憧れのミュージシャン 1人目

書き屋石川芳の徒然鳴るままに by 石川芳 2011年6月27日

★ 渡辺俊幸さん ★

NHK連続テレビ小説『おひさま』は、戦中戦後をたくましく生きてきた昭和ヒト桁生まれの両親には実感としてわかる事柄も多く登場するドラマのようですが、戦争を知らない昭和32年生まれの私にとっては、大好きな信州が舞台なことと、音楽が渡辺俊幸さんなので、朝の放送を見逃したときはお昼に……というくらい、楽しみにしている番組のひとつなんですよ。

ですから、このドラマのテーマソングを8月号に収録することが決まり、私に編曲依頼があったときは、とっても嬉しかったです!

渡辺俊幸さんの音楽との出会いは、実はずいぶん昔のこと。
『帰去来』『風見鶏』『私花集 (アンソロジィ)』と聞いたら、ピンッときた方もいるかもしれませんね。同世代の方々なら (^_^)

1970年代後半当時、私はさだまさしさんの歌、特に”日本語”の美しさに惹かれて、LPレコードは必ず聴いていました。
それらの作品の編曲やプロデュースをしていたのが渡辺俊幸さん。
また、味戸ケイコさんのふんわりした色調の絵がジャケットだったことも、お気に入りになった理由のひとつでした。

中でも、1977年のアルバム『風見鶏』に収録されていた「つゆのあとさき」と「思い出はゆりかご」という曲が大好きで、高音はとても出ないから、キーを下げて弾き語ったりしていました。しかし、その中に入っていた別の名曲について、その頃の私はまだ”素晴らしさ”に気づいていなかったのです。

LPレコードの中に入っていた解説書って、現在のCDのブックレットとは趣きも違っていましたよね。写真も大きいし、ページをめくるのではなく、デ~ンっと全部見渡せて満足 ! っという感覚がありました。
それはともかく、そこに”さだまさしさんのファンの方々へ”という渡辺さんのコメントがあって、それが、なかなか専門的な内容だったので、妙に記憶に残っていたのでした。
“日本では得られない乾いた弦の音を求めてロサンゼルスまで行った”とか、”バイオリン6人、ビオラ2人、チェロ2人……”とか。
その頃の私は、まだエレクトーン講師をしながら、時々、ホントに時々、作編曲もお手伝いするくらいで、専業の書き屋になるとは考えていなかったのですけれども、今思えば、何か刺激される部分があったのかもしれません。

時は経って、”聴くときのハカリ”が変わってきたあるとき、再びこのアルバムを引っぱり出して聴いていると、なんと素敵なチェロのイントロ!
それはサン=サーンスの「白鳥」の冒頭なのですが、歌のサビの部分を聴いて鳥肌が立つほどの感動 (納得)だったことを覚えています。
その曲の名は「セロ弾きのゴーシュ」。
渡辺さんの編曲が母体になっていて、弦編曲はジミー・ハスケルさん。

その後しばらくして、渡辺さんがアメリカへ渡り、 バークリー音楽院、ボストン・コンサーバトリーで作曲と指揮を勉強しているということを聞きました。
プロのミュージシャンなのに?
もっと高いところを目指して、さらに勉強したいことがあるってこと?

今度は感動を飛び越えて、尊敬してしまったのでした。

TVドラマに映画、アニメから純音楽まで、どんな音楽も書ける渡辺俊幸さんは、私にとって、憧れの作曲家のひとりです。
音楽大学での指導もされているんですよね。
こういった実体験にもとづいたお話をうかがったり、講議を受けることのできる学生さんは幸せですね。

そうそう「セロ弾きのゴーシュ」は、今でも聴くことができるようです。
皆さんもぜひ、感動を味わってみてください。

 

石川芳

幼少よりピアノ、エレクトーンを学ぶ。ネム音楽院(現ヤマハ音楽院)卒業後、ヤマハの海外デモンストレーターとして、世界各国で演奏活動および現地スタッフの指導にあたる。"ディズニー・クラシカルコンサート"でアレンジャーとしてデビュー。曲集の編曲や音楽専門誌の執筆など、幅広いジャンルで活躍している。ピアノスタイルでは、創刊号から編曲を手がける。



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