【ビンテージ・キーボード】モーグMicromoog、Multimoog

ビンテージ・キーボード by 編集部 2010年4月5日

モーグのモノ・シンセサイザーの第2世代となる
ベース/リード/SEに使える2機種

1970〜80年代、ほかの多くのシンセ・メーカーがそうであったように、モーグ・ミュージック社も経営面では順風満帆というわけにはいなかった。実際1977年にはモーグ博士自身も会社からは身を引いており、このためモーグのビンテージ・シンセサイザーの中で博士本人がかかわっている製品というのは、実は意外にもそれほど多くはないのだ。今回紹介するシンセサイザーはモーグのモノフォニック・シンセサイザーとしては第2世代に相当する製品であり、多少なりとも博士がかかわった製品である。

連続可変の波形コントロールを搭載したMicromoog

Minimoogの成功を受けて、1975年に発売されたMicromoog(写真①)は、Minimoog開発時のエンジニアでもあったジム・スコットにより設計された1VCOのモノ・シンセである。2.5オクターブの鍵盤が収まるプラスティックの一体整形によるコンパクトな筐体、ボリュームポットやスイッチを直接マウントしてパネル裏に収めた1枚のメイン基板などは現在のキーボードとそれほど変わらない構造だ。この大量生産に適した設計により大幅なコスト・ダウンを実現し、メンテナンスも非常に楽になったのは言うまでもないだろう。

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 写真① 1VCO仕様のモノ・シンセサイザー、Micromoogは1975年に発表された。フィルターはトランジスター・ラダー・タイプの4ポールVCFを搭載している。

しかし、Micromoogはモーグ博士によるトランジスター・ラダータイプの4ポールVCFを採用してはいるものの、単純にMinimoogの廉価版とは分類できない独自の特徴を多数持っていた。サブ・オシレーター付きのオシレーター・セクションは波形選択スイッチの代わりに連続可変する波形コントロールを持ち、ノコギリ派から矩形波、そのままパルス幅の異なるパルス波へ滑らかに変化する斬新なものだった。しかもこの波形はLFOなどによってモジュレーションすることも可能であった。フィルターはVCOによるFMが設定でき、Minimoog同様に過激なサウンド・メイキングも行える。さらにフィルター・モード・スイッチを”TONE”に設定しないとレゾナンスが発振しない設計はライブなどでの使い勝手を考えたものである。

VCF/VCA用にそれぞれ用意された2基のエンベロープは、アタックとリリースしか持たないシンプルなものではあるが、サステインを個別にON/OFFできるスイッチを備えており意外にも不自由さを感じさせない。モジュレーション・セクションはLFOやサンプル&ホールドやノイズなどの各種ソースを選び、VCOのピッチや波形、VCFなどからモジュレーション先を選択する、非常に明快で自由度の高い設計だ。またVCOの出力をオフにできたり、キーボードから切り離してドローンの作成に使えたり、VCA自体をバイパスできたりとSEなどの用途にも考えられたパラメーターも用意されている。

 

オシレーター・シンクも可能なMultimoog

1978年に発表されたMultimoog(写真②)は、Micromoogの機能拡張版として設計された製品であり、Micromoogのパラメーターはすべて継承しつつ新たに各種機能が追加されている。オシレーターは2VCOとなり、オシレーター・シンクも可能となった。ただし、オクターブ・コントロールは両VCO共通であり、インターバル・ノブによって最大上下5度までしか間隔を空けることができない。Multimoog最大の特徴はアフター・タッチを含む豊富なルーティングだろう。3.5オクターブの鍵盤には”フォース”センサーが仕込まれており、鍵盤を押し込む強さでピッチやVCF、モジュレーションのコントロールを行うことが可能だ。またマルチトリガーも用意され、より表現の幅が広がった。CVやトリガー、オーディオなどの外部入出力も充実しており、実験的な音作りにも十分対応することができる。

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写真② 1978年に発表されたMultimoogは、2VCOとなり、オシレーター・シンクが可能となった。Micromoogと同じくピッチ・ベンドにリボン・コントローラーを採用。

両機種とも、ピッチ・ベンドにはホイールではなくリボン・コントローラーが採用された。これはMinimoogのオプションとしてもラインナップしていたもので、標準装備されたのはMicromoogが最初である。ホイールとは異なり指を触れた位置にダイレクトにピッチがジャンプする構造のため、リボン・コントローラーならではのトリッキーな表現も可能になった。各種スイッチはMinimoogのロッカータイプではなく一般的なスライド・スイッチに白い樹脂製のノブを取り付けたものだが、外れて紛失し易いのがやや難か。また、CVは一般的な1V/Octとは若干異なる0.98V/Octとして設計されているため、MIDI-CVコンバーター使用時は注意が必要である。

サウンドはオシレーターをはじめ、各部の設計の違いからかMinimoogとは大きく異なる印象だ。全体的によりあっさりしたキャラクターを持ち、各種インターフェースの充実ぶりと相まってリードでの使用により適したサウンドに思える。やや独特なパネル・レイアウトのため若干の慣れを必要とするが、ベース/リード/SEと柔軟に対応でき、表情豊かな演奏ができるライブ向けの楽器と言えるだろう。

(Photo:Five G Technology)

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