでいるかも知れない、と思う瞬間は野暮ったい作業服姿の若い女性を目撃した時の感情に似てるような気がします。そんな1969年のフレディー・ハバード。Blue NoteとCTIのはざまにあってえらい地味な扱いのAtlantic時代の録音なうえに、フレディー史上最高にイナタいジャケのせいで、そこそこのフレディー・ファンでもシカト決め込んでる気がしてならない一枚が今日のリコメンです。プリティ先輩のほかにもジェリー・ジェモット(b)、エリック・ゲイル(g)ってあなどれないリズム隊で、この人も8ビート叩かせると最高なグラディ・テイトが半分ドラム担当。タイトル通り全編踊れる8ビートに挑んだ作品で、確かに全体的なイージー感、この時期のAtlanticにありがちなユルさは泣きながら認めざるを得ないんだけど、個々のグルーヴとかフレディーの鋭い切り込みなんかは決してイージーじゃないですよ。

フロントはこれが初レコーディングとなるカルロス・ガーネット(ts)が相方。フレディーさんは新人を見つけて来ては活躍の機会を与えてやるところがイイ人ですね。ひとつ前のアルバム『High Blues Pressure』(’68)ではウェルドン・アーヴィン(p)が初録音を体験してるし、その前の『Backlash』(’67)では新人ハロルド・アウズリー(ts)の「The Return Of The Prodigal Son」を取り上げてジャズ・ファンク〜ブーガルーのクラシックに変えちゃった。先日超久しぶりの来日で観たカルロス・ガーネットはパナマ出身らしく、いまだにカリブ式の英語発音でしたよ。ここでも初々しい緊張が感じられるワイルドなブロウを聴かせます。

冒頭の「Clap Your Hands」から待ちかねたようなプリティ先輩のドラムが炸裂します。とーれとーれぴーちぴーちな大きな鯛がまな板の上で暴れてるところを想像してもらえればそんな感じです。フレディーは高音域まで駆使して歌心あふれるソロを披露。ピアノのケニー・バロン作曲の「South Street Stroll」は手数の多いグラディ・テイトがシャープなビートを運ぶミッド・ファンク。ブルージーなプレイで魅せるフレディーのソロは構成がしっかりしているというか語り口がうまいというかとにかく聴かせます。艶やかなハリがある音色も素晴らしい。再びプリティ先輩が“音の肉体美”を見せつける「A Soul Experiment」はスリリングな高速ファンク。このマッチョな筋肉美はいつ聴いてもたまんねぇっす。

それにしてもコルトレーンの『Ascension』とかオーネットの『Free Jazz』みたいなアルバムに参加していたフレディーがよくグレずにここまでポップ化できましたね、なんて思うほど全編プリティなジャズ・ファンク作品。このあと『Red Clay』(’70, CTI)でヒットを飛ばしたフレディーはV.S.O.P.参加など輝かしい70年代に突入します。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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