『Zawinul』 Joe Zawinul

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2013年9月5日

Funky Funky New Orleans!:アール・タービントン編

今回の”裏”Recommend Disc

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『Zawinul』 Joe Zawinul

『ザヴィヌル』ジョー・ザヴィヌル

Atlantic (1971)

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“アール・タービントンは「In A Silent Way」のテーマを吹くために選ばれたんだ。彼が演奏してみせたものは途方もなく美しかった。その場にいた誰もがただただ呆然としていたよ。「In A Silent Way」がフル・ヴァージョンで演奏されたのはあれがはじめてだ。スタジオを去るものはみな特別な瞬間に立ち会ったことに気付いていた。あれから何年ものあいだ、我々はあの時のことを思い出しては特別なこと(something special)が起こったんだ、と確認しあったものだ”。

ジョー・ザヴィヌルのアルバム『Zawinul』はマイルスの『In A Silent Way』(Columbia, 1969)とウェザー・リポートをつなぐ結び目みたいなもんで、ウェイン・ショーター(sax)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)というWR設立メンバーはもちろんハービー・ハンコック(key)とかウディ・ショウ(tp)も参加した重要作なんだけど、ここでショーターをさしおいて大きくフィーチャーされているのがニューオーリンズ生まれのアール・タービントン(ss, as)であり、先週の弟ウィリー・ティーとともにザ・ゲイターズでファンク吹いてたそのひとであり、B.B.キングの片腕としてブルース界でもブイブイいわしたひとであり、でもホントは一時期前衛ジャズに傾倒するほどコルトレーンに影響を受けたジャズのひとであり、カサンドラ・ウィルソン(vo)がNO時代の恩師と呼ぶ教育者でもあるからして、NO特集なのにザヴィヌルなのは他にふさわしいアールのソロ作品が無いからで、今日はファンクでもNOでもないけど許してニャン、という状況なのです。ジャズ、R&B、ファンク、ブルース、とこれだけ幅広いフィールドの一線で活躍しておきながら若い時のリーダー作が無いというのも残念な話。

で、冒頭の引用は『Zawinul』セッションに参加していたビリー・ハート(ds)の言葉。確かに、ショーターから毒素を抜いたみたいな美しい音色としなやかな身体性と非凡なフレージング、そしてほんのわずかのNOっぽさを感じさせるソプラノです。アルバム冒頭の「Doctor Honoris Causa」なんかで聴かせるソロもうねりのような強い波動とブルースの血の濃さが印象に残る。しかしこのアルバムは静かに過激なことやってる問題作ですね。

なんでもアールいわく、このセッションのあとザヴィヌルは新しく作るバンドに参加してくれないか、と誘ってきたとのこと。結局この申し出は断ったそうだけど、もしかしたらウェザー・リポートはツイン・サックス体制になっていたか、もしくはショーターの代わりにアールが存在していたのかもしれない。NOの田舎くさいサックス吹きだと思ってナメてたらあかんで、という話です。そんなアールのファンキィ・サイドをもっと堪能したい人は、オルガン奏者リューベン・ウィルソンのBlue Note作『A Groovy Situation』(1971)あたり、ズル剥け加減が最高です。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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