手島いさむ meets TASCAM DP-008 – 自宅での省スペース化はもちろん、どこでも気軽に持ち運べる機動力の高さが魅力の8トラック・レコーダー

特集 by 編集部 2012年8月10日

先月号のリニアPCMレコーダー,DR-40に引き続きタスカムの注目ギア,POCKETSTUDIO DP-008をチェックした。同機はその名が示すように,ギター・ケースのポケットにスッポリと入ってしまうコンパクト・サイズの8トラック・レコーダー。自宅での省スペース化はもちろん,メンバー宅やリハーサル・スタジオなどに気軽に持ち運べる機動力の高さは特筆モノだ。もちろんカセットMTR時代から同社が培ってきた高いノウハウが,この小さなボディにしっかりと受け継がれている。チェックしてくれるのは先月同様に我らがテッシ−こと手島いさむだ!

DP-008とは?

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いくらデジタル機器が進化しようと,決して廃れないのが”アナログ感覚”だ。8トラックのデジタル・マルチ・トラック・レコーダー(MTR)である本機,DP-008も,デジタルの利便性は確保しつつアナログ感覚を前面に打ち出したモデルと言えるだろう。その象徴が,パネルにずらりと並んだレベル/パン/リバーブなど各種ツマミだ。昨今の機器なら,これらは画面上にパラメーター表示となるが,この実際に手で動かす,全体がひと目で把握できるという昔ながらの方法もなかなか見過ごせない。ちょっとした音量の差や定位の違いは,最終的には音楽の表情を大きく左右するもの。それらを直感的に,かつ体感的に操作できるところが,本機の長所と言えるだろう。また,昨今人気の画面集約型だと,ひとつひとつの設定や調整にいちいちページを行き来したりしなくてはいけないことが多い。本機ならそのストレスと無縁なのも,特筆しておきたいポイントだ。

一方,本機はあくまでもMTRだということも,あえて触れておきたい。モデリング・アンプやエフェクト,ヴァーチャル・トラックといった機能はなく,録音~ミックス~マスタリングといった作業に絞り込んだモデルと言える(EQとリバーブは搭載)。ただ,音作り(機材選択)も音楽制作の一部であるし,複数のトラックをまとめるバウンス録音も,デジタルの利点を発揮し劣化なしで簡単に行なえる。よほどパートが多くなければ,8トラックで十分とも言えるだろう。

機能面のトピックも紹介しておくと,まずCDと同クオリティの44.1kHz/16bitで,2トラック同時録音が可能。ギターは標準ジャックで直接接続ができるうえ,本体にステレオ・マイクを搭載しているので,アコギの録音も簡単に行なえる。また,ファンタム電源対応のXLRマイク入力もあるので,ボーカル録りやアンプのマイク録りなども可能だ。もちろんデジタル・レコーダーとしての利便性も十分備えており,録音トラックのコピー/ムーブ/カットなど多彩な編集機能も充実。ここは,どのような作業になるのかを画面にグラフィック表示してくれるので,慣れていない人でも簡単に操作できるはず。PCともUSB接続で連携し,ミックス音源やマスタリング音源はもちろん,トラックごとのデータをやりとりすることもできる。可搬性にも優れたサイズで,カセット4トラックに親しんだお父さん世代から,マルチ・トラック・レコーディング・ビギナーまで,幅広い層にアピールする1台だ。

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▲USBでPCと接続し,WAVファイルのやり取りが可能。任意のトラックを選択して送受信することもできる。 ▲ホール2種,ルーム,スタジオ,プレート2種のリバーブを内蔵。残響タイムやレベルも各々設定可能だ。 ▲編集機能も充実。グラフィック表示で,ペーストとインサートの違いなどもバッチリ確認できる。

TOP

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Aインプット/マスター
入力レベルもツマミで調整。過入力の場合は赤いLEDが点灯するので,適正な音量を設定しやすい。また,内蔵マイクは2種,フォーン/XLR入力は3種のレベル・フォーマットを選べ,楽器の出力に合わせて選択できる。

Bメイン画面
各種設定やソング管理,トラックのエディットなど様々な情報が見やすく表示されるディスプレイ。リバーブやEQはグラフィック表示されるので,設定も簡単だ。ページ移動や決定は4つの黒いボタンで行なう。

Cホイール・ジョグ
各種項目の選択やトラックの早送り/巻き戻しなどはこのホイール・ジョグで行なう。早送り/巻き戻しは,1秒を30分割したフレーム単位で行なえるので,確実なエディットが可能だ。

Dトラック・セクション
パッと見複雑なツマミ類だが,要はレベル/パン/リバーブが各トラックごとに配置されているだけ。一番下のRECスイッチをオンにすることで,そのトラックに録音される。

Eコントロール
録音や再生,停止,曲頭への巻き戻しなどの操作はここで。ラジカセライクでわかりやすいが,録音スタートを[録音+再生]ボタン両押しで行なうのも,懐かしい仕様だ。

FRONT

 

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内蔵マイク
本体前面にはステレオのコンデンサー・マイクを内蔵。レベルもハイとローで選べるので,アコギ録音なども簡単。

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RIGHT SIDE

 

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USB,SD/SHCDカード
本体右側面にはSDカード(SDHCカードも対応)のスロットと,USBのポートが設けられている。ACアダプター対応だが,単3電池4本で5時間以上の駆動も可能。

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REAR

 

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入力端子
入力はフォーン×2とXLR×2。フォーン入力Aはギターの直接接続ができ,XLRはファンタム電源供給も可能だ。

Tessy’s Impression

内蔵マイクを効果的に使おう

まず何と言っても,このコンパクトなサイズがいいですね。僕らみたいなミュージシャンは,ツアー先に持って行くと考えたら1gでも軽いほうがうれしいんですよ。とはいえ,壊れやすくては困る。そういう意味でもこの軽さで頑丈な感じはポイント高いです。また,僕はギター・セミナーなどをやる機会があるんだけど,そういう時も便利。これにカラオケ入れておいて,手元で曲をどんどん出していきながらギターを弾いていけばいいわけですから。もちろん卓上というか,自宅の居間に置いてあるのもいいよね。内蔵マイクが付いているわけだし,ちょっと思いついた時にアコギを録ったり作ったオケに合わせて歌メロ付けたりすることも簡単にできちゃう。操作はいたって簡単ですね。僕らみたいにカセットの4トラックMTRから入った世代なら,各トラックごとに目で見て直感的に操作できるツマミ・タイプはうれしい。それでいてレコーダーとしての精度はすごくいい。細かいフレーム単位でちゃんと出てくれるんだもん。音質に関してはさすがですよ。先月も言ったけど,そりゃあタスカムですから信頼性高いです。

ギタリストへのMTRの薦め

エレキ・ギターに関しては,内蔵エフェクトがリバーブだけなんだね。つまり音は自分でアンプ・シミュレーターとかマルチ・エフェクターなんかを使ってうまいこと考えるわけ。リズムマシンみたいな機能も付いていない。でもね,自動演奏とかないからこそ,考えないと意味がないんですよ。もちろん,現代の機種だしハードディスク・レコーダーだから,アンドゥ,リドゥ機能は付いているんだけど,若いギタリストには,あえて失敗したら最初からやり直し!って気持ちを持って録音してほしいですね。そうやってうまくなるんですから。ギター・トラックのレコーディングって,ロールプレイング・ゲームとはちょっと違うんです。レース・ゲームに近いんですよ。ちょっとでもミスったらコンマ何秒損するわけだから……楽器ってそんなもんですよ。ずーっと集中して1曲を弾き切る。集中力が何分持つかというのは,クラシックだろうがロックだろうが,演奏家には大きくて永遠の課題なのでね。だって3時間もたないもの(笑)。ユニコーンはMCの時にダラダラやってるでしょ? あれはなぜかというと,抜いてるんですよ(笑)。若い時は平気で30分とか集中できてたけど,今はもう3分とか4分集中したら疲れるんで(笑)。

“考えて,練習して,録音する”ことの重要性

僕らユニコーンでは”残る音楽”って呼んでいるんですけど,”考えて,練習して,録音する”……ただ,それだけの話なんです。それがのちのち残る音楽なんですよ。最新のテクノロジーを使っても自動演奏でカチャカチャやったものはね……残らない。ビートルズもそうだけど,これはずっと変わってないんです。ユニコーンの1枚目や2枚目を聴いても,ちょっとカッコつけてるけど(笑),生演奏……生きたものなので,おかしくないと思えるもん。3枚目の『服部』以降に出したやつは,今聴いても古くない。それはなぜかと言うと,”考えて,練習して,録音してるから”ですよ。そういった意味で若い人に伝えたいのはね,この”MTRってモノ”だけを持ってても意味はないよと(笑)。要は使い方なんです。ちゃんと目的意識を持って使ってほしいですね。だって,この性能を得るには,僕らの時代なら何十万円もかけないといけなかったんだから。

最後に

ルックスの大人な感じ,愛想のないというか,いい意味で可愛さのないLED画面といい,やっぱりプロ向きというか,業務用な感じ。可愛さはないけど, オッサンにはいいですよね(笑)。

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▲愛器,ヤマハのパシフィカを手にDP-008に挑む我らがテッシー。

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TASCAM DP-008

  • 価格:オープンプライス(市場実勢価格:30,000円前後)
  • 記録メディア:SDカード(512MB~2GB),SDHCカード(4GB~32GB)
  • 録音/再生チャンネル数:2(最大同時録音)/8(最大同時再生)
  • サンプリング周波数:44.1kHz
  • 量子化ビット数:16
  • 入力端子:XLR×2,標準フォン×2
  • 出力端子:RCAライン・アウト,ステレオ・ミニ・フォン,フット・スイッチ,USB2.0/USB1.1
  • USB接続コンピュータ:Windows XP,Windows Vista,Windows 7,Mac OS 10.2以上
  • 電源:単三乾電池4本,ACアダプター(別売)
  • 外形寸法:221(W)×36(H)×126.5(D)mm
  • 重量:610g(電池含まず)

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製品に関するお問い合わせは, タスカム・カスタマー・サポートまで
TEL:0120-152-854
http://tascam.jp/

てしま・いさむ

1963年8月27日生まれ。86年に広島でユニコーンを結成し,翌年『BOOM』でデビューする。93年に一度解散するものの09年に再結成し,『シャンブル』を発表。11年には『Z』,『Z II』を立て続けにリリースする。現在はユニコーンと並行してソロ,Tessy &Emotional Angineなどで活躍中。さらに川西幸一(d),EBI(b)との3ピースで電大を結成。1stミニ・アルバム『Δ結線』を発表して活動中だ。

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