アレンジのお話 8

書き屋石川芳の徒然鳴るままに by 編集部 2012年1月31日

☆ 言葉の美しさ ☆

現在発売中の2月号には、私がアレンジを担当した「あすという日が」のソロスコアが掲載されています。
この曲の編曲依頼があり、届いた音源や紙資料の中から、まず最初に手にしたのは歌詞資料でした。

かつてコロムビアから『ピアノで奏でる日本の抒情歌』という全5巻100曲収録のCDを制作したことがあり(ピアニストの伊賀あゆみさんとは、その壮大 (^_^) なプロジェクトの中で出会いました)、50曲の編曲をまかされた私は、そのときも、1曲1曲歌詞を徹底的に読み込み、作者のこと、その曲が作られた時代背景や、その歌が載った絵本などを調べ、時間が取れれば舞台となった町を訪ねたりして、なかなか貴重な体験だったな~っと、懐かしく思い出します。

考えてみれば、子供の頃から、たとえばコンクールで演奏する曲を深く理解するために、その曲が流れる映画を観に行ったり、図書館に日参したり、ずっとずっと昔から、音楽作りのために、そういったことをしていたな~(ネットで情報収集なんていう時代ではなかったので)。

さて、「あすという日が」の歌詞を読みながら、3月の大きな震災のこと、幾つも年齢の違わない友の突然の訃報、”ついに嫁、もらうことにしました” という卒業生からの嬉しい報告など、ここ最近、自分の周辺に起きたさまざまなニュースを振り返り “生きる” ということを考えながら、ピアノに向かってみました。

アレンジの手法としては、あまり飾らず、音数も抑えめにした、ピアノソロの王道と言える内容です。

模範演奏の録音のときに、タッちゃんこと橘光一さんには、2通りの弾き方をしてもらいました。

ひとつは “クラス合唱” っぽい素朴な音色と呼吸、もうひとつは、熱くなり過ぎない想いを秘めた “つぶやき” のような湿度の高い歌い方。

CDに収められた演奏は後者です。

そして、私が最もこだわってタッちゃんにお願いしたのは、リハーサル記号「B」の3小節目の部分を “いっしようけんめい” と聴こえるように弾いてほしい、ということでした。
ピアニストの前で僭越ながら、私もピアノを弾いちゃったりして、 “こう表現してほしい” ということをできる限り伝えました。
本当に素敵な演奏に仕上げてくれたタッちゃんに感謝です。

美しい言葉の放つメッセージ力って、素晴らしいですね。

追伸 : この曲のアレンジは、”with LOVE” に由来する名前を持つ、”羽衣津愛” が担当しています。
 
  

石川芳

幼少よりピアノ、エレクトーンを学ぶ。ネム音楽院(現ヤマハ音楽院)卒業後、ヤマハの海外デモンストレーターとして、世界各国で演奏活動および現地スタッフの指導にあたる。"ディズニー・クラシカルコンサート"でアレンジャーとしてデビュー。曲集の編曲や音楽専門誌の執筆など、幅広いジャンルで活躍している。ピアノスタイルでは、創刊号から編曲を手がける。



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