【ビンテージ・キーボード】PPG Wave2.2

ビンテージ・キーボード by 編集部 2011年3月28日

サウンド・クリエイターにとって
夢であったウェーブテーブル・シンセサイザー

1980年代は、急速にデジタル技術が発展し、シンセサイザーでもそれが普及し始めた時代だ。今回紹介するPPG Waveは、そんな時期に突如現れ、トーマス・ドルビーをはじめ当時の音楽シーンの先端をいく、多くのアーティストに愛用されたデジタル・シンセ黎明期の傑作機である。

アナログ・フィルターを搭載し
重厚な音作りができるWave2.2

ドイツのエンジニア、ウォルフガング・パームは1970年代後半タンジェリン・ドリームの機材のカスタマイズを手掛けたのが縁で、彼らのバックアップを受けてPPG社(Palm Products GmbH)を設立する。このころパームはアナログ・モジュラー・システムなどを手掛ける傍ら、全く新しいデジタル技術を用いたシンセサイザーの開発に着手していた。それが”ウェーブテーブル・シンセシス”である。

この音源方式は、さまざまなシェイプ=倍音構成を持つ1周期のデジタル波形を順番に並べて記録された”ウェーブテーブル”と呼ばれるメモリーから、読み出す波形の位置をコントロールして多彩なサウンド変化を作り出すというものだ。この音源が理想的に動作すれば、フィルターに頼らない倍音コントロールが可能であった。それゆえ初のウェーブテーブル・シンセとして登場したWave Computer 360は、あえてフィルターを搭載せずに発売された。

しかし、当時ビット数の高いAD/DAコンバーターは非常に高価。Waveの8ビット処理された波形は粗々しい上、多くのエイリアス・ノイズを含み波形の切り替え時にも細かくノイズが乗ってしまい、お世辞にもシンセサイザーとしての完成度は高いものではなかった。こうして、このウェーブテーブル・シンセにアナログ・フィルターとアナログVCAを搭載して完成したのが、1981年に発売開始されたPPG Wave2シリーズである。コンバーターは依然8ビットのままで、派手なエイリアス・ノイズとプチプチと切り替わるウェーブテーブルは相変わらずだったが、アナログ・フィルターのマイルドな質感によって非常に魅力のあるシンセサイザーとして生まれ変わっていた。

当初は各ボイスにつき1基のオシレーターの8ボイス・シンセだったWave2も1982年にはWave2.2に進化し(上写真)、64の波形を含んだウェーブテーブル・オシレーターを32種類内蔵、これらを各ボイスにつき2基使用して重厚な音作りが可能になった。

 

1980年代の香りが漂ってくる
秀逸なデジタル・サウンド

1984年には12ビット化され、波形のクオリティが向上し、MIDIも搭載したWave2.3にモデル・チェンジされた。これでWave2シリーズは、完成の域に達する。Wave2.3は、マルチティンバー音源としても使用可能で、8種類の異なるサウンドを同時に演奏することができた。PPG Wave2にはシーケンサーも組み込まれており、ノートの演奏だけではなく、ウェーブテーブルの切り替えをはじめさまざまな操作を時間軸に沿って記録し、それを再現する機能は後のシンセサイザーに多大な影響を与えていたと言えるだろう。

インターフェースも、感覚的なコントロールが行えるノブ、ロジカルな音作りができるディスプレイとボタンの両方を備えており、じっくり音を作り込むアーティストから、ライブでこの突飛なサウンドを劇的に変化させたいキーボーディストまで幅広く対応し、非常によく考えられている。鍵盤にはアフター・タッチも組み込まれていた。とにかくこのシンセにとっては、各種ノイズも音色の一部であり、これこそがPPG Wave2の魅力であると言ってしまってもいいだろう。病的なパッド・サウンドはまさに最強であり、一番Wave2らしいものだ。また、デジタルならではの堅めなシンセ・ベースとファットなアナログ・フィルターのコンビネーションによるサウンドも、いかにも1980年代の香りが漂ってくるほど秀逸である。

周辺機器が充実していたのもPPG Waveの大きな魅力だ。8ボイス分のサウンド・エンジンを搭載し、発音数を16ボイスに拡張できるEVU(Expander Voice Unit)、サンプリングも含めて独自のウェーブテーブルを生成できるWavetermA/B(Aは2.2対応の8ビット、Bは2.3対応の12ビット)、PPGボイス・カードをインストールして演奏することが可能な88鍵のキーボードPRKなど、当時のサウンド・クリエイターにとってはまさに夢のシステムであったに違いない。

 

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▲PPG Wave 2.2と、その周辺機器。6ボイスに拡張できるEVU(写真左上)、独自のウェーブテーブルを生成できるWaveterm(写真左下)、88鍵のキーボードPPG Processor Keyboard(写真右下)というラインナップだ。

 

Photo:Five G Music Technology

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