『Heavy Axe』David Axelrod

塚本謙のFunk裏Recommend Disc by 塚本謙 2011年12月1日

「ファンタジー・レーベルのファンタジスタたち:デヴィッド・アクセルロッド編」

今回の”裏”Recommend Disc

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『Heavy Axe』David Axelrod

デヴィッド・アクセルロッド『ヘヴィー・アクス』

Fantasy (1974)

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ウディ・ハーマンに続いて再びオーケストラ物。こういうのを気にいる人が本当の音楽上級者で、リッチな耳を持ったプロデューサータイプだな、と我思う一枚です。90年頃に始まったレア・グルーヴやヒップホップ・サンプリング文化は、忘れ去られて過去の遺物と化していた音源やアーティストを掘り起こしたんだけど、このデヴィッド・アクセルロッドもまさにそういう文化に再発見されたひとり。キャノンボール・アダレイ後期のキャリアを支え続けた名プロデューサーだったりもします。

作曲家/アレンジャー/プロデューサーであるアクセルロッドが初めてレコードをプロデュースしたのは弱冠22歳のとき。クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ五重奏団にいたハロルド・ランドのアルバムです。まもなく”西海岸屈指のA&Rマン”と呼ばれるようになった彼は64年に大手Capitolレコードと契約、キャノンボール、ルー・ロウルズ(vo)などのアーティストをかかえるR&B部門のトップに就任。「Mercy, Mercy, Mercy」で有名なキャノンボールのアルバム『Live At “The Club”』を筆頭に数々のアルバムを制作、少し前に紹介したレッタ・ムブールのデビュー盤なんかもプロデュースしました。この頃のプロデュース作品はどれを聴いても程よいクロさ、程よいポップさ、程よい上品さでも実は演奏クオリティ鬼高し、な“正しい時代の正しいサウンド”が詰まってる感じ。68年には自身のファースト・アルバム『Song Of Innocence』をリリース。ポップス、ロック、ジャズ、R&B、ファンク、劇場音楽が融合したレア・グルーヴの古典的名作であり、このアルバムが気に入ったザ・ビートルズからファン・レターが送られた、なんて逸話も残っています。60年代から70年代前半を通じて彼はブラック・ミュージックが幅広いマーケットにポピュラリティーを得ていく普遍化の一端を担ったと言っても過言ではないかも。『Song Of Innocence』『Songs of Experience』(’69)『The Auction』(’72)あたりのアルバムは彼独特のグルーヴ哲学と演劇的なアレンジ構築力が発揮された傑作です。

で、通算6枚目にあたるのがこのアルバム。プロデュースは盟友キャノンボールにまかせて自身は編曲と指揮に専念。ジーン・アモンズ(ts)やジョージ・デューク(key)ら大物に加え、ブルース界からはジョニー・ギター・ワトソン(g)も参加しています。当時のスティーヴィー・ワンダーの作風を思わせるムーグ・シンセの使い方が特徴的で、そのスティーヴィーの「Don’t You Worry ‘Bout A Thing」のメロウなカヴァーもいい感じ。でもやっぱ聴き所はファンク系でしょう。キャノンボールのソロが炸裂する「Get Up Off Your Knees」とかパワフルなヴォーカル・ナンバー「You’re So Vain」、スリリングな「Mucho Chupar」で聴けるストリングス/ブラスのツボを心得たアレンジはポップ・オーケストレーションのお手本を見るようです。ラストの「Everything Counts」は数々の傑作サンプリングを生み出したチルアウトな男泣き名曲。ジョージ・デュークのエレピがたまらん。タイトルほど”ヘヴィ”じゃない極上のグルーヴが楽しめるセンスいいアルバム。

多くのアーティストと同じくディスコ期を過ぎて隠遁状態に入ったアクセルロッドでしたが、”再発見”後の93年には久々のアルバムも発表。ヒップホップ・シーンからの絶大なリスペクトも得てその後もコンスタントに新作をリリース、2005年にはBlue Noteと契約したそうな。つうわけで次回はキャノンボールのアレいってみようか!

塚本謙

CDリイシュー企画「Return Of Jazz Funk」主宰。モダン・ジャズ〜ジャズ・ファンク〜レア・グルーヴまでこよなく愛するレコード・コレクター。学生時代はベイシー・マナーのフルバンでサックス担当。



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