【ビンテージ・キーボード】モーグProdigy

ビンテージ・キーボード by 編集部 2010年9月24日

Minimoogの入門機としてヒットした
シンプル・オペレーションが魅力のモノ・シンセサイザー

モーグProdigyは、1979年に発売されたベーシックなモノフォニック・シンセサイザーである。 価格も低めに抑えられており、名機Minimoogの後継機ではなく、入門機として位置づけられた製品のようだ。 

突き刺さるような抜けの良い
オシレーター・シンク

基本構成は、32鍵のキーボードにシンク可能な2基のVCO、24dBローパス・フィルター、2基のADSタイプ・エンベロープ、1基のLFOという非常にオーソドックスなもので、例えばMicromoogのような複雑なモジュレーション・ルーティングもノイズ・ジェネレーターも存在しなかった。
初期のモデルには、CV/GATE入出力やオーディオ入力も用意されておらず、オーディオ出力端子が1つだけ、と徹底してコスト・ダウンが図られていた。内部もフロント・パネル裏側の1枚の基板に音源回路からコントロール・ノブ/スイッチがすべてマウントされた構造で、軽量化に貢献すると共に非常に良好な整備性を実現していた。

これだけでは何の変哲もないただのモノ・シンセではあるが、楽器というものはスペックだけで判断できないところが面白いところ。実際に音を出してみると24dB/Octのトランジスター・ラダー式ローパス・フィルターはモーグの純血種であることを強烈に主張する。そして何よりProdigyの最大の魅力は、突き刺さるような抜けの良いオシレーター・シンクであろう。
シンク時にはVCO2のピッチを変えることでダイナミックなサウンド変化を生成できる。多くのシンセは、このシンク時のVCO2のピッチをVCF用のエンベロープで同時にコントロールする設計になっているが、Prodigyはこれとは異なる特徴的なルーティングとなっている。Prodigyはオシレーター・シンク・スイッチをONにすると、ピッチ・ベンド・ホイールからVCO1へのルーティングが切り離され、VCO2だけをコントロールすることになるのだ。これにより倍音の発生を、演奏中にワウ・ペダルのように自由にコントロールすることで表情豊かな演奏が可能になった。

モーグらしいシンプルな
リード/ベース・サウンド

こうして魅力的な価格と印象的なサウンド、迷わないシンプルなオペレーション、小脇に抱えて運ぶことのできる軽量設計という徹底してライブ演奏時のプレイヤー・サイドに立った製品として人気を博したProdigyは、1984年ころまでに延べ1万台以上が生産されるヒット作となった。またある時期から内部の回路にマイナー・チェンジが行われており、フィルターやオシレーターの安定性が改善されている。また、終盤のモデルにはCV/GATEの入出力やオーディオ入力など各種インターフェースが増設されているため、MIDI→CVコンバーターでコントロールしたい人はこの後期モデルを捜すとよいだろう。

ライブでソロを取るリード・シンセとしては申し分ないが、シンセ・ベースとなると本体だけではもの足りなく、もう1オクターブ下が欲しくなるのが唯一残念な点だ。MIDI→CVコンバーターでコントロールできれば問題ないが、インターフェースのないモデルでもCV/GATE入力やオクターブ切り替えスイッチを増設したりすることは比較的容易なので、腕に覚えがあれば改造してみるのも面白いかもしれない。モジュラー・シンセのように複雑な音作りには向かないが、モーグらしいシンプルなリード/ベース・サウンドが必要なのであれば、Prodigyは非常に適したシンセサイザーと言えるだろう。

Photo:Five G Music Technology

 

 

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