『Black Caesar』O.S.T. (James Brown)

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2012年9月20日

芸術の秋のサントラ特集:ブラック・シーザー編

今回の”裏”Recommend Disc

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『 Black Caesar』O.S.T.  (James Brown)

『ブラック・シーザー』オリジナル・サウンド・トラック(ジェームズ・ブラウン)

Polydor (1973)

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有名盤はやりませんって先週言ったばかりなのに結構な有名盤出しちゃって赤面しながら書いております。でも日本でも指折りのJB博士、オーサカ=モノレールの中田氏にこのサントラのオモロいエピソードを聞いたので仕方ないのです。いちおう先週からジェームズつながりということでお許しください。

ブラックスプロイテーションの佳作に挙げられるこの映画、内容の方は前年に大ヒットした『ゴッドファーザー』(72年)の二匹目のドジョウ的なストーリーで、主人公であるマフィアのボスを黒人にしたクライム・ムーヴィー。アイザック・ヘイズの『シャフト』やカーティス・メイフィールドの『スーパーフライ』の成功を踏まえてソウル・ブラザーNo.1ことJBのところにサントラの話が来たものの、しかし御大は大してやる気無し。”ラブ・シーンには「Try Me」、カーチェイスには「Give It Up Turnit A Loose」とか昔の曲使っといたらええがな”なんて言ってたらしい。そこで当時JBズを仕切っていたフレッド・ウェズリーが本気出した。もうひとりのブレーンだったデヴィッド・マシューズのチカラを借りながら、ほとんどのスコアをJBに内緒で書き上げた。そのスコアが製作陣にすこぶる評判がいいのを知ったJBはようやくやる気になって”ワシに歌わさんかい”ってことになったそうです。

そのワシの歌はやっぱり上手いなあと感じるのがメイン・テーマの「Down And Out In New York City」。冒頭の歌い出しでいきなり転調するという異様な曲で、全編通してその異様なテンションが持続するんだけどなぜかカッコいいというこの時期のJBマジック炸裂なナンバー。リン・コリンズのヴォーカルをフィーチャーした「Mama Feelgood」はJB的なギター・カッティングとブ厚いホーン・リフが交差する最高のパワー・ファンク。おなじみのJBズに加え、一部にはランディ・ブレッカー(tp)、マーヴィン・スタム(tp)、ジョー・ファレル(ts)らNYのセッション・ミュージシャンが参加しているというのはこの辺りのナンバーかと。前半のホーン・アレンジと後半のフレッドのソロが最高なファスト・ファンク「Make It Good To Yourself」、ヒップホップのサンプリングに使われまくった「The Boss」、そして数々のインスト・ナンバーはJBズのオリジナル・アルバムにも引けを取らないクオリティ。オーボエ、バスーン、ウッドベースなど普段縁のない楽器を駆使したスコアにJBが興味を持って歌ったという「Mama’s Dead」は再びJBのヴォーカリストとしての賦質を感じさせるバラッド。全編通してフレッド・ウェズリーがただのトロンボーン吹きではないということがヒシと伝わる内容なのです。

で、映画が完成したあと、”この映画は暗黒街のゴッドファーザーの話ですけど、あなたはまさにソウル界のゴッドファーザーですね”と言われたJBがこの呼び名を大いに気に入って、以降”ゴッドファーザー・オブ・ソウル”を名乗るようになった、というのがエピソード。あんなにやる気無かったのに!

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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