『In The Right Place』 Dr. John

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2013年9月19日

Funky Funky New Orleans!:ドクター・ジョン編

今回の”裏”Recommend Disc

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『In The Right Place』 Dr. John

『イン・ザ・ライト・プレイス』ドクター・ジョン

Atco (1973)

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ライオンがゲロを吐いている。大蛇がワニを呑み込んでいる。巨大な蚊トンボが毛むくじゃらの尻にとまっている。スプーンと卵が手を取り合って走っている。という風邪ひいて高熱ある時にみる悪夢みたいな風景がジャケットに描かれているわけでありまして、それでこれが正しい場所(Right Place)だなんて言われても説得力無いっすよドクター、と言いたくなるアルバムが今日のニューオーリンズ・ファンクな一枚。書き出しに困ったときはジャケにツッコミ入れてみるという定石通りにはじめてみました。先週のアラン・トゥーサン+バックはミーターズ+サックスのゲイリー・ブラウンの流れで、そのメンツが参加したドクター・ジョンのアルバム。ミスター・ニューオーリンズによる極上のファンキィ名盤です。

ひねくれおじさん。諧謔とかシニカルさを含んだあの捩じれたような歌声を聴いてると、なんとなくいつもそんなイメージが浮かんでくるんだけど、もちろん実際はひねくれてもないしイヤミったらしい小言も言わないというのは分かってます。アラン・トゥーサン同様、10代でニューオーリンズのR&Bシーンで働きはじめ、セッション・ミュージシャン、プロデューサーなどを経験。最初はギタリストだったけど、指をケガして以降はピアノがメインに。ドラッグにハマって収監されたこともあるそうだけど、黒人文化のなかひとり白人がタメ張っていくのは相当たいへんだったに違いない。68年にはファースト・アルバム『Gris-Gris』をリリースしますが、この時期はヴードゥー教の世界を表現したサイケ・フォーク的な作風。本名マック・レベナックをやめてヴードゥーの呪術師ドクター・ジョンを名乗りはじめるのもこの頃。72年、ニューオーリンズR&Bのカヴァー集『Gumbo』で作風を変えたとたんブレイク。続く本作でアラン・トゥーサンをプロデュースに迎え、最新ニューオーリンズ・ファンク・サウンドでオリジナル曲を披露した結果は、シングル「Right Place Wrong Time」がチャート9位、アルバムも24位というスマッシュ・ヒットになりました。

その「Right Place Wrong Time」はドラム・ブレイクとホーン・リフからスタートする丁度いいBPMのファンク。トゥーサンの特徴的なピアノ、デヴィッド・スピノザのブルースなギター・ソロがパンチ効いてます。「Peace Brother Peace」もシンコペイトするリズムとホーンの掛け合いが楽しいグルーヴィなファンク。男くさいフレーズをまき散らすゲイリー・ブラウンのテナーが素敵です。ジガブーのドラムはやっぱ神レベルだなって思わせる「Life」、ダイナミックなパーティ・ファンク「Qualified」、そしてドクターのライヴで必ず演奏される名曲「Such A Night」も収録。こういう滋養たっぷりの名盤は、そこかしこから溢れ出すようなニューオーリンズ的なリズム、メロディ、哀愁、体臭、みたいなもんに温泉気分で浸かり込むのが最適な楽しみ方だと思われます。今月末の来日公演でもたっぷり味わえそうですよ。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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