ボーカルとのデュオにおけるバッキングのアイディア/MI Japan ギター・クリニック

MI JAPANギター・クリニック by 柴田雅也 2013年4月15日

読者の皆さま,初めまして,MI JAPAN名古屋校GIT科講師の柴田雅也です。MIでは,音楽理論〜アンサンブルまで,ほとんどの授業を担当しております。特に僕自身大好きなブルースの授業を多く担当しておりまして,LPW(アンサンブル)やエレクティブ(選択授業)で生徒たちと楽しく,時に厳しくブルージィなレッスンをしております。
今回のセミナーはその大好きなBLUESではなく(笑),“バッキング”についてレッスンをしていこうと思います。バッキングと言ってもさまざまなシチュエーションが考えられますが,今回は“ボーカルとのデュオにおけるバッキング”に有効なアイディアと,その練習方法について紹介していこうと思います。

最近ではカフェや居酒屋,商業施設などの場所で演奏する機会も増えてきていると思います。読者の方の中にも買い物で立ち寄ったショッピングセンターなどでアコースティックのライブを見たり聴いたりした経験があるかと思います。今回のレッスンはそんな時にもきっと役立つと思います。僕自身“砂の女と箱男”(通称:砂箱)という,風変わりな名前のアコースティック・ユニットでライブハウスやカフェなどで活動しております。どこかでお会いする機会がありましたら,ぜひ気軽にお声をかけていただければ幸いです。

歌もののバッキングとは

まず,“歌もののバッキング”について考えていきましょう。インストなどのテーマ・メロディやソロ,アドリブを弾くのとは別で,歌ものの場合は曲中のほとんどはバッキングをしているはずです。仮に5分の曲があったとすると,ギター・ソロが占める割合,バッキングが占める割合はどれくらいでしょうか?MIの生徒や一般の方々の家での練習内容を聞くと,シングル・ノートを弾いている割合が多い傾向があります。それはもちろん大切なことです。確かに素晴らしいギター・ソロやアドリブを弾きたいのはわかりますが(もちろん僕もそうです……),素晴らしいギター・ソロやアドリブは素晴らしいバッキングが演奏できたうえで成り立つことを忘れないで下さい。

シングル・ノートの練習は過去のこのコーナーでMI JAPANの素晴らしい講師の方々がネタの数々を解説されていますので,そちらを参考にしていただくとして,僕はバッキングについてのみ解説をしていきます。

ダイナミクス

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譜例1をご覧下さい。ただCを弾くだけです(笑)。まずはただ単純に同じボリューム(ダイナミクスをつけずに)で弾いてみます。何も変化がないと思います(これはこれで安定感があるとも言えます)。

次に2小節かけてクレッシェンド(徐々にボリュームを上げていき)して,2小節かけてデクレッシェンド(徐々にボリュームを下げて)していきます。すると同じコード,一定のリズムなのに徐々に盛り上がっていく(解放していく)感じ,徐々に落ち着いていく(収縮していく)感じが出ると思います。

ボリューム・ペダルなどを使っても同様のことができますが,ここではピッキング・コントロールのみでダイナミクスをつける練習をお薦めします。

注意点はピッキングを強くしていくとリズムが走りがち(前のめり)になり,弱くしていくとモタる(遅れる)傾向があること。メトロノームなどを使って,一定のリズムで弾けるように練習して下さい。

また基本はゆったりめのテンポ,シンプルなリズムで練習してほしいと思います(例:テンポ=60,8分音符で)が,必要に応じてさまざまなテンポやリズム・パターンで練習することをお薦めします。

雰囲気を作る,空気感を出す

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譜例2をご覧下さい。16小節(Aセクション,Bセクション)のコード進行を演奏してみましょう。まずAセクションのpiano(p)の部分からの説明です。強弱記号のpは弱く,柔らかく演奏します。スペースを十分に取り,アルペジオで弾くことでサウンドに余計な厚みを加えないようにします。状況に応じて指弾きもいいと思います。Bセクションに入る流れを作るため,8小節目(7小節目からでもいいです。この辺は状況に応じて……)からクレッシェンドしていきます。

そして次のBセクションです。folte(f)は“強く”を意味します。Aセクションとはがらりと雰囲気を変えるので,しっかりストロークをしてリズム的なスペースを埋めていきましょう。8分音符を中心に16分音符を混ぜたりコードの内声やトップノートを動かしたりしてコードに色づけしていくのも有効な手段です。

pianoやfolteとひと言で言っても“この音量がピアノで,この音量がフォルテ”という決まりはありません。全体の曲の雰囲気や空気感を自分自身で作り上げていくことが重要になってきます。またAセクションが譜面上ずっとpianoになっていますが,そのpianoの中 で微妙な揺らぎをつけていくのもおもしろいでしょう(アルペジオの中に和音を混ぜたり,ベースラインを付けたりなど)。

ギター1本のバッキングで曲が“生きている”ように感じられるまで練習してみて下さい。

総括

最後に僕がやっているアコースティック・ユニット“砂の女と箱男”の「震える鱗」というバラードのコードを譜例3で紹介します。あえて譜面には強弱記号やリズム・パターンなどを書きませんでしたが,動画を参考に雰囲気を掴んで下さい。

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譜例1,2はギターのみですが,人と一緒にやるとなると,お互いの呼吸やイメージを合わせないといけないので,途端に難しくなります。音を一緒に奏でる人が増えれば増えるほどさらに難しくなっていきます(例えばボーカルとギターとベースがバッチリなのにドラムのフィールが違うと曲がギクシャクしますよね)。

譜面だけでは細かいダイナミクスや曲が持つ雰囲気,バンド・メンバー同士の呼吸は絶対につかみとることはできません。CDなどの音源をよく聴いたり,ライブに足を運んで“生きている音”から,それらを感じてみて下さい。

そして演奏時のポイントは自分の音だけでなく,相手の音を聴くこと。聴こえてるではなく,聴くという意識を強く持ってしっかり聴くことです。自分のプレイに集中するのみではなく,相手のイメージする雰囲気や曲,歌詞が持つ世界観などをしっかりと共有する大きな心を持ってギターを弾いて下さい。

歌もののバッキングは“愛”です(笑)。それが一番大切なのです。

 

木下昭仁

中学3 年の時にディープ・パープルの「ファイアボール」にやられてギターを始める。札幌在住で81 年よりメタル・バンド“SABERTIGER” で活動中。若手バンドのプロデュース,レコーディング・エンジニアなどもこなしつつ,MI 札幌校でもメタルの布教に励んでいるらしい!

本記事について

本記事は『ギター・マガジン2013年2月号』掲載のページを転載したものです。

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