【新人編集者I子の鍵盤名盤レビュー】vol.10 ハービー・ハンコック『フューチャー・ショック』

新人編集者I子の鍵盤名盤レビュー by キーボード・マガジン編集部 2020年3月18日

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Album Profile

1987年に発売された、ハービー・ハンコックの35枚目のアルバム。ヒップホップを取り込んだ作風が特徴的な1枚である。ビル・ラズウェルがプロデュースを手掛けた「ロックイット」は1984年に行われた第26回グラミー賞で最優秀R&Bインストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞。DJのスクラッチ音、シンセ・サウンド、アコースティック・ピアノ、ベースなど、電子楽器と生楽器が絶妙に織り交ぜられた7曲が収録されている。

 

Disc Review

本作は冒頭からグランド・ミキサーDXTによるスクラッチ音が鳴り響く「ロックイット」で始まる。現代では珍しくないスクラッチ音だが、1984年のキーボード・マガジンにて“なんとレコード・プレイヤーのターンテーブルを使った音!”という表現がされ、シンセで再現しようという解説記事が掲載されていたことからも当時の衝撃の大きさが伺える。さらに、ローズChromaのシンプルながらクセになるフレーズと、間に挟まれたゼンハイザーのVocoderサウンドが強い印象を与える。

本作でハンコックは、ローズChromaのほか、フェアライトCMIやモーグMinimoogなどシンセサイザーの名機でインパクトのあるサウンドを響かせる。それに加え、ファンキーなクラビ、芯のあるアコピでシンセ・サウンドを引き立てる。ヒップホップのトラックはジャズをサンプリングして生まれることも多く、関係性の深いジャンル同士である。その中でも、ジャズ・スタンダードを数多く生み出したハンコックがヒップホップの黎明期にビル・ラズウェルと組んでこの作品を生み出したことは音楽シーン、とりわけヒップホップの発展における大きな功績と言えるだろう。

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