KORG KROME
可搬性の良いコンパクトなボディに、3.8GBもの大容量PCMを搭載したミュージック・ワークステーション。圧倒的なクオリティのピアノや8段階ベロシティ・スイッチで抜群の表現力を誇るエレピ、ダイレクト音とアンビエント音をミックスできるドラムなど、さまざまな現場で活躍するサウンドを内蔵。また、16MIDIトラックと1マスター・トラックのシーケンサーを装備し、ワークステーションとしての基本性能も充実している。
高藤 エレピの音がズバ抜けていいですね。特にローズ系音色は、歪み感がとてもリアルです。ピアノはKRONOSと同クオリティのものが搭載されているそうですが、KRONOSのピアノは本当に周りで評判がいいんですよ。歌モノの音数が多いサウンドの中でも抜けるし、とにかく音がいい。今回の試奏でもその音の良さを感じることができました。また、一見するとピアノとエレピに特化しているようにも見えますが、ドラム音色のクオリティがかなり高くて驚きましたね。普段はソフト・シンセのドラム音源を使っていますが、特にバス・ドラムについてはハード音源の派手さにはかなわないのでいつもそれらを混ぜるんです。このKROMEの音はしっかりしているので、ぜひ自宅に置いてドラム音源としても使いたいと思いました。シンセ系も派手な音が多い上に、プリセット音色をレイヤーしたときの感触も、使い勝手が良さそうに思いました。
音色選択がしやすいタッチ・パネル
多くの要素を一度に表示できる大型のカラー液晶タッチ・パネル。パラメーターに直接触れてエディットしたり、スライダーやノブを使っての操作もできる。さらに、ピアノロール・エディターなどの便利機能も多数搭載。
高藤 タッチ・パネルはTRINITYのころから変わっていなくてなじみがあります。この画面1つでいろいろな階層に入れるのは便利ですよね。特に音色を選ぶ際、カテゴリー選択画面が出てくるのが分かりやすくていいんです。
音色に合わせたリズム再生
ドラム音源はKRONOSと同じ“Jazz Ambience Drums”を搭載。パネル上の“DRUM TRACK”ボタンを押すだけで、音色に適したドラム・キットによるループが再生される。プリセットだけでその数なんと600以上だ。
高藤 内蔵のリズム・パターンが良いので、ついついずっと弾いちゃいます。1日中遊んでいられそうです。例えばループっぽいパターンをKROMEで鳴らしながら、その上でセッションするのも新しい使い方かもしれないですね。
スタイリッシュで高級感ある外観
高級感を演出する意匠の違った2つのアルミ・パネルと、曲線を駆使した個性あふれるデザインが特徴的なKROME。重厚なフォルムを持ちながら、88鍵でも重さ14.7kg、61鍵モデルでは7.2kgとなっている。
高藤 デザインは主張し過ぎず、でも高級感があって家に置いたらお洒落ですね。アルミの削り出しっぽい感じとツルっとした部分のコンビネーション、そしてその黒い筐体にアクセントを与える白のLEDが何とも言えずいいですね。
Review for KROME by 増田隆宣
高品位なピアノとエレピ音色に加え
リアルで上質なドラムも内蔵
KROMEはカテゴリーとしてはシンセサイザーであり、さまざまな音色に加え、リズム(ドラム)音色&パターン、シーケンサーが搭載されたいわゆる“ミュージック・ワークステーション”(以下MWS)と呼ばれるものである。しかしそのくくりでとらえると、いささかの誤解が生じる。KROME、特にこのKROME-88は、MWSでありながらもその実はハイグレードな“ピアノ”なのである。
とにかくそのピアノ・サウンドがすごい。“3.8GBもの大容量PCM搭載”と謳っているが、おそらくはその大部分がアコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノに費やされているのだろう。アコピはあのコルグのフラッグシップ機KRONOSから選ばれたピアノ音源“German D Grand”(スタインウェイ・モデルDのサンプリング)を、88鍵全鍵ステレオ・サンプリング/ノンループ、ダンパー共鳴音までも搭載。一聴した限りでは全くのあのKRONOSアコピである。エレピはローズ(MARK I&V)、ダイノマイ(ローズの改造版)、そしてウーリッツァー200Aの3種類のPCMを搭載し、それぞれ8段階ベロシティ・スイッチで再現。これまでのPCMエレピは2段階ベロシティ・スイッチのものが多く、打鍵の強さによって弱く弾いた甘い音色と強く弾いた硬い音色しか出せず、結果としてかなり不自然に聴こえたりもしたが、これが8段階にもなっていると、タッチの強さで滑らかに音色が追従し、そこにキーオフ・ノイズやビンテージ・エフェクトなども加味され、本物のビンテージ・エレピのような表現力豊かなプレイができるのだ。
そしてもう1つのウリがドラム・サウンド。これまたKRONOSからの“Jazz Ambience Drums”を搭載、アンビエント音までも収録して大容量のPCMを贅沢に使い、リアルな響きを自由にコントロールできる。ドラム・サウンドはMWSとして使うには欠かせないものであり、それがリアルで上質なのはありがたいことだが、ことライブで使う分にはドラムうんぬんはあまり関係ないと思うかもしれない。ところがこのKROMEには“ドラム・トラック”という画期的な機能があり、これがまた結構使えるのだ。それぞれの音色にはあらかじめドラムのリズム・パターンもメモリーされていて、鍵盤すぐ上のボタンを押してから弾くと演奏と同時に適当なリズムがスタートする。一見大したことのない機能だが、そのリズムの音やグルーブが非常に心地良く、つい一緒に弾きたくなるのだ。さらにコンビネーション・モードでアルペジオも併用すると、本当にセッションしている気分になる。お遊びとしても楽しいが、これが実は作曲やアレンジのツールとしても大変重宝する。音色を切り替えてこのボタンを押して弾くだけで、曲のアイディアがどんどん出てきそうだ。リズム・パターンはプリセットで600以上、もちろん自分で作ることもできるし、アイディア次第でライブでもうまく使えば面白そうだ。
音楽制作にも活用できる
エフェクトやシーケンス機能を装備
もちろんピアノやドラム以外にも、コルグならではの芯のある使える音色を多数搭載。583マルチ・サンプル、2,080ドラム・サンプルものPCMデータをもとに、640プログラム、288コンビネーション、32ドラム・キットのプリロード音色、そしてこれらを残したまま、ユーザー・メモリーとして128プログラム、224コンビネーション、16ドラム・キットを保存可能。エフェクトは193種類をインサート、マスター、トータルとして使える。ボイス数はトータル120ボイス、諸々が必要十分なスペックだ。使い勝手はかつてのTRITONやM3とほぼ同じで、そういったコルグ使いの人なら即座に使いこなせるだろう。そのほか、16MIDIトラック+1マスター・トラックのシーケンサーを内蔵。USBによるPC接続、SDカード・スロットなど、各種データ管理も問題ない。
鍵盤は、このKROME-88では低域では重く高域では軽くなるアコピのタッチを再現したNH(ナチュラル・ウェイテッド・ハンマー・アクション)鍵盤を搭載。ハイクオリティなピアノ音色と相まって、弾き心地が良くずっと弾いていたくなる。しかも重量は14.7kgと、このグレードの鍵盤にしてはかなり軽くて驚きだ。良くも悪くも上質なピアノ・タッチなので、ピアノ鍵盤が得意でない人、オルガンやシンセ音メインの人は61鍵か73鍵を選ぶ方がさらに小型軽量で良いだろう。
以上のように、KROMEは上位機種KRONOSから使える音色を厳選して搭載し、シェイプアップした機種であると言える。KRONOSほどのハイスペックを求めず、自宅やライブで手軽にピアノ演奏したり、はたまたMWSとして多彩な音色やドラム、シーケンサーを駆使して音楽制作をするには最適なものである。何よりこの鍵盤でこの軽さでこのピアノ音色が、この価格帯で手に入れられるのは素晴らしい。
KORG
KROME
126,000円/61鍵、147,000円/73鍵、178,500円/88鍵
※表示している価格はニュース掲載時点のものです。また税込/税抜についてはメーカーの表示したものに準じて記載しています。
問い合わせ
コルグ お客様相談窓口
TEL: 0570-666-569 http://www.korg.com/jp/
●鍵盤:88鍵=NH(ナチュラル・ウェイテッド・ハンマー・アクション)鍵盤、73/61鍵=セミ・ウェイテッド鍵盤●オシレーター:OSC1(シングル・モード)、OSC1+2(ダブル・モード)●最大同時発音数:シングル・モード時=120ボイス、ダブル・モード時=60ボイス●PCMメモリー:3.8GB、583マルチサンプル、2,080ドラムサンプル●エフェクト:インサート5系統、マスター2系統、トータル・エフェクト1系統、エフェクト・タイプ193種●シーケンサー:16MIDIトラック+1マスター・トラック、128ソング●接続端子:USB、SDカード、MIDI(IN/OUT)、DAMPER、SWITCH、PEDAL、AUDIO OUTPUT(L/MONO、R)、DC IN●外形寸法:61鍵=1,027(W)×313(D)×93(H)mm、73鍵=1,191(W)×313(D)×93(H)mm、88鍵=1,448(W)×383(D)×131(H)mm●重量:61鍵=7.2kg、73鍵=8.2kg、88鍵=14.7kg