アレンジのお話 3

書き屋石川芳の徒然鳴るままに by 石川芳 2011年6月13日

☆ 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ ☆

映画『ブラック・スワン』ご覧になられた方も多いことと思います。6月号に掲載した「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」は、”バレエ大好き!”という人には、32回フェッテ(連続回転)で大きな盛り上がりをみせる場面としてお馴染みの曲ですが、”映画もバレエも観ていないよ~”という方には、初めて聴く曲かもしれないですね。

ところで、昨年12月号の”冬に輝くチャイコフスキー!”という特集は読んでいただけましたか? 私も、チャイコフスキーの超有名な曲から、チャイコ作品の中でもっとも知名度の低い作品まで、いろいろとご紹介しています。そこで、はみ出し情報のような形で、”バレエ音楽のCDを買うときには、全幕版、抜粋版、演奏会用組曲があるので購入の際は注意してね”ということを書きましたが、実は、オーケストラのスコアを購入する際にも、同じ注意が必要です。いわゆる”ポケットスコア”と呼ばれている小さなサイズのスコアは、”組曲版”(900円前後)がほとんどなんですね。

たとえば、私が「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」を編曲するための資料としてスコアを入手する場合、”組曲版”にはこの曲が含まれていないので、”全幕版”を探すことになります。たまたま『白鳥の湖』は以前から演奏する機会も多くあったので、チャイコフスキーの自筆稿に基づいて作られた全集版のコピーといわれている”カルマス版”を持っていました。ずっしり重たい、厚みのある本です。細かい脚注も書かれているのですが、すべてロシア語なので、音符以外はチンプンカンプン。そこで、少しでも自力で読みたいと思い、辞書を買う。ヒントも欲しくて解説書も手元に置く….、なぁんていうことをしていると、本棚はいつの間にか満タン状態になっているんですね。

そして、スコアを見ながらCDや古いレコードを聴き込んで、スコアに、いろいろな書き込みをしていきます。編集部からのオーダー、”美味しいとこ取りで、なるべくコンパクトに”という難題にアタマを抱えながらね (^_^)

ひと口に”美味しい”と言われても、バレエ好きの人々の味覚と、元来はポピュラー音楽寄りの嗜好だけどクラシック音楽体験もしたい!と考えている人の味覚は、大きく違うでしょうし、音楽の構成に対して厳格に考える方々もあるはず。長いクラシック曲をギュッと凝縮したアレンジをする場合は、なんといっても、楽曲分析も含め、このサイズ出しの作業をしているときが、私、一番”怖い顔”をしているかもしれません。

ちなみに、解説書は『作曲家別 名曲解説ライブラリー』(音楽之友社)のシリーズがおすすめです。また、ネット上でも、ものすごく詳しい研究を載せている方が多くあり、とても興味深く、勉強になりました。皆さんもぜひ、”白鳥の湖 原典”のキーワードで検索してみてください。気づけば夢中で読んでしまう、興味深いページに出会えますよ。

では。

石川芳

幼少よりピアノ、エレクトーンを学ぶ。ネム音楽院(現ヤマハ音楽院)卒業後、ヤマハの海外デモンストレーターとして、世界各国で演奏活動および現地スタッフの指導にあたる。"ディズニー・クラシカルコンサート"でアレンジャーとしてデビュー。曲集の編曲や音楽専門誌の執筆など、幅広いジャンルで活躍している。ピアノスタイルでは、創刊号から編曲を手がける。



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