【音源付】著者たちの語らい─小林信一&加茂フミヨシ(2)

加茂フミヨシ式ギター・トレーニング by 編集部 2009年4月17日

【ゲスト】小林信一「若い子が活動できるように、メタルが認知されてほしい」。『地獄』シリーズ制作秘話から高速ピッキングについて激論!!

katarai_header_kobayashi

20090417_taidan_main

▲左が小林、右が加茂。 撮影:鈴木千佳
→対談第1回
■『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』制作秘話

加茂:小林さんと言えば『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』という教則本ですが、このアイディアはどういう経緯で生まれたのですか?

20090417_taidan_kobayashi_1

小林:そもそもはリットーミュージックの担当者からお話をいただきまして、あえてこの時代にテクニカルなテーマの教則本を作ろうということになったんです。「ギター・ソロを弾けば石を投げられる」みたいな時代もあったことですし(笑)、それに対する悔しい思いもありましたから、ぜひともって感じでしたね。

加茂:なるほど。

小林:『地獄の~』っていうタイトル自体は昔からあって、実はほぼ同じタイトルのCD付き教則本が以前に出ているんです。しかも、その本は僕も持っていました(笑)。

加茂:えっ!? その本で練習していたわけですか?

小林:はい。始めに話をいただいた時も、「ああ、知っていますよ、その本」って感じでしたね。今回はその現代版を作るということでしたが、元を知っていただけに「それは熱い本になりそうですね!」って(笑)。そこからはアイディアを出して雛型を作っていきました。

20090417_taidan_kamo_2

加茂:この本は、メカニカルなトレーニングというテーマとともに、ヘヴィ・メタルという音楽に的を絞ったところに大きなポイントがあると思います。この本でヘヴィ・メタル自体の人気を呼び戻すことができたのでは・・・と感じるんですよ。

小林:それは良いことですし、すごく嬉しいです。

加茂:若い子からも、ヘヴィ・メタルを弾きたい、という声をよく聞くようになったのですが、小林さんご自身には、この著書によってメタルを復興させたいという意図はあったのですか?

小林:自分自身、バンドをやっていたけどヘヴィ・メタルではライヴもできないっていう壁にぶつかりましたからね。少しでもヘヴィ・メタルを認知してほしかったし、そのきっかけにでもなればとは思いましたね。……別に「日本ヘヴィ・メタル協会」でもなんでもないんですけど(笑)。メタルが好きな若い子が活動できるように、メタルが認知されてほしいというのが、今でも思う正直な気持ちですね。

加茂:なるほど。この本が大ヒットした背景って、実はそこだと思うんです。メカニカルなトレーニングっていうだけなら、クリーン・トーンでもできるし、それこそどんな音楽ジャンルでもいいわけですが、”地獄”という言葉をタイトルに付けたり、メタルっぽいアイコンを入れたりすることで、ヘヴィ・メタルという意図が明確になりましたよね。

小林:おっしゃるとおりです。音楽ジャンルとしてはハード・ロック/ヘヴィ・メタルをハッキリ打ち出すことが重要でしたね。

■高速ピッキングについて

加茂:そこで、ひとつお聞きしたいことがあります。ハード・ロック/ヘヴィ・メタルというと、やはり右手のピッキングをどれだけ速くスムーズにできるかという点があるかと思います。例えばサークル・ピッキングとか、初期のクリス・インペリテリのように腕全体を振っていくなど、いろいろなギタリストの弾き方が存在しますよね? 小林さんもそういったものを真似したりしましたか?

小林:確かに昔はいろいろ真似てみたんですけど、結局今は自分流のフォームになっちゃっていますね。……元々ピッキングのスピードは速くできたみたいで、速さという点ではあまり困ったことはないんですよ。

加茂:元々、腕とかに余計な力が入らなかった、と?

小林:う~ん、入っていたかもしれないですけど、トレモロ・ピッキング的なものは「簡単じゃん!」って感じでした。

加茂:なるほど。よく読者やファンの方からの質問などで、肩から肘に余計な力が入っちゃって、うまくピッキングできないという話をよく聞くんで、その対処法について、小林さんのご意見をお伺いしたいと思ったんですね。

小林:あっ、でも、トップ・スピードで弾く時とかは、けっこうガチガチに力入れていますよ。というのも、上腕に力を入れて固めないと、ピッキング位置がブレちゃうんです。大きく動くほど、ピッキングのスピードはロスしていきますからね。

加茂:なるほど。小林さんのスタイルは、上腕は固定して、そのフォームのまま弦移動していくわけですね。

小林:ええ。エコノミー・ピッキングみたいな場合はまた違いますけど、オルタネイトではそういう感じです。もちろん、ある程度の速さまでは力は入っていませんけどね。僕自身、速いピッキングということで一番参考にしたのは、ポール・ギルバートかな?

加茂:彼のピッキングはどのへんがポイントですか?

小林:タッチの軽さですね。腕にはあまり力が入っていないと思います。そのうえで僕は、トップ・スピードの時は上腕を固めるという感じですかね。

加茂:ちょっとマニアックな話になりますが、例えば6連符の場合、テンポ120あたりが境目となって、ピッキングの仕方や力の入れ方が変わるということがよくあると思うのですが、小林さんも、テンポによってピッキング法が変わる事とかはあるんですか?

小林:ありますね。具体的にテンポいくつっていうのはわからないですけど、それまでは余計な力は入っていないという感じです。もちろん、フレーズにもよりますけどね。

加茂:では、1弦と6弦、細い弦と太い弦でピッキングが変わったりは?

小林:違いはありますね。やっぱり細い弦は跳ね返りが大きいです。どっちかと言うと、僕はプレーン弦が苦手で、巻き弦のほうが弾きやすく感じます。これは元々リフを弾くのが好きで、低音弦に慣れていたっていうのもあるでしょうね。太い弦のほうが、ピックが弦に当たる感じがわかりやすいんですよ。

【編注】

読者の皆様に「テンポ120以上」の6連符を体感していただくため、加茂氏に、実験的にフレーズを弾いていただきました。

再生ボタンをクリックすると音が流れます。譜面はクリックで拡大できます。


20090417_taidan_picking

読者の皆様も、この音源に合わせて一緒に弾いてみて、テンポが上がっていくにしたがって、「力まかせのオルタネイト」では段々と弾けなくなってくることを確認してください。

■驚愕の事実!…テクニカルなことは30歳過ぎから身につけた

加茂:ちなみに、弦は太めのセットとかを使っていたり?

小林:いえ、普通の.009から.042のセットですね。……実は、昔からリフを弾くほうが好きで、速弾きギタリストに憧れたっていうことは特にないんですよ。

加茂:えっ!? そうなんですか? それは意外だなあ。では『地獄の~』で弾いているような速くてテクニカルなフレーズは、どうやって身につけたんですか?

小林:人に教えるようになってからですね。30歳過ぎてからですよ。

加茂:えっ!?  30歳過ぎてから??

小林:そういうプレイに憧れている人は多いですし、弾き方を教えてくれっていう声も多い。そこで練習し始めたって感じですね。

加茂:教えつつ、練習しつつですか。すぐにできるもんですか?

小林:ずっと練習していましたよ(笑)。

加茂:なんとなくわかるような(笑)『地獄の~』のコラムで、練習しすぎで腱鞘炎になったと書かれていましたが、それもその時期ですか?

小林:そうですね。流石に若い頃は全然大丈夫だったけど、テクニカルなことを練習し始めたら、腱鞘炎になっちゃいましたね。フル・ピッキング派だったんですけど、エコノミーやスウィープを練習しはじめたら、いきなり(笑)。

加茂:それまではエコノミーとかスウィープはしていなかったんですか!? 信じられない!

小林:ダウンでリフを弾いているほうが気持ち良かったんですよ(笑)。だから、2004年に『地獄の~』の第一弾を出すにあたっても、いろいろ研究はしましたね。

加茂:『地獄の~』でやっているようなテクニックを身につけるうえで、何か小林さん独自の練習法とかはありますか?

20090417_taidan_kobayashi_2

小林:独自ではないですけど、エコノミーはひとつひとつ順番を分析・整理していきましたね。人が演奏しているのを見ても、どこでどういうピッキング順になっているかを確認して、それから真似ていきました。もちろん人それぞれ手の大きさとかが違うので、自分のやりやすい方法に整理していった感じです。……そういうやり方はやっぱり理系ですね(笑)。

加茂:いや、それは驚きですね。ある程度の年齢になると、なかなか新しいテクニックを身につけるのは難しいと思うんですよ。すごいなぁ~!そういえば、アコースティック・ギターでボサ・ノヴァをやっていらしたこともあるとか?

小林:ええ。前回お話した一度バンドを辞めた時に、ヘヴィ・メタル以外の音楽ジャンルでのギターを、一通り自分なりに練習してみたんです。教則本とかビデオを観ながらの我流ですけどね。

加茂:それは素晴らしいですね!

小林:いえいえ、見よう見まね程度ですよ(笑)。

20090417_taidan_kamo_1.jpg

加茂:そのへんにも関わってくる話題をひとつうかがいます。僕自身も一度は壁にぶつかったんですが、特にヘヴィ・メタルのソロの弾き方だと、例えば細かくコードが変わるジャズのソロは取りにくいですよね。ポール・ギルバートのような、フル・ピッキングで各弦3音フレーズとかが中心だと、細かなスケールチェンジには対応が難しいのでは・・・と僕は思うのですが、小林さんはどのように対応しますか?

小林:スケール・チェンジする練習は、若い頃にかなりやりました。スケールを上がって下がってくる間に、例えば3弦からキーが変わったらどうなるか、みたいな練習はよくやっていたんですよ。コード進行を自分で考えて、それに合わせて練習していましたけど、そういうのは好きだったみたいです。

加茂:ということは、この『地獄の~』シリーズでも、まだまだ小林さんの引き出しはいろいろありそうですね。

小林:ええ。『地獄の~』はターゲットをかなり絞りましたし、それ以上は出さないようにすることに苦労しましたから。担当者からも、僕がちょっと違うジャンルに行こうとすると、すぐに「それはやめたほうがいい」って言われましたしね(笑)。

加茂:それはファンの人には楽しみですね。『地獄の~』はひとつの完成形ですが、これ以外に小林さんがやってみたいテーマとかはありますか?

小林:そうですね、僕は音楽理論も大切だと思っているので、そういった本も書いてみたいです。もちろんジャズ・ギタリストではないんで、そういった理論は専門外ですけど、入門編的なものはやってみたいですね。

■地獄カルテット誕生!

加茂:ところで、小林さんの著書が大ヒットしたおかげで、『地獄』シリーズはベース編、ドラム編、ボーカル編と続きました。その著者達が集まって地獄カルテットというバンドを結成されたわけですが、どんな経緯だったんですか?

小林:僕が第一弾を出した時に、リットーミュージックで発売記念イベントを開いてもらったんです。その時にデモンストレーションで演奏をするんだけど、「カラオケを流してひとりでギターを弾くのはあまり地獄っぽくない」という意見が出たんですね(笑)。それで生のバンドでやることになり、もともと顔見知りだったMASAKIさん(b:CANTA)とGOさん(d:SUNSOWL)にリズム隊をお願いしたんですよ。それがきっかけですね。

加茂:ファースト・アルバム『この世の地獄物語』のデラックス盤には、バンド・スコアまで付いているんですね。

20090417_taidan_kamo_1

小林:ええ、CDにバンド・スコアとカラオケCDが付いているんですが、一応は普通のアーティストのCDと同じ扱いなんですよ。

加茂:楽器店で買えるんですか?

小林:普通のCDショップにも置いてはいるんですが、このサイズだと棚に入らないかな(笑)。

加茂:地獄カルテットは現在ツアー中ですが、やっぱりメタル・ファン、中でもテクニカルなプレイが好きな人が集まっている感じですか? (註:対談は2月某日に行われた)

小林:そうですね。韓国、名古屋、大阪と回って、明日は札幌に行くんですが、読者らしきキッズもいましたね(笑)。

加茂:小林さんの機材をのぞいていたり?

小林:MASAKIさんやGOさんのセットを熱心に見ていたり(笑)。もしかしたらそれぞれの読者かなという気はします。

加茂:キッズと言えば、小林さんのフレーズをコピーして、YouTubeとかにアップしている人も多いんですが、ご覧になったことはありますか?

小林:はい、あります。嬉しいことですし、みんなうまいですよね。

加茂:そう言えば、僕も3月20日に『ひたすら弾くだけ!ギター・トレーニング』というDVDを出したんですが、担当者が『地獄の~』シリーズが大好きで、このDVDの表紙も『地獄の~』シリーズの影響を受けたイラストにしたんですよ。

20090417_taidan_dvd.jpg

小林:おお、コレですか。……近いものを感じますね(笑)。

加茂:内容はヘヴィ・メタルではなく、普通のロックであったり、ジャズとかもやっているんですけどね。どちらかというと、広いジャンルを弾きたい人向けだと思います。それで、『地獄の~』シリーズとコレが楽器店に並んでいると、ちょっとスゴイかな、と(笑)。

小林:いやいや、いいことですよ(笑)。

加茂:そう言っていただけると、ありがたいです(笑)。

(この対談は次回に続く!)

【小林信一 プロフィール】

アニメタル、アンセムのボーカリスト坂本英三のスタジオ・ワークをきっかけに、同氏のソロ・アルバムに参加し、CMソングなどのギター・レコーディング、作曲・編曲、採譜などにも携わる。

ヘヴィ・ロック・バンド”R-ONE”での活動を機に、ESP・SCHECTERギターのモニターとして7弦ギターの開発に協力。

2004年、”超絶系”ギター教則本『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』が大ヒットを記録。その後シリーズ化され、韓国版、台湾版も続々とリリースされる。最新作は、第6弾の『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ 反逆の入隊編』(2009年4月4日発売)。2007年4月にスタートした『ギター・マガジン』の連載セミナー「月刊☆地獄通信」も続行中。

現在はボーカリスト井上貴史(Concerto Moon)率いるロック・バンド”BLOOD IV”にて、国内のみならずメキシコや韓国でライヴ・ツアーを行なうなど海外においても精力的な活動を展開。2009年2月には、地獄シリーズの著者4人によるスーパー・バンド”地獄カルテット”の1stアルバム『この世の地獄物語』もリリースした。

【小林信一 公式サイト】

七弦の星
小林信一ブログ

【小林信一の教則本】

[新刊]

『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ 反逆の入隊編』

[既刊]

『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』
『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ  愛と昇天のテクニック強化編』
『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ お宅のテレビで驚速DVD編』
『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ 暴走するクラシック名曲編』
『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ 攻略せよ!ゲーム・ミュージック編』

【小林信一のアルバム】

地獄カルテット『この世の地獄物語』

地獄カルテット『この世の地獄物語』デラックス盤(バンド・スコアとカラオケCD付き)

加茂フミヨシ

加茂フミヨシ

超絶技巧ギタリスト/クリエイターとして活躍する。傍ら、最先端エレキ・ギター奏法の求道者としても、多くのヒット作教則本を発表。2011年に、スティーヴ・ヴァイがバークリー音楽大学で記録した“世界最大規模のオンライン・ギター・レッスン”のギネス世界記録に挑戦。ヴァイの“ギター・レッスン受講者4,455人”の記録を“8,776人”に更新し、イギリスのギネス・ワールド・レコーズより日本人ギタリストとして正式承認される。世界に名を刻んだエレキ・ギター界の伝道師である。



TUNECORE JAPAN