『Wasted』 The Gaturs featuring Willie Tee

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2013年8月29日

Funky Funky New Orleans!: ザ・ゲイターズ編

今回の”裏”Recommend Disc

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『Wasted』 The Gaturs featuring Willie Tee

『ウェイステッド』ザ・ゲイターズ

Funky Delicacies (1994)

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“キャノンボール・アダレイを衝き動かし、ジョー・ザヴィヌルにファンクを教えた男”。今日の主役、ウィリー・ティーに興味を持ってもらうためにおおげさな釣り文句を考えてみましたので、ニューオーリンズ(NO)に興味ない人もぜひ軽い気持ちで釣られてみてくださいね。先週のワイルド・マグノリアスによるファンク名盤を音楽監督したキーボーディスト/シンガーであるウィルソン・タービントンことウィリー・ティー。彼が70年代に率いたバンド、ザ・ゲイターズの傑作シングルをまとめたこのCDを聴けば、キャノンボールも惚れたその天才的ジャズ・ファンク・センスが堪能できる、という仕組みです。

ネヴィル・ブラザーズ一家とはご近所だったというNOのキャリオペ地区に生まれたウィリーは、兄のアール(Sax)とともに早くから音楽に目覚め、50年代はジャズ、60年代に入ってR&Bな感じで活動を開始。60年代には数多くのシングルを発表するもいまいちブレイクはしなかったウィリーと彼のバンドのライヴを目撃したのがキャノンボールとナットのアダレイ兄弟。1968年の話。ファンクとジャズが自然に融合したウィリーの斬新さに感銘を受けたキャノン氏は自身のプロダクション仕事としてCapitolでインスト・アルバムを制作。結局このアルバムはお蔵入りとなるもキャ氏の片腕デヴィッド・アクセルロッドがプロデュースを担当したウィリーのヴォーカル・アルバム『I’m Only A Man』(Capitol, 1970)がリリースされました。

裏ミーターズ“なんて呼ぶ人もいるザ・ゲイターズの70年代初期録音にはそのウィリー絶頂期の真骨頂がたっぷり詰まっております。ヴォーカルは少なめでインスト中心。いわゆる豚骨ラーメン的なNOクサさ、みたいなものもあんまり感じません。むしろ70年代初頭とは思えない新しいハーモニー感とかキャッチーなメロの連続に驚くはず。バンド編成はチープだしCDの音質はモコモコだけど、それを補ってあまりあるファンキィ・ミュージックの快感みたいなモノが溢れてとまらない状態。オルガン・ファンク「Cold Bear」の突き抜けた爽快さ、キング・カーティスのアレそっくりな「Gatur Bait」、多幸感極まる「Nobody Can Be You」、ロッキン・ホーン・ファンク「Hunk Of Funk」、人生のテーマ曲にしたい名曲「Funky Funky Twist」とか、マジで聴かねば損な一生モノ。

当時のキャ氏のバンド・メンバーだったジョー・ザヴィヌルもウィリーの才能に打たれたひとり。やがてウィリーとマブダチ化したザヴィヌルは、ウェザー・リポートでのファンク表現に関してウィリーから多くの助言やアイディアを得ていたそうです。ウェザーの84年作『Domino Theory』収録のヴォーカル曲「Can It Be Done」はウィリーのペンによるもの。ザヴィヌルはハリケーン・カトリーナで家を失ったウィリーやNOの人々のために直後にチャリティー・コンサートを開催。もちろんウィリーもゲストとしてこのライヴに参加しました。カトリーナの悲劇から2年後の2007年9月11日、親友であった2人の音楽家は奇しくもまったく同じ日にこの世を去っています。

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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