『Tropidelico』 The Quantic Soul Orchestra

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2013年8月8日

現代ファンク最前線:The Quantic Soul Orchestra編

今回の”裏”Recommend Disc

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『Tropidelico』 The Quantic Soul Orchestra

『トロピデリコ』クアンティック・ソウル・オーケストラ

Tru Thoughts (2007)

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あなたの音楽を単語5つで表現すると?という質問に、ソウルフル、オルタナティヴ(非主流的)、イノベイティヴ(革新的)、エクスプロッシヴ(爆発的)、ホールサム(健全)、って答えてて、確かに健全ってのは実にクアンティックらしい、と笑顔になったのでした。というわけで今日はこんなに才能あってカッコ良くて健全な音楽を提供してくれる人は世界中でもこの人だけ。と思わせる才人クアンティック編。地域的にはオーストラリアから中南米へって感じです。

先週のザ・バンブースが所属するイギリスの優良レーベル、トゥルー・ソウツの看板アーティストといえば間違いなく彼クアンティック。本名ウィル・ホランドというイギリス人で、バリバリのヒップホップ世代なDJ、プロデューサー、レコード・コレクター。でありながらギター、鍵盤など楽器も操るミュージシャンでもあるという人物。クアンティックというのは数ある彼の名義のひとつで、打ち込み中心のファンク〜生音ブレイクビーツな音。2001年にこの名義でデビューするとディープ・ファンクとクラブ・ミュージックのあいだを埋める的な存在としてすぐにブレイクします。同時にスタートさせた彼の生ファンク・バンド・プロジェクトがクアンティック・ソウル・オーケストラで、「Super 8」とかのヒット・シングルは世界中のクラブでスピンされたもんです。

自分の作品以外でも往年のカワイコちゃんソウル・シンガーだったスパンキー・ウィルソンの復帰作に協力したり、女流ヴォーカリスト、アリス・ラッセルとユニットを組んだり、と八面六臂な活躍をみせていた彼が突如方向転換したのが2007年頃。レコード掘りをきっかけに中南米のラテン音楽にドハマりした彼は自身のアウトプットもガラリとラテン化、しまいには南米コロンビアに移住してスタジオまで作ってしまう本気度・ドアホウ偏執度を披露。以降オーセンティック・ラテンをファンク、レア・グルーヴ的なフィルターを通して現代化させたようなサウンドをコロンビアからせっせと届け、ワールド・ミュージック・ファンからも注目される存在になった、という実にニクめない才人なのです。

今日の一枚はそんなクアンティック・ソウル・オーケストラの(現在のところの)最終作で、ちょうどファンクからラテンへの転換期に制作されたアルバム。クンビア、デスカルガ、ソン・モントゥーノなどラテンの様式を借りたナンバーとソウル、ファンク的なナンバーが自然に共存していて、時には「Panama City」みたいにファンクなビートにデスカルガなウワものが乗ってるという現代版ハーレム・リヴァー・ドライヴなサウンドも。ラテンらしく豪奢なブラス・セクションがサウンドの主役で、相変わらずセンスがよくってソツがなくってピリリとスパイスが効いたクアンティックらしい健全ダンス・チューンが満載なのでした。ちなみにこのアルバムでドラムを叩いているイギリスの鬼才マルコム・カット率いる先鋭ファンク・バンド、ザ・ヘリオセントリクスの初来日公演は今週末ですよ。

ヘリオセントリクス来日情報はこちら

 

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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